CuriousHunter 依存リハ

好奇心のままに、依存症を探索

依存症の定義と診断

*依存症の定義を探る*

依存症の定義は、歴史とともにいろいろ変化してきました。
今回の記事では、診断の手引きや2022年の現在において
人気の定義を紹介します。

ただ、依存症の定義は常に議論の的に長年なってます。

 

 

*診断レベルでのの依存症*

まずは、診断レベルでのお話をして、紐解いていきます。

DSM-5(診断の手引き)では、Substance use disorder と記載されている。
日本語だと、物質使用障害ってところでしょうか。

基本的には、依存症はAmerican Psychiatric AssociationのDSM-5という、
診断によく使われているガイドラインでは、
そもそもAddiction(依存)という名前ではない。

そして、DSM-5では依存症を以下のように定義している。

ー 問題を引き起こすとわかっていても、繰り返しの物質の使用によりいろんな症状をもたらす障害の総称(APA, 2013)。

さらに、DSM-5の診断基準を見てみましょう。

 

DSM‐5の診断基準*

以下の2つ以上が、12か月以内にみられると依存症と診断されます。

  • 意図した量より多い。または長期間使用
  • 禁〇〇(お酒、たばこ等)を試みたが失敗
  • 薬物を得るため、使用するため、使用から回復するために多くの時間を使う
  • 渇望
  • 薬物使用により、仕事場・学校・家庭での役割を果たせない。
  • 薬物使用による問題が発生しても使用を続ける
  • 日常生活の放棄や縮小
  • 危険な状況においても使用を継続
  • 使用にる問題の認識がありつつも、使用を続ける
  • 耐性
  • 離脱症状     

依存症の特徴が診断に組み込まれています。

多量の薬物、禁酒・禁薬物の試み、薬物優先、耐性、渇望、離脱症状
よく、依存症で言われている症状ですね。

これらの基準をいくつ満たしているかによって、
重症度が決められます。

2-3個;軽度 
4-5個;中等度
6個以上;重度  (APA, 2013)

 

*総合的な依存症の定義*

私的にしっくりきている定義は、
American Society of Addiction Medicine(ASAM)の作成したものです。

理由としては、いろんな依存症という
複雑な病気を体系的にとらえられている点です。

 

ASAMの依存症の定義 (英語)

ー "Addiction(依存症) is
a primary, chronic disease of brain reward(慢性の脳の報酬系の病気)
motivation(モチベーション),
memory(記憶)
and related circuitry(関連のある神経回路).
Dysfunction(機能不全)in these circuits leads to 

characteristic biological(生物学),
psychological(生理学),
social(社会)
and spiritual manifestations(魂(宗教的な)).
This is
reflected in
an individual pathologically pursuing reward (病理的な渇望)
and/or relief by substance use (薬物使用による緩和)

and other behaviors(ほかの病理的な行動)." 

(American Society of Addiction Medicine (ASAM), 2018)

 

長い英語を日本語訳するのが大変なので、
大切な言葉のみ訳しました。

日本語の場所を拾うだけでも
依存症の大体のイメージがつかめると思います。

ー 問題があるところ
報酬系、モチベーション、記憶、神経回路)

ー 症状の分野
(生物学、生理学、社会、スピリチュアル)

ー 実際の症状
(渇望、報酬探索行動、他の病的行動)

ちょっとは、依存症の定義が細かく砕けてきましたね。

 

*依存症の複雑さ*

ただ、残念ながら
依存症はシンプルな病気ではないので、
ASAMでは、さらに続けてこんなことも言ってます。

 

ASAM(依存症について)

ー "Addiction(依存症) is characterized(特徴は)
by inability不能 to consistently abstain(継続的な自制),
impairment(障害) in behavioral control(行動のコントロール,
craving(渇望), 
diminished recognition of significant problems(問題の認識の低下)
with one’s behaviors (個人の問題)
and interpersonal relationships(対人間の問題),

and a dysfunctional emotional response(感情表現の不能.
Like other chronic diseases(慢性疾患),
addiction (依存症)often involves
cycles of relapse and remission(再発と寛解の連続).
Without treatment(治療なしに) or
engagement in recovery activities(治療への積極的参加なしに),
addiction(依存症) is progressive(進行する)
and can result in disability or premature death(最終的に障害・早死)
.  "

いやー
長い(笑)複雑(笑)

 

日本語の場所を列挙すると

  • 継続的な自制の不能
  • 行動のコントロール障害
  • 渇望
  • 問題の認識の低下
  • 個人の問題を引き起こす
  • 対人関係でも問題を引き起こす
  • 感情表現の不能
  • 慢性疾患
  • 再発と寛解の連続
  • 治療なしでは進行性
  • 最悪の場合、障害と早死

依存症は、簡単に表現できなそうですね。
いろんな要因が絡んでいるのがわかりますね。

軽くまとめると


ー 依存症は、慢性疾患の病気で再発と寛解を繰り返す、
自己コントロール不能が特徴。
そして、渇望、個人・対人関係での問題を引き起こし、感情表現も不能になる。
最終的に、治療なしではどんどん進行し
早死・障害を引き起こす。

翻訳少し頑張りました(笑)。

本当に依存症は複雑ですね。

生理学的、心理学、社会経済学を含めて
いろんな要因が絡んで依存症が発生
し、
様々な問題を引き起こしてますね。

 

*依存症は多重構造の病気*

これだけ複雑な依存症を
1つの領域のみの視点で表すことは
少し無理があるかなって感じですね。

また、依存症って言葉は
かなりあいまいな言葉かなとも思ってます。

私の感覚としてはおっきな依存症という枠組みの下に
いろんな視点から観た依存症が基礎にある
感じがあります。

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こんな感じ。

実際に、Chris(2020)は、
これらの要因をすべて合わせた
依存症とは何かを説明するための理論が必要
だといっていますね。
今度、その理論も説明しますね。

いくつか、すでに依存症の理論の記事が書いてあるので
ぜひ、読んでみてください。

 

curiousquest.hatenablog.com

 

curiousquest.hatenablog.com

*記事関連のおすすめの本*

「世界一やさしい依存症入門」
みなさん、ご存じかもしれませんが
松本先生の本です。
日本で依存症の先生と聞いて、すぐ名前が出てくる先生ですね。
本当に分かりやすく書いてあったので、ぜひ読んでみてください。

 

 


実は、私松本先生が所属する研究施設(国立精神・神経医療研究センター)に
訪問させていただきました。
また、アルバイトもして研究データのチェックをしました。
残念ながら、私が訪問した時は
お忙しい松本先生は不在だったので、お会いできませんでした。
いつか、お話しできると嬉しいですね。