依存症治療【心理学的治療】行動変容・多理論統合モデルを利用した依存症の治し方(変化のステージ)
行動の変化が依存症治療の基本
依存症の回復にいろんな治療があります。
しかし、どの治療法や理論をとっても
依存症の回復の根本は
「行動変化」です。
ということで、
今回の記事では、
行動変容の理論を1つを紹介します。
行動の変化と言えば、
悪い習慣を断ち切ることですよね。
ということで、まだ以下の記事を読んでいない人は
ぜひ、読んでみてください
- *多理論統合モデル(TTM)*
- *第1ステージ=無関心期*
- *第2ステージ=関心期*
- *第3ステージ=準備期*
- *第4ステージ=実行期*
- *第5ステージ=維持期*
- *第6ステージ=満期*
- *行動変容の法則*
- *まとめ*
- *記事関連のおすすめの本*
*多理論統合モデル(TTM)*
今回紹介する、モデルの名前は
The Transtheroretical Model (TTM)です。
(Prochaska et al., 1992)
日本語だと、「多理論統合モデル」らしいです。
言葉から推測できるように、
いろんな行動変容の過程・理論(約10個)と
多様な心理学的治療(約300個)を
統合したモデルになってます。
という感じで、1つの側面しか見ていない理論・治療を
たくさん統合した結果、
行動変容には、6つのステージがあると
結論付けました。
*行動変容の6つのステージ*
- 無関心期(前熟考期)
- 関心期(熟考期)
- 準備期
- 実行期
- 維持期
- 満期
このステージを1から6まで前後しながら進んでいきます。
そのため、一度ステージ4に到達しても
ステージ3に後退することもあります。
ここから先は、
それぞれのステージを
1つずつ解説していきます。
*第1ステージ=無関心期*
一番最初のステージで、
行動を起こす意思が近い将来ない。
*無関心期の特徴*
- 行動の結果に興味がない。
- 悪い行動による悪影響の知識がない。
(例:お酒を飲み続けたことによる、予想される結果の知識がない) - 自分の変化を起こす力に自信を失った
(何度も変化しようと挑戦し、失敗したため) - リスクの高い行動(依存物質・行動)について、
話す・読む・考えることを避ける
*無関心期の例*
- たばこを吸い続けており、
別にやめる必要性を感じていない。 - 特に、健康に対する悪影響に興味もない。
- 何度もお酒をやめようと努力したが、
上手くいかなかったため、
自分には無理と思っている。
*無関心期の期間(目安)*
- 6か月
(絶対的な期間ではなく、短い・長い場合もあり)
*無関心期から関心期へ必要なこと*
- 知識を増やす
- 行動の継続による悪影響を認識する
- 行動の報酬効果を下げる。
(例:嫌酒薬・薬物の値段を上げる)
(例:遠い未来の結果の価値を上げる)
これらを通して、行動の変化を起こす
利点が上昇すると、次のステージに移行します。
*第2ステージ=関心期*
2番目のステージでは、
行動を起こす意思が6か月以内にある。
*関心期の特徴*
- 行動を変えることの利点を認識
(例:ファストフードを食べる量を減らすことで、健康になる)
*関心期の期間(目安)*
- 6か月
(絶対的な期間ではなく、短い・長い場合もあり)
しかし、この期間では
行動を変化させる利点と欠点のバランスを
天秤にかけ続け、葛藤し
結局、行動を起こさず先延ばしする
慢性的な関心期が存在し
この第2ステージに長い間
居続ける人もいます。
*関心期から準備期へ必要なこと*
- 利点と欠点のバランスを崩す
- より、利点を明らかにする
- 自分は変化を起こす能力があるという気持ちを高める。
この時期では、決断に与える要素(利点・欠点)が重要に
なってきますね。
依存症は、選択の障害とも言われています。
ぜひ、以下の記事で依存症における選択の重要性について
読んでみてください。
*第3ステージ=準備期*
第3ステージで、
近い将来(1か月以内)、行動を起こす意思がある。
*準備期の特徴*
- 過去1年に、行動を起こした経験がある
- 行動計画がある。
(例:ジムにジョギングをするために週1回、夕方に行く)
(例:お医者さんに、薬物摂取について相談しに行く)
という感じで、どんな「行動」をとるか計画する時期。
*準備期の期間(目安)*
- 1か月
(絶対的な期間ではなく、短い・長い場合もあり)
そして、この時期の一番の壁は、
「どうせ挑戦しても、失敗する」
という心配です。
*準備期から実行期へ必要なこと*
- より、具体的な行動計画
*第4ステージ=実行期*
第4ステージは、
過去6か月に、明らかな行動の変化を起こした状態。
*実行期の特徴*
- 観察できる行動の変化がみられる。
(例:お酒を飲んでいない・ストレスマネージメントを始めた) - 観察できる変化が、行動と一致している
(例:痩せてるいる(変化)ー運動を始めた(行動)) - 最も、過酷な時期(前のステージに移動しないように努力する)
(行動し始めて、最初の数日・数週間が一番後戻りするリスクが高い)
*実行期の期間(目安)*
- 6か月
(絶対的な期間ではなく、短い・長い場合もあり)
(6か月間は、多くの努力を必要とする)
依存症においては、この6か月を乗り越えると
急激に薬物再使用の比率が減ると言われています。
(Prochaska & DiClemente, 1983)
*実行期から維持期へ必要なこと*
- 他の人に、変化を起こしていることを伝える。
(変化を起こしたことによる、不調があることを伝える)
(例:断酒をしたことによる、離脱症状が出ることを伝える) - 変化を起こしている大変な時期を乗り越えるために
支援が必要なら、お願いする。
Prochaska(2018)さんは、面白いことを言っていて
