悪い習慣を断ち切る【依存症は習慣】
*習慣を壊す=依存症脱却*
物質使用障害・依存症の特徴として、
毎日のように同じ薬物・行動をとります。
このような依存行動は、習慣という理論で説明がつく。
そんな依存症の理論が存在します。
名前は、
An adapted habit theory of substance use disorder (Newlin & Strubler, 2007)
この理論を基に
「依存症=習慣」なのか少し見ていきましょう。
- *依存症における習慣の重要性*
- *行動の習慣形成・維持が依存症の肝*
- *依存症診断と習慣の関連*
- *依存症は、コントロールできない習慣*
- *依存症は、習慣の形成から習慣の維持*
- *習慣を壊す=依存症の治療*
- *まとめ*
- *記事関連のおすすめの本*
*習慣*
我々の世界は、習慣で散りばめられてます。
もし仮に、習慣の機能を我々が失った場合
どのようなことが考えられるでしょうか。
Newlin & Strubler (2007)の例を挙げますね。
例えば、空腹時・食べ物が提供されたとき
毎回どのように食べるかすべてを再学習しなければいけないとします。
その場合、赤ちゃんはある特定の方法で食べる方法を習慣化するまで
このごはんの食べ方を毎回再学習をしなくてはなりません。
そして、成長し子供になると
習慣化されたごはんの食べ方から逸脱すること少なくなってきます。
例えば、食べ物が毎日のように大きく変わる場合は
習慣化された食事法から外れることが多く、
また、ご飯を食べる環境が家から高級レストランになると
同様に、習慣化された行動とは異なった行動をとります。
しかし、この食事習慣をマスターすることは
子供の成長にとって重要であり、
習慣なしでは、成長・発達に影響を与えます。
事実、大人は食事を習慣化させいちいち再学習することなく
規則的な食事をとることで、
体重の維持やエナジーバランスを保っています。
そのため、行動の習慣化の発達は
我々の生活において重要な機能の1つと言えると思います。
しかし、
習慣化する行動は、大抵は生存・繁殖のために必要なものですが
時々、そうでないものがあります。
それが、依存症です。
「習慣という機能なしに、薬物依存はおそらく存在しないだろう。」
そんな言葉をNewlin & Strubler (2007)さんたちは残しています。
*依存症における習慣の重要性*
有名な実験がNewlin & Strubler (2007)さんたちが
紹介してくれてます。
実験では、ネズミさんを使いました。
ネズミさんに、モルヒネ(薬物)を含んだ餌を数日間与え続けました。
そして、ネズミさんにモルヒネの作用を妨げる薬物を与えました。
そうすると、モルヒネを使用することで得られる効果が得られなくなります。
その結果、何が起こるか。
離脱症状や耐性をねずみさんに作り上げてしまいます。
この2つは、薬物依存に重要な特徴の一部です。
しかし、この実験では依存症に診断に重要な指標である
薬物探求行動や注意バイアス等の認知機能に影響を与えませんでした。
つまり、モルヒネ(薬物)のみでは
学習・行動が関わる習慣化された薬物摂取
を作り出せなかったということです。
これらを理由に、行動の習慣の存在無くして
薬物の依存症は成り立つことはない
と2人は提案しています。
*行動の習慣形成・維持が依存症の肝*
この2人の依存症を説明する時のキーワードが2つあります。
- 習慣の形成
- 習慣の維持
なぜか。
少しずつ、紐解いていきます。
まずは、依存症の診断から習慣と依存症を紐解いていきます。
*依存症診断と習慣の関連*
診断の手引きであるDSMには、薬物依存の基準があります。
DSMによると
薬物依存とは
ネガティブな結果を引き起こす可能性があるにもかかわらず、
また、他の活動・役割を無視してでも、
習慣的な行動(薬物獲得・使用・継続)を特徴とする。
(APA,2000)
この、診断基準における薬物依存のなかには
確かに、「習慣的な行動」が含まれています。
依存症において、習慣の重要性が見えてきましたね。
*依存症は、コントロールできない習慣*
まず、どの行動を習慣の形成システムは
脳のどこで行われているのか。
簡単に説明すると、習慣形成は学習システムとモチベーションに関わる
脳のドーパミンシステム(報酬系=中脳腹側被蓋野・側坐核)が関係しています。
要は、報酬がもらえたら学習して
ある特定の行動をするモチベーションを与えてくれるので
習慣を形成する。
それが故に、それらの行動を労力のいらないものにしようと
習慣化させようとします。
一般的には、このシステムは強烈な感情(快楽・恐怖)と
