依存症における脳の原因部位【依存症=病気】
依存症の病的部位はどこ?
依存症といえば、
薬物・行動の報酬的要素(ドーパミン)が
議論の的になることが多いです。
しかし、
最近ではもう少し高次な脳機能(認知・感情の障害)が
依存症の開始・悪化・維持のサイクルに
影響を与えていると考えられています。
それらを考慮した依存症の理論を
1つこの記事では紹介します。
実際に、依存症の何が問題で
病気と呼ばれているのか説明します。
*抑制障害と顕著性の帰属*
今回紹介する、依存症の理論の名前は
the Impaired Response and Inhibition and Salience Attribution (iRISA) model
(Goldstein & Volkow, 2002; 2011)
これは、「依存症=病気」が基本的な立場です。
それでは、どこに異常があるのか。
英語がわかる人は、大体わかるかもしれませんが。
- 行動抑制障害(前頭葉の障害)
- 報酬の顕著性(報酬に過剰に反応)
この2つの神経心理学的な機能に問題があると考えられています。
そして、これらの機能に関わる神経機構が
依存症のサイクルである
薬物中毒・渇望・衝動的薬物使用・離脱症状に影響を与えている
考えられています。
そして、彼らの理論は
基本的には、割と昔の神経画像の研究を基に
発展しました。
ただ、2010年以降に多くの
脳の研究がされ
この理論が正しいのか検証されてきました。
そして、現段階では
上記で挙げた2つの大きなカテゴリーに含まれる
6つの脳ネットワークの異常があると
考えられています。
その6つを紹介していきます。
この理論以外にも、「依存症=病気」の立場をとる
理論があるので読んでみて下さい。
*依存症における6つの障害*
まず先に目次的意味ををこめて
6つのネットワークを列挙します。
- 報酬ネットワーク
- 習慣ネットワーク
- 顕著性ネットワーク
- 実行機能ネットワーク
- 自発的ネットワーク
- 記憶ネットワーク
そして、それぞれのネットワークに
それぞれ特有の脳部位(16部位)が関わっています。
依存症は、本当に複雑ですね。
脳部位は軽く説明しますが、
細かいところはで割愛しますね。
依存症をもっと深く勉強したい人は、
コメントください。
少し、解説した記事を書きます。
*報酬ネットワーク*
このネットワークには、4つの脳部位が関わります。
これらの脳部位によって
薬物から得られる報酬を統合し
薬物から得られる報酬をより期待するようになります。
結果として、、
より、薬物使用者にとっての薬物の価値を高めています。
(Milton & Everitt, 2012; Chase et al., 2015)
よって、報酬をもらえるなら
その行動を強化・継続していくのが
動物の基本的な仕組みのため
薬物摂取行動の学習を促進させます。
(Milton & Everitt, 2012)
これらによって、より瞬時にもらえる報酬に弱くなり
薬物関連の刺激に反応しやすくなり、
薬物の渇望が高まっていきます。
(Robbins et al., 2012; Wilson & Sayette, 2015)
報酬についての記事もありますで、
気になる人は、以下の記事へ。
*習慣ネットワーク*
2つの脳部位が関ります。
これらの脳部位によって、
刺激と反応の学習をし
行動の自動化を促します
(Milton & Everitt, 2012; Everitt & Robbins, 2005)
特に、尾状核が自動化された行動を開始させ
被殻では、習慣学習に関わります。
(Grahn et al., 2008)
この、習慣学習が依存症の特徴である
自発的かつ目的ベースの行動(コントロールがある)から
衝動的な薬物渇望・摂取行動(コントロールがない)への
移行を反映しています。
(Everitt & Robbins, 2005, 2016)
依存症と習慣に、ついての記事もあるので
ぜひ。
*顕著性ネットワーク*
2つの脳部位
- 島
- 前帯状皮質背側部
- 下頭頂小葉
これらの脳部位の活動によって
依存症に関連する刺激により反応しやすくなります
(Corbetta et al., 2008)
これらの脳部位の活動は、
