CuriousHunter 依存リハ

好奇心のままに、依存症を探索

依存症のモチベーションシステム【依存症定義・理論】

*5階層のモチベーションシステム*

 

依存症には、本当にたくさんの理論があります。

 

ただ、どれも依存症の1側面のみしか
考慮されていません。

 

多様な依存症の理論を包括的に
捉えた理論がやはり欲しいですよね。

 

例としては、

  • 依存症=過剰な欲求
  • 依存症=パワーレスネス

まだ、読んでいない人は
この上記の理論の記事があるので
読んでみてください。

 

curiousquest.hatenablog.com

curiousquest.hatenablog.com

 

そして、今回の記事では
もう1つ有名な依存症の包括的理論を
紹介します。

 

キーワードは、「依存症=モチベーション」です。

 

 

*統合的モチベーション*

まずは、理論の名前ですね。

「PRIME Theory; A Synthetic Theory of Motivation」
(West & Brawn, 2013)

 

PRIMEは、モチベーションシステムを構築する言葉の
頭文字をとったものです。
後で、説明します。

 

残りの英語は、
Syntheticなので、総合的・統合的とかが日本語として
ふさわしいですかね。

Theory が、理論で、
Motivation が、そのままモチベーションですね。

 

WestさんとBrawnさんは、
多彩なモチベーションの側面を統合して
依存症を語っています。

そして、
人間の動的なモチベーションシステムの理解が
依存症の理解の鍵だと言っています。

 

ということで、
簡単にまとめると
「依存症=モチベーション」
ということですね。

 

やはり、どの薬物もモチベーションが
絡んでいるので、この時点で良さそうな
理論な雰囲気が個人的にはしてきます。

モチベーションについての記事もあるので
ぜひ、読んでみてください。

 

curiousquest.hatenablog.com

 

 

 

*モチベーションの5つテーマ*

まず、
5つのモチベーションシステムのテーマがあります。

 

これすべてを1つの記事で説明すると
すさまじい長さになるので、
1記事、1テーマで
ブログ更新していきます。

 

まずは、
「モチベーションシステムの構造」から
解説していきます。

 

*モチベーションシステムの構造*

モチベーションシステムの構造は
5つのレベルがあります。

 

  • Plans(計画)
  • Responses(反応)
  • Impulses / Inhibitory Forces
    (衝動 / 抑制力)
  • Motives (動機)
  • Evaluations (評価)

 

これらの頭文字をとって、「PRIME」ですよね。
なので、「PRIME Theory」なわけです。

 

そして、
依存症においては
これらの5つの側面が
異常に機能してしまいます。

 

そして、それらは
以下のような順番で階層が作られています。

モチベーションシステムの要素 (West & Brawn, 2013)を基に作成

下に行くほど、より原始的なもので
上位ほど、高位なものになっています。

 

とりあえず、それぞれのレベルについて
少しずつ解説していきます。

 

 

*Responses (反応)*

これは、一番単純なレベルのモチベーションです。

 

反応なので、刺激によって直接的に
引き起こされるものですね。

基本的には、
Aが起きたら、Bといった反応が起こされる
といった単純な話です。

 

反応の種類としては、
行動の開始・停止・修正が
挙げられます。

 

 

例えば、痛みという刺激が発生したら
その刺激からささっと逃げる反応を起こす

依存症であれば、痛み(刺激)があれば
薬物を使う(反応)になるかもしれませんし

飲み過ぎて頭が痛くなったら(刺激)
その場においては飲むのをやめる(反応)かもしれません。

 

なので、
刺激が発生した時は
行動に影響が与えられる瞬間であり、
それが、行動の開始・調整・停止といった
その場で必要な反応が引き起こされます。

 

*Inpulses and Inhibitory Forces (衝動・抑制力)*

2番目のモチベーションのレベルが衝動・抑制力です。

 

この2つは、行動を掻き立てる力と抑制する力ですね。

 

内部・外部からの刺激・情報によって
これらの力は発生します。

 

