依存症は存在しない?
*依存症は自由意志の行動*
依存症の理論を大半を占めているものは、
神経生理学的な側面を持っているものですね。
脳の報酬系が影響を受けて、学習が発生してみたいな話です。
また、依存症=病気といった発想です。
依存症が病気についての記事がいくつかあるので
ぜひ、読んでみてください。
ただ、今日の理論はかなりユニークな理論です。
*依存症は神話*
基本的に、依存症は病気としてみなされていますが
ある人が、依存症は存在しないと言ったんですよね。
それが、
" The Myth of Addiction (Davies, 1997) " = 依存症は神話
つまり、依存症は病気ではないってことですね。
強烈な理論ですよね。
ただ、この理論もなにも適当に言っているわけではありません。
この理論の中では、依存症を
ー 完璧な自発的で目的のある行動 ーと定義しています。
この定義は、よく聞く依存症定義の一部である
「依存症=コントロールを失う状態」とは全く異なりますね。
依存症の定義について、興味のある人は
以下の記事も読んでみてください。
*「依存症=病気」理論の欠点*
なぜ、Davisさんがこのようなことを言ったか。
神経生理学的な視点での「依存症=病気」であるというの定義の欠点
があることを主張してます。
どんな欠点か。
例えば、もし仮に依存症が病気であるならば
なんで刑罰があるのかという点です。
これは、依存症だけが持つ特別な特徴です。
ー 病気でありながら、刑罰を受ける。犯罪であるということ。ー
Davisさんは、依存症が本当に病気であるならば
刑罰ではなく、治療を優先するべきだと言っているわけです。
逆もしかりで
依存症が犯罪であるならば、依存症は病気ではないわけです。
ただ、単純に薬物を使用したという罪を犯し続けてだけだからです。
ただ、現在は依存症と聞くと犯罪的な要素が未だ強く、
薬物を無くそうと戦っているわけです。
これを「The war on drugs=薬物戦争」と言いますね。
危険薬物を社会から除外しようと国が戦うわけです。
なぜ、このようなことが起きているか。
それは、犯罪かどうかを決めるときは神経科学的な要素ではなく、
社会のモラルに基づいているからです。
依存症を犯罪として取り扱っているということは、
依存的な行動に彼らの意思(自発的な行為)が関わっているとみなしている。
もし、依存症が病気なら刑罰を軽くしてもおかしくないわけですよ
(他の精神疾患同様に)。
つまり、現在は我々と社会がモラルを基に依存的な行動を病気ではなく、
犯罪行為と定義しているのです。
*この理論の利点と欠点*
この理論の強みは、依存症患者を違った視点で見ることができる点です。
なぜなら、彼らの行動は彼らの制御範囲内で
コントロールされていて、目的のある行動であるためです。
これは、依存症患者を「どうしようもない人」、
「自己コントロールができない人」といったステレオタイプ的な視点を
排除するのに手助けしてくれます。
また、この理論によって
ハームリダクションの発展につながるかもしれません。
なぜなら、薬物を自分の意思の元で使い続けたい人も
この世の中にいるわけで
薬物を使用によることによる被害を減らす治療も
この理論のおかげで受け入れられやすくなるかもしれませんね。
ハームリダクションについての記事は、こちらです
また、ゆくゆくは「依存症=犯罪」といった見方もなくなり
刑罰が軽くなり、より治療への方向性に向かう
手助けをする理論になるかもしれませんね。
ただ、批判もあります。
なぜなら、ほぼすべての科学的なエビデンス
(薬理学、生理学、神経学、心理学等)を無視しています。
また、実際には依存症という病気で苦しんでいる人がいることも事実です。
それを依存症は神話だと患者さんに伝えるのは、酷な話ですよね。
しかし、この理論のおかげで
依存症を新たな視点で見ることができます。
事実、ポルトガルではほぼすべての薬物の刑罰を軽くし
依存症を病気として取り扱い、治療の方向へ大きく舵を取りました。
今後、日本はどのような対応をとるのか楽しみですね。
記事を書いている現在では、大麻の使用を違法にする議論がされてますね。
*記事関連のおすすめの本*
「これからの「正義」の話をしよう ー いまを生き延びるための哲学」
依存症の人たちを裁くことは、正義なのでしょうか。
そんな考えにヒントをくれる本です。
ぜひ、読んでみてください。