薬物への渇望・探索行動に関連しています
(Kuhn & Gaillinat, 2011; Naqvi & Bechara, 2009)
つまり、より薬物を欲している感覚を認識し
注意・意識がより薬物関連に向かっている状態です。
島という脳部位は、私自身が今
研究している内容に関連しますね。
その記事もあるので、ぜひ。
*実行機能ネットワーク*
脳部位
これらの脳部位の役割は、
目標の設定とその目標に向けての行動の維持です
(Badre, 2008)
つまり、ゴールを達成するために行動を抑制したり
認知機能の反応を制御したりし
刺激に対する反応の取捨選択をしています。
しかし、依存症ではこの機能に障害がみられ
行動の抑制がうまくできません。
(Luijten et al., 2014)
行動抑制と依存症についての記事もあります。
気になる人は、どうぞ。
*自発的ネットワーク*
脳部位
これらは高次脳な機能をもっており、
自分自身に集中し
自分自身への気づきや
自分自身を振り返る(分析する)
認知機能になってます
(Murray et al., 2012)
これらの機能は、薬物の渇望・使用願望に関連があります
(Kuhn & Gallinat, 2011; Wilson & Sayette, 2015)
事実、この脳部位の活動異常は
自己認識の障害・非自発的な活動の能力低下・
自己に関連のない課題を自己に関連付け
自己制御の能力の低下がみられます。
(Sutherland et al., 2012; Lucantonio et al., 2014)
*記憶ネットワーク*
脳部位
- 海馬
- 嗅内野
- 脳梁膨大後部皮質
これらは、多様な刺激を関連づけて学習し
柔軟に関連づけながら記憶します。
(Doll et al., 2015)
これは、習慣ネットワークと多少異なり
より柔軟に学習された情報(自発性がある)を使用します。
(Schwabe, 2013)
よって、より自発的で
目標に沿った行動に影響を与えます。
(Doll et al., 2015)
つまり、この脳部位が機能すると
より柔軟な行動ができますが
依存症においては、ストレスが高い状態で
ストレスがこれらの機能を阻害し
より非柔軟な習慣行動を促します(習慣的薬物摂取)。
(Schwabe, 2017)
ストレスの重要性についての記事は、たくさんありますので
ぜひどうぞ。
*依存症の病的部位を狙う*
これらの研究と理論のおかげで
依存症予防・治療・再発予防の糸口を示してくれています。
例えば、習慣ネットワークは
毎日の習慣的な薬物使用を反映しており、
実行機能ネットワークと顕著性ネットワークは
青年期の若い人たちの薬物使用と
依存症再発の予測に役立ってます。
報酬ネットワークは、薬物使用によって変化し
治療によって元に戻る可能性も示唆されています。
記憶ネットワークは、
認知行動療法によって介入され
新たな機能的な行動・考えの再学習を促します。
という感じで、
それぞれのネットワークを依存症の病的な部位として、焦点をあてた介入が
依存症予防・治療・再発予防に役立つ可能性がありそうですね。
*まとめ*
- 依存症=病気
- 抑制・報酬反応の異常が依存症の主要な問題。
- 計16個の脳部位が依存症の特徴に関わる。
- 依存症は、報酬のあるものを学習。
- 依存症行動は、習慣化している(コントロール不能)
- 依存症では、自己の認識不足・自発的な行動がとれない
(薬物が脳をハイジャック状態) - 依存症では、行動の抑制力が弱まっている
- ストレス下においては、柔軟な対応ができない
(習慣化された、薬物摂取を選択) - 依存症では、薬物関連の刺激に反応しやすい
*記事関連のおすすめの本*
「最高の脳で働く方法」
「Your Brain at Work」
脳科学の話がたくさん出たので、
脳の機能・仕組みを理解したら人生うまくいくよね。
そんな本を紹介しますね。
内容は、集中力・モチベーション・他者との関り・変化の作り出し方。
そのような内容になっています。
この本も、依存症に関わる内容があり
いろんな依存症のヒントが散りばめられてます。
また、脳を上手に使って上手にお仕事をする
ヒントもたくさんです。
ぜひ、購入して読んでみてください。