内部の刺激としては、自分自身の感情と
(好き・嫌い・幸福・悲しみ)

生理学的な状況(のどの渇き・空腹)


外部の刺激は、無数にありそうですね。
例えば、お酒の広告ですかね。

 

これらの刺激によって、衝動・抑制力が
発生し、我々の行動(反応)に
影響を与えます。

 

そして、
もし衝動が発生して
抑制力によって
すぐに行動に反映されなかった場合に、
その衝動は、意識下に浮上してきます。

その結果、
渇望(Urges)として認識されます。

 

*Motives(動機)*

3番目のレベルのモチベーションシステムは
動機です。

 

この辺りから、モチベーションシステムの
複雑性が見えてきますね。

 

動機が意識下として認識されると、
願望、欲望、必要性といった感情として
経験されます。

 

動機の種類としては、
「誘惑 Or 反発」ですね。

なので、依存症なら
依存物質・行動をしたい or したくないかの
動機ですね。

ただ、どちらの動機が同時に発生することもあり、
強い方の動機が
依存行動の実施・停止の動機を決めます。

 

*Evaluations (評価)*

4番目のレベルのモチベーションシステムは
評価です。

これは、信念のようなもので
利益・損害のような判断を構成しています。

また、特定の行動の正誤の判断もします。

 

なので、依存症であれば
依存行動の利益と損害の判断
または、依存行動が正誤の判断をします。

 

そして、
この評価が与える行動(反応)への影響は
3番目の動機、そして2番目の衝動・抑制力を
通してのみ効力を持ちます。

 

*Plans(計画)*

最後のレベルは、計画です。

 

これは、
意識的な将来の行動の計画で、
行動に対するコミットメントを要求するものです。

 

計画は、必要性があると感じれられた場合に適応され
常に頭の隅に置いておかないと
行動に影響力を持ちません。

 

ヒエラルキーの関係*

5つのレベルで構成されている
モチベーションシステムですが、
どのレベルに問題があっても
依存症行動が引き起こされます。

 

そして、それぞれの要素は
隣り合った要素を通してのみ影響を与え合うことができます。

 

つまり、3番目に位置する動機は
下から2番目に位置する衝動・抑制を通してのみ
一番原始的なレベルの反応に影響を与えることができる。

そのため、
どんなに依存行動をやめたい動機が
あったとしても、
衝動力が強ければ、
依存行動的反応が引き起こされます。

なので、抑制力が無いと
依存的反応に対して
やめたい動機が効力を持たないわけですね。

 

 

また、行動の計画は、
2番目の衝動・抑制力、
3番目の動機、
4番目の評価等を通してのみ
行動や反応に影響を与えることができます。

 

なので、どんなに行動計画を立てても
依存行動の利害がはっきりしていない状態
または、やめる動機がない
さらに、依存行動を引き起こす衝動力が
発生する状況においては
依存行動的反応は変わらないわけです。

 

なので、
低階層のモチベーションシステムが
依存行動を促すものであれば
上階層の高位のモチベーションシステムは
効力を持ちません。

 

逆に言えば、
それぞれのモチベーションシステムに
上手に取り組むことができれば、
依存行動を変えることができるかもしれませんね。

*まとめ*

  • 依存症は、統合されたモチベーション理論で
    説明される。
  • モチベーションシステムの構造には
    5つのレベルがある。
    (反応、衝動・抑制力、動機、評価、計画)
  • 隣り合っているモチベーションシステムのレベルで
    影響を与えあい、反応・行動を開始・停止・調整する。
  • どのモチベーションシステムのレベルが
    不具合を起こしても
    依存的行動が引き起こされる。

 

まだ、モチベーションシステムのテーマが
4つ残っているので
他の記事で書きますね。

*記事関連のおすすめの本*

「Theory of Addiction」

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依存症を理解したいなら、
外せない本ですね。

私が、依存症について知りたいと言われたら
2番目におすすめする本です。

ここに、PRIME Theoryが載ってます。

英語ですが、本気の人は読んでみてください。