CuriousHunter 依存リハ

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依存症の再発因子と再発予防【リラプスプリベンション】依存症治療 

依存症治療において、
特に重要で、幅広く使用されている
アプローチがあります。

 

その名も
「Relapse Prevention(RP)」
「リラプスプリペンション(日本語)」

聞いたことがある人も多いと思います。

 

RPを直訳すると再発予防です。

そのため、すべての依存症治療における
最終的なゴールとなっています。

 

ということで、RPを解説していきます。

 

リラプス(再発)についての記事もあるので、
ぜひ、読んでみてください。

 

curiousquest.hatenablog.com

 

 

 

 

*リラプスプリベンション(RP)*

RPモデルは、Marlatt & Gordon (1985)さんたちによって
提唱されているものです。

40年も前なので
割と、昔のモデルですよね。

 

このモデルは、社会・認知・行動的なアプローチをとっており、
依存症の根本でもある、何度も発生する再使用(リラプス)を
臨床的・理論的に捉えたモデルになってます。

 

実際に、リラプスがどの程度起こるのかと言うと
治療後から1年で40-60%が
アルコールを含めた薬物依存において
元の依存行動のレベルに戻る経験をしています。
(inney & Moos, 1992; Hubbard et al., 1997; McLellan & McKay, 1998)

 

 

*リラプス(再発)*

依存行動・物質の再使用・再開は、
2つの要素の影響を受けます。

 

  • 即時決定因(Immediate determinants)
  • 潜在的決定因(Covert determinants)

この上記の2つの因子によって、
リラプスが起こるか決まると考えられています。

 

2つの決定因を解説していきます。

 

*即時決定因*

即座にリラプスに 影響を与える例は
いくつかあります。

  • ハイリスクな状況(ストレス等)
  • コーピングスキル(対処能力)
  • 結果の期待
  • 禁欲侵害効果

 

*ハイリスクな状況*

これは、リラプスが起こりやすい
状況のことです。

 

依存行動をやめた初期では、
自己肯定感が上がり、
なんとなく自分の行動をコントロールできている
感覚に陥りますが、
実際は、ハイリスクの状況下にさらされると
リラプスを引き起こしてしまいます。

 

ハイリスクな状況は
環境要因・感情要因・個人の要因
あったりします。

 

例をいくつか紹介します。

  • ネガティブな感情
    (怒り、不安、鬱、イライラ、退屈)
    ー 最もリラプスを引き起こす状況
    (Marlatt & Gordon, 1985)
  • 人間関係のいざこざ
    (家族・職場・友人関係との口論)
    ー 結果としてネガティブな感情を誘引
    ー リラプスのエピソードの1/2を占める
    (Marlatt, 1996)
  • 社会の圧力
    (直接・日直接的なな言語・非言語の圧力
    お酒を飲む人と一緒にいなければいけない状況)
    ー 20%のリラプスのエピソードを占める
  • ポジティブな感情
    (お祝い)
  • 依存症関連刺激や引き金
    (広告、お気に入りの居酒屋をみる)
  • 自分のコントロール力を試す
    (意志の力で依存行動をコントロール

 

ということで、これらを参考に
まずは、ハイリスクな状況を
発見する必要がありそうですね。

 

ネガティブな感情は、やはり
厄介な敵ですね。
ぜひ、以下の記事も読んでみてください。

 

curiousquest.hatenablog.com

 

*コーピングスキル*

ハイリスクな状況がリラプスを引き起こす
要素の1つではあるが、
実際は、個人がそれらの刺激に
どのように反応するかが
依存行動の再開を決めます。

 

そのためには、効果的なコーピングスキルが
(対処法)必要になってきます。

 

対処法の例

  • ハイリスクな状況から立ち去る
  • ポジティブな独り言
    (Positive self-talk)
    ー 例:前も乗り切れたから、自分なら今回もうまくできる。

 

もっとコーピングスキルありますが、
対処法を知ると
リラプスの可能性を下げられ、
さらに、その結果
成功体験を得ると、自己肯定感が上昇します。
(Marlatt et al., 1999)

 