この時期は、「行動という名の手術・治療をしている時期」
だと言ってます。
その手術から回復するためには、
6か月かかり、体調不良も起こり、支援が必要な時期である。
*第5ステージ=維持期*
第5ステージは、
薬物再使用をしないように努力を継続中で、
実行期と比べると行動の変化はない状態。
*維持期の特徴*
- 依存していた物質・行動への衝動は少ない。
- 行動を継続する自信が積みあがってくる。
- 実行期よりも、多大な努力が必要なくなる。
*維持期の期間(目安)*
- 6か月から5年
(絶対的な期間ではなく、短い・長い場合もあり)
少し興味深いデータを出しますね。
禁煙期間と再喫煙率のデータです。
(US Department of Health and Huamn Service, 1990)
維持期における
12か月の禁煙を続けた人たちのうち
43%が再び喫煙を開始する。
一方で、5年間禁煙し続けた人は
7%の人が再喫煙する。
よって、1年のうちに
半分ほどは、薬物を再使用し
前の第1・2・3・4ステージに後退するということですね。
たばこに関しては、おおよそ15%の人が
第4ステージの維持期から、第1ステージの無関心期に
戻ると報告されています。
(Prochaska et al., 1983)
一方で、大半の人が
第2ステージの関心期・第3ステージの準備に
後退し、もう一度挑戦しようと準備します。
ただ逆に、5年行動を維持し続けると
ほとんどの人が薬物を再使用しないという
いいニュースでもあります。
これら点については、個人的にいいと思っています。
なぜなら、薬物再使用を考慮した
依存症回復のモデルになっているためです。
*維持期から満期へ必要なこと*
- 薬物再使用を誘惑する原因の対処法を準備しておく
- 原因の例(長期間のストレス・心配・不安・憂鬱・孤独・退屈)
- 対処法の例(他者との交流・散歩・リラックス)
再び、ストレスの話が出てきましたね。
本当に、何度も言います。
ストレスと依存症は、非常に密接な関係があります。
ぜひ、以下の記事も読んでみてください。
*第6ステージ=満期*
第6ステージは、
もう薬物を再使用しないという
絶対的自信に満ちた状態。
*満期の特徴*
- どんな状況下でも誘惑に負けない。
- 絶対的自信。
また、少しデータを出します。
どの程度の人がこの満期の基準にたどり着くのか。
たばことお酒については、
初めて5年間禁煙・禁酒を達成した人たちのうち
約20%の人がこの基準を満たすと報告されています。
(Snow et al., 1992)
もちろん、
理想としてはこの満期に到達することかもしれませんが
大半の人が、おそらく薬物を使用しない生活を
維持したいと考えているため、
第5ステージの維持期にとどまり、
自分を律しているのかもしれませんね。
また、Prochaska et al.(1983)さんたちは
第6ステージの満期の基準が高すぎて、
そもそも満たす人が少ないとも言っています。
という感じで、
あまり第6ステージの満期は、現実味がないので
あまり、依存症においてはあまり意味を持たないかもしれませんね。
*行動変容の法則*
基本的には、1ステージ進んだら
もう前のステージに戻らないということではないです。
以上の6つのステージを前後し
進んだり、戻ったりし
依存症回復に必要な行動の変化が
見られていきます。
そして、行動変容の成功の法則が3つあります。
- 行動変化の妨げとなっている壁を取り除く
- 次のステージへの移行を促進する
- 薬物再使用を防ぐ
つまり、変化を起こしやすい状況にし
次のステージに進むために必要なことをし、
後退しないように、努力することが
この理論における、行動変容の基本原理になってきます。
そして、皆さんがまず初めにすることは、
自分が今、どこのステージにいるのか把握し
今現在において、現実的なゴール設定をすることです。
(例:準備期に現在いて、ゴールとして実行期に移行する)
私の場合は、英語を毎日勉強しています。
この記事を書いている時点では、3か月目です。
そのため、実行期ですね。
ということで、私の目標は維持期になります。
といことで、現状把握と目標設定をしておいてください。
次の記事では、それぞれのステージで少しずつ少し紹介しました
「次のステージに移行するために必要な過程」について、より深く
解説していきます。
*まとめ*
- 依存症回復において、行動の変化が必要不可欠
- 多理論統合モデルにおいて、行動変容には6つのステージがある。
無関心期・関心期・準備期・実行期・維持期・満期 - 依存症回復は、この6つのステージを前後に進む。
- 多くの依存症回復のゴールは、維持期。
- 薬物再使用・依存行動の再開が考慮されたモデル。
- 自分がどのステージにいるのか把握し、現実的なゴール設定をする。
*記事関連のおすすめの本*
「やる気が上がる8つのスイッチ」
「The 8 Motivational Challenges. A Short Guide to Lighting A Fire Under Anyone」
この本、私が割と英語で本を読むようになったときに
手に取った本で、短くてシンプルで
英語の本を自分は読むことができるという
達成感を私に与えてくれた本です。
内容は、結構面白くて
すべてのみんなに共通する
モチベーションを高める方法はないという立場で、
3つの指標で、8つのタイプに
人の特性を分類して、
それぞれのタイプにあった方法で、
自分・他者のモチベーションを高めた方がいいよねって本です。
すっごいシンプルにまとめてあって
すぐ実践できるタイプ別のモチベーション向上方法が載っていて
とっかかりやすいと思います。
ぜひ、購入して読んでみてください。