強いモチベーションによって活性化されます。
なぜなら、モチベーションには感情が必要なためです。
ドーパミンと依存症の重要性は、他の記事でも
触れたので、ぜひ読んでみてください。
そして、そのシステムに影響を与える薬物を使った実験では、
時々、依存症はコントロール不能な習慣になる可能性があります。
一方で、習慣の維持のシステムは少し異なります。
習慣を実行するに関係する、脳の脳部位(大脳基底核)は
習慣形成の脳部位とは異なります。
この脳部位は、脳にプログラムされた行動の計画書を
実行させる機能があります。
(行動計画書の例; 薬物探求活動・自己投薬)
要は、あらかじめ頭の中にある行動の計画を実行するための
ボタンがあり、そのボタンをこの脳部位が押します。
そうすると、一気にノンストップで計画を最初から最後まで実行します。
習慣の維持には、もう1つ異なる脳部位(前頭皮質)が関わります。
この脳部位は、認知機能の役割があり
習慣的な行動によって期待される結果の予測に役立っています。
(例; お酒を飲むことで得られるだろう回復薬のような効果を予測)
なので、習慣の実行・維持は
習慣の形成(モチベーション・学習のシステム)とは異なる
脳部位で行われています。
難しいこの概念をきれいに2人はまとめてくれてます。
*依存症は、習慣の形成から習慣の維持*
早速、図を見てみましょう。
まず、上から下に向かう時間系列になってます。
初期の段階では、まだ依存症ではなく
薬物使用によって
学習・モチベーションが高まり、習慣の形成を
していく状況です。
そのため、
この段階では脳の報酬系(ドーパミン)が関わっている段階です。
その後、2つのステージ(習慣的薬物使用)に移行すると依存症になります。
*行動計画の実行ステージ*
1つ目の依存症のステージは、
習慣形成(運動計画書)の実行です。
この計画書は、ON/OFFタイプのスイッチで動きます。
つまり、一度ONになると計画(習慣)を
最初から最後まで実行します。
この段階では、すでに薬物使用への
幸福感・恐怖等の感情によって受ける
モチベーションは薄れています。
そのため、働いている脳の部位も異なります。
この段階では、習慣(計画)を実行させる脳部位(大脳基底核)が働いています。
*薬物使用への期待感*
2つ目の依存症のステージは、
薬物使用によって得られる効果への期待です。
この習慣的行動に得られる効果の期待に関わる要素は、
認知機能と薬物使用によって得られる主観的なポジティブな効果への期待です。
例えば、お酒を魔法の回復薬のようにとらえる認知を持っている。
その場合、この認知・期待がより薬物使用の習慣化を強化します。
この役割をしている脳の部位(前頭皮質)は、
再び習慣形成・習慣の実行機能とは異なっています。
この図から、見えてくるところは
依存症とは、薬物使用の習慣形成から習慣実行・維持に移り変わる状態である。
そして、脳の機能も同様に
初期は、報酬系(ドーパミンシステム)から始まり、
その後は、行動実行・認知機能の脳機能(大脳基底核・前頭皮質)に移行
していく状態。
*習慣を壊す=依存症の治療*
この依存症の理論によると、
依存症とは、
習慣の形成・実行・期待を組み合わせた適応的習慣がコントロール不能
になった状態である。
この定義・理論をベースに行くと
依存症へのアプローチが見えてきます。
この習慣の形成・維持機能に介入し、習慣を変える(薬物摂取を止める)。
という感じで、依存症の理論をみると
依存症の治療のヒントを与えてくれます。
今後、習慣の壊し方についての記事も
書いていきます。
また、実際はもう少し
依存症=習慣の理論は深いので
少しずつ、更新していきますね。
*まとめ*
- 習慣は、動物の生存機能
- 習慣なしに、依存症を説明できない
- 薬物の効果のみでは、習慣化を説明できない
- 薬物依存は、習慣的行動
- 薬物依存は、習慣の形成から実行・期待へ移行する状態
- 習慣を変えることが、依存症の治療の鍵になる可能性
他の依存症の理論についての記事もあるので
ぜひ読んでみてください。
*記事関連のおすすめの本*
「スマート・チェンジ 悪い習慣を良い習慣に作り替える5つの戦略」
「Smart Change: Break the habits that hold you back and form the habits of success」
習慣が大切、良い習慣、習慣の形成の仕方。
そのような本は、たくさんありますよね。
ただ、この世の中悪い習慣もあり
どのようにその習慣を壊すかについての本は少ないです。
依存症において、望まない習慣を断ち切ることが鍵になりえます。
どのように悪い習慣をやめるのか
気になる人は、ぜひ読んでみてください。