CuriousHunter 依存リハ

好奇心のままに、依存症を探索

社会・市民からの依存症へのスティグマ・差別がつくる被害

依存症は、最もスティグマ(烙印・汚名)の対象となる
精神疾患と言われることもあり、
それが、依存症の予防効果があると言う人もいるが
実際には、スティグマはより多くの依存症関連の被害
作っているかもしれないと考えられています。

 

この記事では、スティグマの種類の1つである
市民からのスティグマについて説明していきます。

 

 

*ラベル付けで始まるスティグマ

スティグマが、どのように始まるか。

それは、市民がある特定の人をラベル付けをし
そのラベル付けされたグループを
自分たちとは、異なるグループであると認識し始めた時です。
(Link & Phelan, 2001)

 

そして、依存症の場合は
このラベル付けに使用される用語の多くが非難的であり、
それらは、依存症を罹患している人としていない人の境目を
明確に引くために使われているように見える
と言われています。
(Schomerus et al., 2022)

 

要するに、
社会的に許容されていない行動を取る依存症の人々と
依存症でない我々は異なるという主張が
依存症のラベル付けに使われるネガティブな言葉に
反映されているということです。

 

英語圏では、この手の話が進んでおり
例えば、"A drug addict (薬物中毒者)"という言葉は
"someone with substance use disorder"という言葉よりも
スティグマに関連のある言葉として言われてます。
(Goodyear et al., 2018)

そして、これらのラベル付けは
ネガティブなステレオタイプを作り出し、
結果的に、スティグマを引き起こすと考えられ
最終的には、依存症を持つ人たちに対する偏見を生み
より、依存症を持たない人と持つ人を分ける溝を深くし
差別につながっていくと考えられています。
(Link & Phelan, 2001; Corrigan et al., 2017; Link et al.,, 2004)

 

 

まあ、この辺りは英語圏の人たちの感覚なので
それをそのまま日本に適応するのは難しいですが
日本語でもこのようなスティグマに関連する言葉の
研究が進むといいですよね。

 

*市民からのスティグマ

スティグマは、依存症を罹患している人たちに対して
様々なレベルで影響を与えます。

 

そして、市民からのスティグマがあり
それは何かというと
"一般市民によって是認されている依存症を罹患しているいグループに対する態度で、結果的に市民が依存症を罹患している人たちの差別につながるもの。"
(Schomerus et al., 2022)

 

これらに関する差別は、多くの依存症を罹患している人たちの間で
感じられています。

 

ニューヨークの例ですが、
3/4の薬物を使用している人たちが、家族から拒否され
2/3の薬物を使用している人たちが、友達から拒否され
1/4の薬物を使用している人たちが、医療ケアを拒否された
と報告されてます。
(Ahern et al., 2007)

 

他にも、薬物を注射するグループの人々が
ヘルスケアスタッフのスティグマ的態度が
メサドン治療(ハームリダクション)に従事することを
妨げると言っています。
(Paquette et al., 2018)

 

以上のように、
市民からのスティグマは、
多大な健康・社会の問題を引き起こしてきます。

 

スティグマは精神・ウェルビーイングにも悪い*

市民からの依存症へのスティグマは、
目に見えるような差別だけにとどまりません

 

実際に、市民からのスティグマ
依存症当事者のメンタルヘルスウェルビーイング害します。
(Schmitt et al., 2014)

 

また、
市民からのスティグマを受けるとわかっていて
差別されると予想できる場合は、
依存症当事者は人目を遠ざけ、
助けてほしい時に連絡を取れず、
専門家の助けすらも求めにくい状況を作っていきます。

 

他人との関りを避ける理由として、
依存症当事者の70%は、
「話した相手に、見下されるかもしれない」といった
不安の声をあげています。
(Ahern et al., 2007)

その結果、他人の目を避け
社会的に孤立していき、
確かに、明らかな差別を避けられるかもしれませんが、
孤立は精神・ウェルビーイングに良くなさそうですよね。

 

なので、スティグマの結果
依存症当事者は、人とのかかわりを避け
メンタルヘルスにもよくなさそうな雰囲気がしてきますね。

 

*依存症というラベルを避ける*

時々、「依存症=否認の病」と日本では言われているようですね。

 

ただ、否認するのはスティグマが影響しているかもしれません。

 

人々が依存症に対してスティグマを持っていると知っていれば
人々は、依存症としてラベル付けされることを拒むことは
嫌な思いをしない1つの手段として考えられそうですよね。

 

なので、依存症であることを否認し
薬物使用関連の問題を話すことを避け、
それらの問題をできる限り隠し、
最終的には、専門家の助けすらも求められなくなるのは
依存症という病気だから否認するという側面もあるかもしれないが、
市民のスティグマから発生している現象かもしれません。

 

 

*家族もスティグマの対象*

依存症当事者は、主な支援のリソースである
家族からスティグマを受けますが、
市民からのスティグマの被害は、
依存症当事者にとどまらずそれらの家族にもあります

 

もちろん、依存症当事者よりも
それらの家族の方が、被害は小さいですが
依存症のメンバーを持つ家族は、
他の精神疾患に比べ、
依存症問題は、家族の責任がある
一般の人は、認識しており
また、その家族は依存症と言う病に侵されているといった
認識をされています。

そして、それらの家族は社会的に孤立していきます
(Corrigan et al., 2006)

 

依存症回復を進めるにあたって、重要な資源である家族ですらも
スティグマによって当事者・その家族は被害を受け
回復のチャンスを失うのは、社会の機能としては良くなさそうですよね。

 

 

*まとめ*

  • スティグマは、ラベル付けをすることで
    依存症の人と私は違うという認識から始まる。
  • 一般市民・ヘルスケアスタッフからのスティグマによって
    依存症当事者は、健康・社会的被害を受けている
  • スティグマを避けようとすると、
    社会的に孤立し、精神・ウェルビーイングに悪影響
  • スティグマを避けるために、依存症関連のラベルを避ける手段が
    より当事者が助けを求めにくい状況を作る。
  • 依存症のメンバーを持つ家族も、市民のスティグマの対象になり
    回復に必要な資源がスティグマによって減る。

 

curiousquest.hatenablog.com

 

 

*記事関連のおすすめ本*

「依存症」偏見とスティグマ

おすすめしてますが、まだ読めてないです。
電子書籍無いので、日本に戻った時に買えばよかったと後悔。

実際の当事者の声がたくさん載っているみたいで
一部の声ですが、その声を聞いてみたいなと思い
読みたいリストに入ってます。

日本にいる人は、ぜひ手に入れて読んでみてください。