CuriousHunter 依存リハ

好奇心のままに、依存症を探索

依存症へのスティグマ(烙印・汚名)は依存を防ぐのか?

この世の中には、ある特定の行動や病気に対してスティグマが存在します。

依存症も例外ではなく、スティグマが存在し
そのスティグマが依存症にどう影響するのか
この記事では触れていきます。

 

 

 

スティグマとは?*

依存症を診断された人たちは、
様々な依存行動によるネガティブな結果を
経験しています。

 

例えば、薬物使用がコントロールできない
社会活動が行えない、
危険な薬物使用等でしょうか。

 

しかし、それらに加えて
薬物乱用をした結果、待ち受けている結果の1つとして
物質使用に対する社会的な結果である
スティグマがあります。

 

スティグマとは、
"ある特定のグループに対する社会のステレオタイプ"
(Goffman, 1963)

 

そして、依存症に対するステレオタイプ
すべての依存症患者に適応されていき
差別が発生します。

その結果、就労・人間関係・ヘルスケアサービス等に
悪影響を与えていきます。

 

どれほど、依存症に対してスティグマが強いかと言うと
依存症は、14か国中12か国で
18種類の病気の中で
1番 or 2番目にスティグマを受けており
アルコール依存は、2番目から7番目の間に位置しています。
( Room et al., 2001)

 

 

*わざとスティグマを作った?*

依存症におけるスティグマは、
故意的なスティグマと言われたりしています。
(Corrigan et al., 2017)

 

なぜかというと
やはり、スティグマには実験的な初期の薬物使用を防ぐ効果
(Palmoar et al., 2012)
期待されているからかもしれません。

要するに、社会的に受け入れられている行動と
それ以外の行動に明確な良し悪しの線を引くことで
人々を社会的な規範内で行動するように促す
わけです。

 

そして、その規範に従わなければ
望まない結果が待ち受けおり
例えば、社会的な規範に従わないと考えられている
物質使用障害は差別の対象となり
それらの行動を良くないと思っている人がいるという
サインなのかもしれません。

 

その結果、薬物使用を防ぐことができるのかもしれません

 

 

スティグマは依存症を防げない?*

果たして、本当にスティグマ
依存症を防げるのか。

 

例えば、アルコール依存症に対するスティグマ
その国の飲酒の文化によって異なります。

 

そして、the European Valeus Survey (Kummetat et al., 2022)によると
1人当たりのアルコール摂取量が多く
衝動的飲酒の割合が高く
蒸留酒の摂取量が多い国では
重度の飲酒に対するスティグマはより強い
報告されています。

それが何を示しているかと言うと
飲酒問題が大きい国ほど、
社会の人々はそれらの行動に対して
厳しい意見・反応を示している(スティグマの強さ)わけです。

 

同様に、アルコール依存に対してスティグマが強いにも関わらず
アルコール摂取量が多いという国があるということは
スティグマがアルコールの多量摂取を解決する策としては
怪しい気がしてきますよね。

 

そのため、本当にスティグマが薬物摂取をコントロールするために
有効な戦略だとしたら
スティグマが強い国ほど、薬物摂取量が少なくても良いはずだが
実際はそんなことは無さそうな雰囲気ですよね。

 

 

スティグマは治療の妨げ?*

スティグマは、社会がどのように依存症に対して
反応するのかを反映していますが
その結果、スティグマは依存症の問題を解決することは少なく
スティグマは、さらに依存症の被害・回復の妨げをする
可能性が示唆されています。

 

ということで、
依存症に関わるスティグマを上手にまとめてくれている人が
いるのでその表を紹介します。

 

Georg Schomerus & Patrick William, 2022 を基に作成

 

この表によると、依存症に対するスティグマ
我々を社会的に承認されている行動(依存行動以外)を促すために
スティグマが戦略として使われた場合に
発生した・発生する可能性があるスティグマ
表で表しています。

 

依存症のスティグマの結果、
目指していたゴールである「依存行動を減少」は起きず、
実際は、逆の効果が発生するのでは?
と考えられており
スティグマにより、依存症の被害が広がると考えられています。

 

今後、詳しい依存症のそれぞれのスティグマに関する記事と
解決策についての記事も書いていきますね。

 

 

*まとめ*

  • スティグマは、ある特定のグループ(依存症等)に
    対する社会のステレオタイプ
  • スティグマは、人々を社会的に受け入れらる行動に
    促すことができるかは不明
  • スティグマが強いほど、薬物使用の問題が多い
  • スティグマは、依存症問題を少ししか解決せず
    より多くの依存症問題を引き起こす可能性あり。

 

*記事関連のおすすめの本*

スティグマ社会学
「Stigma: Notes on the Management of Spoiled Identity」

このブログ記事にも名前が載っている
Goffmanさんの本です。

割と古い本ですが、今でもスティグマの話になると
Goffmanさんが引用されているので
その業界で評価されている人ですね。

ぜひ、読んでみてください。