CuriousHunter 依存リハ

好奇心のままに、依存症を探索

お酒・たばこ・ギャンブル・薬物をやめるには、やめる理由がたくさん必要。【依存症治療】多理論統合モデル

*依存行動・物質をやめる決断に
 影響を与える2つの要素*

 


何度も言いますが、「行動の変化」が依存症治療の基本です。

 

そして、多理論統合モデル(TTM)が
依存症回復のステージを6つ示してくれています。


その6つのステージにおいて、重要な視点が1つあります。

 

それが、「意思決定のバランス」です。

 

これを理解すると、
より依存症回復のステージの理解が深まります。

 

まだ、TTMについての記事を読んでない人は、
確認してみてください。

 

curiousquest.hatenablog.com

curiousquest.hatenablog.com

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*意思決定のバランス*

 

意思決定のバランスとは何か。

 

単純に言うと、行動変化の利点と欠点の天秤です。

 

例えば、断酒をする利点と欠点の天秤です。

 

例としては、

  • 利点として、節約になる。
  • 欠点として、好きなお酒が飲めなくなる。

 

みたいな感じで、利点と欠点の天秤によって
我々の意思決定が決まるといった考え方です。

 

 

そして、それぞれのステージで
この意思決定のバランスの特徴があります。

それらを紹介していきます。

 

 

*利点・欠点バランスの特徴(ステージ別)*

特に、序盤のステージと
意思決定のバランスの特徴について話していきます。

 

  • 無関心期では、想像がつくように
    行動を起こす欠点が利点より大きい状態です。
  • 無関心期から関心期では
    行動変化の利点が上昇します。
  • 無関心期から関心期では
    行動を起こす欠点にほとんど変化はありません。
  • その後の関心期から実行期への過程では
    行動変化の欠点が低くなります。
  • 行動変化の利点が実行期では
    関心期より高くなります
    (Prochaska et al., 1994)

 

これらの特徴が、
依存症回復のステージを移行するための
法則を見つける発見になりました。

 


*利点・欠点バランスの法則*

 

いくつかステージ移行と意思決定バランスの法則が
見つかりました。

 

  • 無関心期から関心期では、行動変化の利点の上昇が必要
  • 関心期から実行期では、行動変化の欠点の減少が必要

 

よって、無関心期では
行動変化の利点を介入のターゲットになり、
関心期に移行したら、行動変化の欠点が
次のターゲットになる。

 

そして、実行期までに
行動変化の利点が欠点を上回る必要がある

 

だんだん、行動を変化させるための
鍵が見えてきましたね。

 

 

*行動を起こさない理由の影響力*

何事も、行動を変化させる時に
やるべき理由とやれない理由があると思います。

 

例えば、普段は仕事で忙しくて
運動をしていない。
家に帰ってきて、テレビに釘付けで
休日も運動をしない。

 

そんな時、運動をしたほうがいい理由は
大抵の人が認識してます。

 

*行動をおこす理由の例*

  • 運動をすると健康になる。
  • 運動するとストレスが減る。
  • 運動すると、記憶力が上がる。
  • 運動すると、認知機能が上がる。
  • 運動すると、脂肪が痩せる。

 

 

5つほど運動をするという
行動の変化の長所を挙げました。


特に、目新しい利点ではなく
まあ、大抵の人が思いつくと思います。

 

5つの行動を変化させる理由があれば、
実際に、運動習慣を実行できそうですが
そんなに簡単ではなく、
我々は、運動をしたくない理由も持っています

 

 

*行動を起こしたくない理由の例*

  • 仕事が忙しくて疲れてそれどころではない。

 

 

よく聞く、運動をしない理由ですね。
そして、
このたった1つの運動をしない理由が
実は、5つの運動をした方が理由に勝り、
我々は、運動をするという決断・行動になりません

 


なぜかというと、ある公式があります。

  • 無関心期→実行期 = 34%分の行動変化の利点の上昇
  • 無関心期→実行期 = 17%分の行動変化の欠点の減少

 


これらの式が何を伝えているか。

 

少し、わかりやすいよう
公式をシンプルに解釈します。

 

どちらの公式の左辺は、
無関心期から実行期への移行を表しています。

そのためにステージ移行に
必要なことが右辺に書いてあります。

 

 

1つ目の公式では、
34%の行動変化の利点の上昇が発生すると
無関心期から実行期への移行が可能ということです。

 

例えば、100個の運動をする理由をすでに
無関心期で持っていたとしたら、
実行期に行くためには、
134個の運動をするべき理由が必要ということです。

 

 

同様に、2個目の公式では
17%の行動変化の欠点の減少が発生すると
無関心期から実行期へと移行できます。

 

ということは、無関心期に100個の
運動をしない理由を持っていて
実行期に移行するためには、
17個減らして、83個にしないといけない。

 

 

一見、行動を起こさない理由を減らすことが
最善のように見えますが、(変化が少なくて済むため)
実際は、1つの行動を起こさない理由を減らすことは
簡単ではないと思います。

 

上記の例では、
「仕事が忙しくて運動どころではないため
運動をしない。」

これを改善するために、仕事をやめるかと言ったら
そんなことはないと思います。

 

 

なので、公式の解釈としては
行動を起こさない理由の1つ1つが
行動を起こす理由の1つよりも
大きい影響力を持っている。


そんなことが言えそうですね。

 

 

ということで、
これらから言えることは、
行動を起こさない理由の方が
比較的強い影響力を意思決定に対してを持っている
ということです。

 

たかが、1つの行動を起こさない理由をに対して
より多くの行動を起こす理由が必要ということです。


そのため、無関心期・関心期では
本を読んで情報収集したり、
自己分析をし自分の大切にしている価値を
認識したり、
他者・環境への影響を考慮したりと
行動を起こすべき理由を見つけることが
依存症回復のステージを進むために有効
なのだと思います。

 

よって、
行動を変化させるためには
行動を起こさない理由より
行動を起こす理由必要がより多く必要
ということです。

 

 

 

*まとめ*

  • 意思決定バランスは、行動変化の利点と欠点の天秤による
    意思決定の仕方
  • それぞれの回復ステージにおける、
    意思決定バランスの特徴がある。
  • 無関心期では、欠点が利点を上回る。
  • 関心期では、行動変化の利点の上昇
  • 実行期では、行動変化の利点が欠点を上回る。
  • 行動変化を起こさない理由は、意思決定の天秤上では
    行動変化を起こす理由よりも、比重が重い。
  • 依存症回復の初期ステージでは、より多くの
    行動変化を起こす必要がある理由が必要。

 

 

*記事関連のおすすめの本*

「Think Again 発想を変える、思い込みを手放す」

「Think Again: The Power of Knowing What You Don't Know」

 

意思決定のバランスを崩すには、
やはり知識が多少なりに必要だと
思います。

 

行動変化の利点をしっかりと理解することが
大切だと思います。

なので、常に学び続けて
知っていたつもりを防いで、
再考して、新たな視点で
物事をみる重要性を語ってくれてます。

著者も有名な、アダム・グラントさんですので、
ぜひ、購入して読んでみてください。