依存症は選択【依存症の定義】
*依存症の原因は、単なる選択の問題*
依存症について、調べると大抵は
「依存症=病気」という話だらけですね。
私自身もそのような記事を書きました。
ぜひ、チェックしてみてください。
たた、この視点について批判もいくつかあります。
その1つを紹介します。
主張としては、
「依存症は普通の選択過程における障害」
(Heyman, 2013)
どんな意味なのでしょうか。
解説していきます。
- *依存症は病気ではなく、病気様なもの*
- *選択の法則*
- *Hyperbolic discounting(双極割引)*
- *Melioration(逐次的改良)とmatching law(マッチングの法則)*
- *選択を変える方法*
- *まとめ*
- *記事関連おすすめの本*
*依存症は病気ではなく、
病気様なもの*
依存症の定義の例を1つあげますね。
*依存症*
慢性的な、再発を繰り返す
衝動的な薬物使用を特徴とする
脳の病気
(Quenqua, 2011)
「依存症=脳の病気」ということですね。
しかし、この視点を揺るがす
興味深いデータがあります。
多くの人が専門的な依存症治療なしに
依存症の回復・寛解をし
また、治療なしに薬物をやめた人たちの特徴が
重要な選択に直面した人達でした。
(Biernacki, 1986; Robins, 1983;
Stinson et all.,2005; Klingemann et al., 2010)
重要な選択の例として
- 金銭的な選択
(罰金・経済的心配) - 家族関連の選択
(良い親になりたい・家族に誇ってもらいたい
・家族に恥をかかせたくない)
つまり、重要な選択を迎えると
病気であったはずの依存症が治療なしに
依存所から回復してしまうということです。
しかし、この事実が依存症が病気ではないと言っているわけでなく
依存症は、病気様のものである。
事実、依存症では
薬物摂取行動の利点と欠点のアンバランスが発生してます。
例えば、お酒を飲む利点と欠点を比較したとき
依存症の場合、利点を常に重要視してしまう。
という感じで、薬物の使用利点が欠点を上回るような
依存症様の症状は見られます。
このような依存症を説明するために必要なものが
我々の長期的に物事を見る視点が非合理的な点です。
そのように言ってる人がHeymanさん(2013)です。
非合理な長期的な視点とはなにか説明していきます。
*選択の法則*
依存症の行動が、自己を傷づけたり
非合理的な行動のため
病理的に見えますが、
必ずしもそうでない可能性があります。
例えば
一般的に、多くの人がやらなきゃいけないことを
後回しにして暴食したり、運動をさぼったり
より容易・ストレスがかからない楽な行動を選びます。
という感じで、我々人間は非合理的で
依存症の病気様の行動も同様に非合理な選択の結果として説明が可能です。
それが、Heymanさん(2013)の主張です
この主張を支持する3つの原則があります。
- hyperbolic discounting
(双極割引) - melioration
(逐次的改) - mathcing law
(マッチング法則)
(Herrnstein, 1970, 1990;
Rachlin & Green, 1972;
Ainslie, 1992; Rachlin, 2007)
これらの法則を1つずつ説明していきます。
*Hyperbolic discounting
(双極割引)*
Wikipediaを参照にすると
Hyperbolic discountingのことを説明するために
「遠い将来なら待つことは可能だが、近い将来は待つことができない」
というフレーズが使われてます。
双曲割引 - Wikipedia
他にも、
「今日と明日の違いは、明日と明後日の違いより大きい」
というフレーズもあります。
つまり、遠い将来の出来事よりも
近い将来の出来事を優先する。
例えば、今すぐ5000円もらえる選択と
10000円もらえる選択があります。
縦軸が価値で、横軸が時間です。
普通に考えて、今すぐどちらかのお金がもらえる場合
10000円の方が価値がありますが
今すぐ5000円をもらえる場合の価値と
1年後に10000円もらえる場合の価値を見てもらうと
10000円の価値が、今すぐもらえる5000円よりも
