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性格別・認知行動療法で、子供たちをアルコールから守る【依存症予防】アルコール依存症

アルコール依存症が社会に経済的に負荷を与えている病気と言われ、
依存症への有効的な治療が必要ですが、
その一方で、依存症を予防する方が良いよね
みたいな話もあります。

 

では、どのようにアルコール依存症を防げばいいのか。
いろんな国で、いろんな取り組みがされていますね。

 

最近、私自身が興味をひかれた
子供の性格を考慮した予防介入を紹介します。

 

 

 

 

*子供に向けた依存症予防*

だいたい、依存症予防のターゲットになるグループは、子供たちです。

 

 

なぜかと言えば、早い時期でのアルコール使用が
依存症発症のリスクとして知られているからですよね。
(Grant et al., 2001; Sartor et  al., 2007)

 

 

Grant さん達(2001)の研究では、
14歳以下で飲酒を始めた場合は、
生涯で40%の割合でアルコールに依存する。
一方で、20歳以降での飲酒経験では、
10%の割合でアルコールの依存を経験する言われており、
初めての飲酒が遅いだけで、
著しく、アルコールに依存する人が減っていきます。

 

そして、Grantさん達のモデルによると
初めての飲酒経験が1年遅れるだけで
14%のアルコールへの依存の経験を減らせる
推測されています。

 

 

 

ということで、効果的な依存症予防策があるだけで
割と多くの人を依存症のネガティブなサイクルから
遠ざけることができそうですよね。

 

 

*依存症のリスクとなる性格を狙う*

依存症の予防が大切だよねっといった認識が広まり、
未成年のアルコール使用を防ごうと
いろんな試みが行われてきました。

 

 

例えば、Universal school-based programsという
万人向けの教育現場で行われるプログラムがあり、
目的としては、アルコールの知識の啓発・教育、対人スキル・行動規範の形成・ポジティブな人間関係の構築を通して
アルコールの乱用・問題を防ぐ・遅らせることです。

 

私が、子供の頃に受けてた
薬物依存の教育は、これっぽい感じがします。

 

 

そして、このプログラムは、
ステマティックレビュー(信頼度が高い)によると
小~中等度の効果が、学生たちの行動変化にあると
報告されています。
(Foxcroft & Tsertsvadze, 2011; Kyrrestand Strøm et al., 2014)

 

 

予防プログラムの効果はありそうだが、
個人が抱えているリスクを考慮しないと
そこまで大きなものではなさそうですよね。

 

 

一方で、万人向けではなく、より選択的に予防介入をするグループを選んだ場合は、より大きな効果が一般的には期待されているが、欠点もあります。

それは、誤ったラベル付けです。

 

本当は、依存症のリスクが高くないのに
予防介入のターゲットとしてラベル付けされる場合がある。

また、ハイリスクとなる人達
(例:反社会的な行動をとるが、愛着障害の診断は無し;社会手当を受けている子供)をスクリーニングことが
費用面を考えると現実的ではない

 

 

より、選択的にターゲットを選んだ方が
よりよい予防プログラムが行えそうだが
費用・ラベル付けによるスティグマを避けなければ
プログラムの現実性が低いよねって話になり、
それらの欠点を解消したプログラムが発展しました。

 

 

それが、PreVenture Programというものです。
PreVentureは、会社?の名前ですかね。

 

 

PreVenture Programでは、4つの依存症・薬物乱用に関わる性格を持つ子供たちを
ターゲットしたプログラムです。

そして、それらの子供たちに
それぞれの性格に基づいたコーピングスキル
初めての飲酒を経験する前に身につけさせ、
アルコールがコーピングとして使用される可能性を下げることで
依存症になる子供たちを減らす取り組みです。

 

 

イギリス・カナダ、オーストラリア、アメリカと
ヨーロッパとどんどん広がっています。
ただ、アジアにまではまだまだなようです。

 

 

ということで、まずは
どんな性格がリスクファクターとして見られているのか
見てみましょう。

 

 

*依存症の4つのリスキーな性格*

PreVenture Programでは、4つの性格を
依存症のリスクとして扱ってます。

 

 

*4つの依存症のリスクとなる性格*

  • ネガティブ思考
  • 不安感受性
  • 衝動性
  • 刺激探求性
    (Castellanos & Conrod, 2012; Krank et al., 2011)

 

そして、これらを測る方法が
The Substance Use Risk Profile Scale (SURPS)という質問票で
23個のアイテムを使って
子供たちを4つのカテゴリーのリスクを持っているか
スクリーニングします。

 

 

一応、SURPSの日本語版の妥当性・信頼性の
テストがされてるので(Omiya, 2015)、
日本でも、PreVeture Programがされているかもしれませんね。

 

 

認知行動療法が依存症予防にも効く?*

子供たちを、それぞれのリスキーな性格グループに分けたら、
まずは、それぞれの性格に関する教育から始まります。

例えば、他の人の感情に敏感な不安敏感性が高い子供は、
時々、それが原因で自分の感情・恐怖心に
過剰に捉われてしまうことがあります。

 

と言った感じで、それぞれの性格の特徴と
それぞれの性格が引き起こしやすい
問題行動とそれに対する
不適合なコーピングを学びます。

 

 

その後、どのように問題に対して
コーピングするのか目的を決め
方法を探っていきます。

 

認知行動療法的な介入が入ってきて、
個人の経験を思考・行動・感情の視点で
分析してきます。

 

そして、最終的にそれぞれの性格に基づいた
認知の歪みを特定し、その歪みに対して質問を投げかけ
より、歪みのない健康的な思考を手に入れるようにします。

 

 

 

実際に、どれほどの効果が
PreVenture Programにあるのか?

 

イギリス、カナダでまず、PreVenture Programを行うことで、
飲酒率・問題的飲酒が減少が2年間続いたと報告され
さらに、オーストラリアでは
3年間、PreVenture Programの効果が
引き続き、アルコールの飲酒確率・衝動的飲酒の確立
アルコール関連の被害の確立の減少があったと
報告されています。

 

 

いつか、日本でもPreVenture Program的なものが
行われるのですかね?
もしくは、行われていたり?

 

 

*まとめ*

 

  • できるだけ、初めての飲酒経験を遅らせ
    アルコール依存の予防をする
  • 性格を考慮した、依存症予防プログラム
    (PreVenture)の短期・長期の依存症予防効果が期待されている。
  • 依存症治療だけでなく、依存症予防にも
    認知行動療法的な発想が
    依存症のサイクルから我々を遠ざけてくれる可能性がある。

 

 

*記事関連おすすめの本*

「子どものための認知行動療法 ワークブック」

お子さんがいる方は、ぜひ手に取ってみてください。

 

 

 

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