CuriousHunter 依存リハ

好奇心のままに、依存症を探索

薬物使用の法律・政策による依存症へのスティグマ

スティグマは、個人レベルの話ではとどまらず
社会構造の中にも依存症に対するスティグマが存在します。

 

依存症に対して、どんな構造的スティグマがあるのか
この記事で解説していきます。

 

 

 

*法律・政策にでる依存症へのスティグマ

個人レベルにとどまらない、依存症へのスティグマの例として
構造的なスティグマがあります。

 

構造的スティグマは、法律・政策に反映されており
それらの政策が依存症当事者の不利益な形として機能してます。
そして、それらの政策・法律によって
それらのルールに従う人たちは、
依存症の人たちをスティグマする気がなくとも
スティグマを構造的に作り上げてしまいます

 

 

その典型的な例が、薬物使用の犯罪化ですよね。

我々の世界でよく聞く単語としては、
"War on Drugs" ですね。

 

これは、違法薬物の取引を減らそうと
世界で行われた薬物を違法にするキャンペーン活動です。

日本語では、薬物戦争か麻薬戦争と呼ばれているやつですね。

要するに、
依存症の人たちに犯罪者と言うレッテルを張り付けるわけです。

 

そのため、この薬物戦争の結果、
数えきれないほどの被害者と
この戦争が政策決定に影響を及ぼし、
日本では起こりませんが、
アメリカのように特に若い黒人に対する
警察の暴力の増加のような結果をもたらした
と言われています。
(Cooper, 2015)

 

*構造的スティグマによって治療が進まない*

依存症に影響を与える法律によって
依存症へのアイディアが形作られ、
悪影響を与えそうな雰囲気が出てきましたね。

 

例えば、
薬物を注射によって使用している人たちによると
警察の薬物の取り締まりは、
ハームリダクション(治療プログラムの1つ)への
従事を妨げていると声を上げています。
(Cooper et al., 2005)

 

他にも、
構造的スティグマが、依存症の人たちの
ヘルスケアへのアクセスの低下を引き起こしているとも
考えられており、
特に精神科医への助けを求めにくい状況です。
(Livingston, 2020)

 

仮に、ヘルスケアサービスを利用したとしても
サービス(例;心理療法)を利用するには、
多くの場所で、禁薬物が利用前の条件になっており
依存症問題を抱えている人たちが
サービスを利用する機会を奪っている可能性がありそうですよね。

 

*依存症と精神疾患は別物?*

依存症は、精神疾患を併発しやすい病気ですが
実際のヘルスケアサービスは
依存症と精神疾患を別にされてるケースが多いです。

 

その結果、依存症の人たちが
十分なメンタルヘルスケアを受けにくい状況
作り上げています。

 

例えば、オーストラリアでは
依存症と精神疾患の2つの診断持ちの人たちへの
不十分なケアにはいくつか要因があると言われており、
依存症と精神疾患の間における
組織的文化の違い・病理的なコンセプトの違い・
管理システムの違い・哲学的土台の違い・
教育要件の違い・スクリーニング法の違い・
治療アプローチの違い・二重診断の定義と概念の欠如
依存症と精神疾患部門のコミュニケーション・連携不足の
以上すべてが、依存症と精神疾患の二重診断の人たちへの
ケアの劣化を引き起こしていると考えられています。
(Canaway & Merkes, 2010)

 

以上のように、
依存症と精神疾患のサービスの分断も
構造的スティグマの1つの例になります。

 

その結果、
メンタルヘルスサービスを利用における
依存症の差別から逃れるために
依存症のラベルを避け、
依存症問題のことを報告することをためらい
より依存症の人たちへの被害を増やすかもしれません。

 

 

*依存症治療は優先度が低い?*

もちろん、
構造的スティグマは一般市民の依存症への態度と
関連があります。

 

その傾向を示している例として、
一般市民がどの程度、医療費をどの病気に
払うことを優先するのかといった
態度に反映されています。

 

例えば、アルコール依存症は医療費の優先度として
最も優先度が低いと一般市民は感じており
ドイツでは、9つの病気のうち
(糖尿病・リウマチ・癌・AIDS・心疾患・アルツハイマー・アルコール依存・うつ・統合失調症
一般市民がどの病気に医療費の分配を優先するかのアンケート
2001年・2011年・2020年に行っており
一般市民は、癌が一貫して医療費の最優先(85%の人が選択)となっており
精神疾患の1つである、うつ病(25%の人が選択)は、
2001年では8番目の優先度で
2020年では、4番目の優先度になり
うつ病への一般市民の医療費の優先度への意識は
近年増加傾向にある一方
アルコール依存の医療費は、どの年度においても
(2001年度5%の人が選択・2011年度8%の人が選択)
一貫して大幅に低い結果になってます(6%の人が選択)
(Schomerus et al., 2021)

 

これらからわかるように、
構造的に依存症がスティグマを受ける形が
一般市民の依存症の治療の重要性への認識の低さによっても
形成されてる可能性がありそうですよね。

 

*まとめ*

  • 依存症へのスティグマは、個人レベルだけでなく
    法律・政策における構造的なスティグマがある
  • 構造的スティグマが、依存症の人たちの
    治療機会を妨げる
  • 医療現場では、依存症と精神疾患を別のものとして
    扱われ、依存症の人たちが
    十分にメンタルヘルスのサポートを受けれていない
    可能性がある。
  • 一般市民が、依存症治療の優先度が低いと
    考えている結果、依存症のための
    医療サービスが不十分になっている可能性あり。

 

*記事関連のおすすめの本*

日本語でこの記事に関連する本を読んだことが無いので、
関連記事を紹介します。

 

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