価値が低くなります。
という感じで、
遠い未来の結果と近い将来の結果を天秤にかけると
より近い将来の結果がより価値を持ち
遠い将来の結果は価値が下がります。
結果、ケーキを選択する人が多いのが事実です。
これは、我々の意思が弱いわけではなく
動物(人間も)の基本的な性質とされています。
これを依存症に当てはめると
飲酒(近い将来)VS飲酒による病気(遠い将来)
そして、飲酒が選ばれるのは当たり前の選択であるということです。
*Melioration(逐次的改良)と
matching law(マッチングの法則)*
Meliorationとは
なぜ、動物が受け取る報酬を基に
決断・選択をしているのかを説明する理論です。
Meliorationは、基本的には
「make better = より良くする」とい意味です。
そして、動物は
より良いものにより時間と努力を費やします。
つまり、我々はより良いものを
より良くしようと時間と労力をかける生き物ということです。
そして、これらの選択に対する投資(時間・労力)は
もう一方の選択肢がより良いものでない限り
続きます。
そして、このMeliorationは
マッチング法則を予測するための理論になってます。
マッチングの法則とは、
多くの選択肢がある状況下で
どのように我々の選択がばらつくか説明しています。
そして、この選択の割合とその選択が与える報酬の割合が
一致します。
それこそがマッチングの法則です。
つまり、どれほど選択が報酬をあたえるかによって
その選択が選ばれる割合も決まるということです。
例えば、AとBの選択肢があります。
Aの報酬を食べものとしたとき、リンゴを3つもらえます。
Bの報酬も同様の食べ物で、リンゴを2こもらえます。
その場合、動物はAとBのどちらを選ぶか。
マッチング理論では、報酬(AとBのリンゴ)の比率と
AとBの選択肢を選ぶ比率が一致します。
要は、計5回の選択(AとB)を与え選ばせると
Aは3回選ばれ、Bが2回選ばれる。
3:2(報酬)=3:2(反応)
報酬と反応の比率がマッチングします。
ということで、薬物がより報酬を与えるならば
より頻繁に選択され、
選択された後は、より良いものに動物は
時間と労力を投資するので
薬物を使い続ける選択を取ります。
*選択を変える方法*
この理論から、我々がどのように薬物という選択肢を
選ぶのか理解できてきました。
3つの理論を組み合わせると
薬物は、即座に報酬を与えるため
選択肢として優先され、より継続されやすい。
しかし、この理論を逆に利用することで
依存症から回避できる可能性も示しています。
例えば、
- 長期的な結果により重点を置いて
決断をする。 - 短期的な報酬を減らす(薬物の報酬)
つまり、より遠い将来の結果に価値を置いた状態で
決断し
より近い将来の結果の価値を下げて
さらに決断すると
より良い決断ができるようになる。
これらを行う方法はいくつか依存症にあります。
例
- 薬物の効果を悪いもの変える
(例:アルコールの分解酵素を阻害をする薬を飲み、
頭痛等を引き起こさせる) - 薬物の値段をあげる
(例:たばこの値段を1500円まであげる)
また、上記に挙げた大きな決断が迫った時が
より依存症から脱却するチャンスである可能性があります。
という感じで依存症の理論を理解すると
依存症予防・治療・回復の糸口が見えてきます。
ぜひ、他の依存症の理論もチェックしてみてください。
*まとめ*
- 多くの人が、重大な決断を迫られると
治療なしに依存症から回復・寛解する。 - 動物の選択はいつも非合理
- 3つの選択の法則によって依存症の行動は説明できる
(Hyperbolic Discounting, Malioration, Matching Law) - 動物は、より即座により多くの報酬を与えてくれるものを優先し
より時間と労力をかけてその選択を選び続ける。 - 長期的な目線を持つこと・短期的な報酬を報酬で無くすことで
依存症の行動を変えられる可能性がある。
*記事関連おすすめの本*
「予想通りに不合理」
「Predictably Irrational」
前もこの本紹介したのですが
この本ほど、有名な動物・人類の非合理性を
ワクワク説明している本はないかなって思ってます。
たくさんの事例が載っていて
楽しく読めます。
ぜひ、購入して読んでみてください。