ラクゼーションテクニックについて
触れた記事もあるので、ぜひ読んでみてください。

 

curiousquest.hatenablog.com

curiousquest.hatenablog.com

 

 

*結果の期待*

これは、何かというと
依存行動が与えてくれる
ポジティブな効果を過剰に期待していることを
意味しています。

 

例えば、アルコールが与えてくれた
ポジティブな効果をより期待している人たちはより、
アルコールのネガティブな効果を無視して
よりアルコールを摂取するということです。
(Carey, 1995)

 

これは、ハイリスクな状況下で
こっそりと影響を与え、
リラプスをほのめかしてきます。

 

例えば、ネガティブな感情が発生している時に
頭の隅っこで、アルコールなら
その嫌な感情を取り除いてくれるよと
アルコールの良い効果の期待感を
脳がささやいてきます。

 

その結果、人によっては
その一時の不快感を開放するために
飲酒してしまいます。

 

*禁欲侵害効果*

これは、前の記事でも取り扱いましたが
スリップがリラプスになってしまう原因の一つです。

 

簡単に言うと、ちょっとした依存行動をした結果
自分を責め、ネガティブな感情に襲われ
それらを解消するために、
もっと依存行動をしてしまう現象です。

 

詳しくは、以下の記事を確認ください。

 

curiousquest.hatenablog.com

 

 

潜在的決定因*

上記のように、明らかに
分かりやすいリラプスの要因はありますが、
この世の中には、こっそりと隠れている
リラプスの決定因があります。

それは、

  • ライフスタイルのインバランスによって
    引き起こされる衝動・渇望

 

ただ、わかりにくいので
具体例を出します。

 

  • ストレスレベル
  • 認知の要素
    (合理化、否認、一時の快楽(衝動・渇望))

 

これらの要素は、リラプスの可能性をあげ
また、ハイリスクの状況へと我々を導き
依存行動への抵抗力を奪っていきます。

 

 

認知の合理化の例でを1つ紹介します。

例は、Apparently irrelevant decisions (AIDs)といい、
見かけ上無関係な決断と直訳しました(勝手に)。

 

これは、何かというと見かけ上は完璧に無関係な決断の連続が
実は、リラプスのハイリスクな状況へと導くことです。



 

例えば、
「今日は、もしかしたら友達が家に来るかもしれないから
お酒を買って準備しておこう」と言って
本当は誰も来る予定がないが念のため
自分のためではないがお酒が必要だと
お酒を買う理由を見つけて
一見、無関係に見えるが
リラプスへと近づく決断にいたっていますよね。

 

さらに、この思考によって
自分がお酒を買ったにもかかわらず、
個人の責任を否定する材料を作り
依存行動の言い訳を成立させます。

 

と言う感じで、何気なくリラプスに影響を
与えてくる因子が存在します。

 

まあ、何が言いたいかと言うと
ライフスタイルのインバランス
(依存行動のみによるストレス解消・退屈しのぎ)
によって、
ストレスが増え、認知の歪みによって
リラプスのハイリスクな状況に
曝されやすくなります。

 

 

では、どうやって
リラプスを予防するのかは、
次の記事で取り扱いますね。

勘の鋭い人は、なんとなくわかるかもしれませんが。

 


追加で、
ストレスとリラプスについての記事があるので、
そちらも確認ください。

 

curiousquest.hatenablog.com

curiousquest.hatenablog.com

 

 

*まとめ*

  • 依存症の根本である
    リラプス(再使用)を予防することが
    依存症治療の最終ゴール
  • リラプスを引きこ起こす因子が
    2種類ある(即時・潜在的決定因)
  • 即時決定因は、
    ハイリスクな状況(ストレス等)・
    コーピングスキル(対処能力)・
    結果の期待・
    禁欲侵害効果がある
  • 潜在的決定因は、
    ライフスタイルのインバランスに伴う
    ストレスと認知の歪み

 

 

*記事関連のおすすめの本*

「Relapse Prevention」

日本語版も見つけたのですが、
もうAmazonでは取り扱われていないようです。

なので、英語版で許してください。

結構お値段しますが
本気の人は、ぜひ読んでみてください。