過去の経験が、依存症行動の動機を形成する【学習・習慣・認知機能】
依存症を包括的に捉えた理論があり、
1つに「PRIME Theory」があります。
まだ、記事を読んでいない人は
読んでみてください。
読んでからの方が、理解がはかどると思います。
そして、この理論には
5つのモチベーションのテーマがあります。
その1つの「神経可塑性」について
話していきます。
*神経可塑性*
簡単に言うと、
過去の経験によって
神経回路が変化することを意味しています。
この神経回路の変化は、
4つのの過去の経験に基づく過程によって
発生します。
- 習慣
- 刺激へのと慣れと感作(刺激にセンシティブな状態)
- 宣言記憶(陳述記憶(Explicit memory))
- 関連学習(オペラント・古典的条件付け学習)
上記の過程によって、脳の回路に変化が起き
モチベーションシステムに影響を与えます。
ということで、上記の4つを
少し見ていきましょう。
*慣れと感作*
モチベーションシステムは、与えられた刺激に対する
習慣化と感作の影響を受けます。
つまり、単純な刺激の繰り返しによって、
依存物質・行動の価値が変化していきます。
いくつか例を紹介していきます。
*麻痺と増加*
これら2つは、特に単純な習慣の例です。
麻痺の例でいうと、きれいな景色を発見した時に
最初はすごいと思うが、
次第に慣れてきて、何の感情がわかなくなります。
増加の例でいくと、
最初は、若干迷惑な雑音があったとして
同じ雑音であっても、段々と
耐えられなくなってきて
イライラが増してくることがあります。
*逆転*
これも、割と一般的なものです。
好きなものが嫌いになったり、
嫌いなものが好きになったりします。
例えば、アボカドは最初苦手だったが
いつのまにか、好きになっている。
逆もしかりで、
今まで、楽しんでたものでも
短期間で繰り返ししすぎると
我々は退屈を感じてきて、
嫌いになることがあります。
*適応と退屈*
この2つは、繰り返しの経験によって
行きつく定番の場所ですね。
最初は、喜びを生み出していたものが
次第に、同じだけの喜びを作れなくなることですね。
例えば、給料が上がった瞬間は嬉しいですが
そして、なかなか昇給が発生しないにも関わらず、
すぐに、その給料が当たり前になり
喜びを感じなくなります。
*バランスと強化*
どのように上記の変化が発生するかのメカニズムは
複雑で、よくわかっていません。
しかし、いくつか上記の慣れと感作を説明できる
適応原理の候補があります。
適応原理として
「バランスの維持と向上心」が候補になってます。
*バランス*
我々が正常に機能するには、
バランスが必要なわけです。
どんなバランスかというと、
動機のバランスです。
我々は、基本的に報酬がもらえると
動機付けになります。
しかし、すべてのニーズや動機に
対応するほどの余力はなく、
我々にも限界があります。
そのため、
何度も行ったニーズや動機に基づいた行動に、
費やすほどの余力がなくなり
それらの行動を取らずに、
新しく、報酬をくれる行動に動機付けされやすいです。
ただ、正常に機能するために
短期的なニーズと長期的なニーズに基づいて
行動を変えられる必要性があります。
なので、その場その場で
本当に必要なニーズに答えるために
行動の動機のバランスを取らなければ
正常に機能できません。
*向上心*
この特徴は、適応において
とても利点がありますね。
現状に不満を抱き、
常になにかを向上とさせようとする
特性は、生きていく適応においては
有利になってきます。
これら2つが習慣化や感作の
メカニズムの要因になっていると考えられています。
上記をすべて考慮し、依存症と結びつけると
依存症は、
常に新しい刺激をくれる依存行動に引き付けられ、
慣れると、より強い刺激、より良いものを求め続け
行動の動機のバランスが崩れ、
短期のニーズと長期のニーズに基づいた
行動が取れなくなっている状態ですかね。
依存症の感作のモデルがあるので、
気になる人は、読んでみてください。
*陳述記憶*
これも過去の経験によって、
我々のモチベーションシステムを変化させる
要素になっています。
これは、過去の経験(計画・何を感じたか)を
思い出すことによって
モチベーションに影響を与えることを意味しています。
例えば、たばこをやめようとしている時に
たばこを与えられたら、
たばこがどんなものかを思い出すチャンスを与えます。
そして、人によってはたばこの良い事を思い出し
たばこを吸うという反応に至ります。
そして、より特定的・具体的な引き金ほど
過去の経験を思い出す可能性が高いです。
この辺りは、依存症の認知機能が
関わってそうな雰囲気がしますね。
依存症の認知機能の記事もあるので、
ぜひ、読んでみてください。
*関連学習*
これも、過去の経験が
モチベーションシステムに影響を与える
要因ですね。
よく聞く話は、
古典的条件付けとオペラント条件付けですね。
古典的条件付けは、
パブロフの犬(ベルの音でよだれ出す犬)で
オペラント条件付けは、
スキナーの箱(餌欲しくてレバーいっぱい押すネズミ)が
有名ですね。
これらを通して、依存症の衝動性・抑制を変え
無意識的な行動を作ってきます。
古典的条件付けとオペラント条件付けについて
より、詳しく知りたい人は以下の記事でどうぞ。
*習慣*
習慣は、学習の結果
意識的なコントロールなく
行える行動のことですね。
なので、上記の関連学習の結果
依存行動が学習され、
習慣になってしまうわけです。
そして、ルーティーンをも形成し
決まった日・時間に
同じような依存行動を
無意識にとってしまうわけですね。
「依存症=習慣」の理論の記事もあるので
ぜひ、読んでみてください。
*まとめ*
- 過去の経験によって、依存行動のモチベーションシステムが
変わっていく。 - 依存物質・行動に慣れ・感作によって
依存行動の動機を形成していく - 関連学習により、衝動性・抑制力の低下が形成され
無意識な依存行動を形成され、
最終的に、依存行動が習慣化される。
*記事関連のおすすめの本*
「最強の経験学習」
「How You Learn is How You Live」
依存症回復は、人生生きなおし・やり直し・学習しなおし
そんなことが言われたりします。
色々失敗したからこそ、学びがあると思います。
その結果、今の自分があり
依存物質・行動をやめようと歩み始め、
時には、スリップしますが
そこから何を学ぶのかが大切だと思います。
そのような過去の経験をどのように学習するのかが
人生をうまく生きる鍵だよねって本です。
ぜひ、購入して読んでみてください。