依存症の回復とは?
依存症回復は単なる禁〇〇ではない?
依存症になったときに、どのタイミングを回復とみなすのか難しいですよね。
禁酒を数年続けたら、アルコール依存症から回復したとみなされるのでしょうか。
それとも、薬物使用を自分の意思でコントロールできるようになったら回復なのでしょうか。
私の知り合いの研究者は、こんなことも言います。
「依存症に回復はない(recovered)。回復中である (recovering)。」
治った(過去)とは言えず、常に治っている(進行中)途中だと主張していました。
なかなか難しい問題です。
そんな内容を少しずつ、紐解いていきます。
~依存症回復の定義~
いろんな依存症回復の定義が学術の中には潜在します。いくつか紹介します。
The Betty Ford Institute (BFI) Consensus Panel という非営利組織で薬物使用障害の被害を個人、家族、コミュニティレベルで減らそうと支援・研究しているところが
依存症回復の定義をしました(2007)。
ー "a voluntarily maintained lifestyle composed characterized by sobriety, personal health, and citizenship." ー
google translate で翻訳すると
ー 自発的に維持されたライフスタイルは、飲酒、個人の健康、市民権によって特徴付けられます。 ー
これだけ見ても意味がさっぱり分からないので、
それぞれの単語の定義の解説をして
最後に、依存症回復の定義をまとめますね。
まず、もっとこの定義を深堀していきます。
依存症回復における重要な項目が
BFIによって再び定義されています。
依存症回復における3重要項目
- Sobriety(ソーバー)
- 個人の健康
- 市民権
この3つの定義を以下で解説します。
また、
- Voluntrary (自発性)
- Maintained Lifestyle (維持されたライフスタイル)
この2つの要素もBFIによって定義されているので、解説します。
~Sobriety(ソーバー)~
日本ではソーバーと言われたりしてますね。
Sobrietyは酔ってない状態を表します。
「Sober Curious」という本にも使われている単語ですね
気になる人は、ぜひその本も読んでみてください。
ソーバーな状態についてBFIが再び定義してます。
Soberiety (酔ってない状態)
- 禁酒または、他の処方箋以外の薬の使用を停止すること
- 回復した生活には必須項目
- ソーバーになるためのもっとも信頼できる方法は、禁酒・禁薬物
- 禁酒・禁薬物早期 = 1-11か月
- 禁酒・禁薬物維持期 = 1-5年
- 禁酒・禁薬物安定期 = 5年以上
これだけみると、5年もお酒や薬物を絶たなければ
安定しないと考えると、長い道のりですね。
ただ、依存症回復にとって
薬物の使用を中止することが必須だが、不十分だとBFIは言ってます。
やはり、自分の制御内で薬物使用は難しいのかもしれませんね。
~個人の健康~
この場で健康は何を意味するのでしょうか。
BFIでは
「個人の健康 = 向上した生活の質(QOL)」
生活の質(QOL)は、時頼日本でも聞きますね。
私が、理学療法士になるための学校では
QOLは学校のキャッチフレーズだった気がします。
QOLはいろんな定義や質問表がありますが
BFIではWHO-QOLが採用されています。
あの、WHO(世界保健機関)の質問票ですね。
生活の質(QOL)
ー 単に病気がないということではなく、身体的にも精神的にも社会的にも満たされている状態 (WHO, 1947)
WHO-QOLの項目 (WHO-QOL Group, 1998)
最後のスピリチュアリティは、そこまで宗教深くない
日本人には、わかりにくい概念かもしれません。
それ以外の項目では、心身ともに健康で自立した生活がQOLに反映されるようですね。
ただ、WHOによる健康とは
単なる病気がないことを意味していません。(WHO, 1985)
今後、この質問票の詳しいことも
解説します。
依存症の回復とQOLは、関係があるので。
~市民権~
ぴったしの日本語が見つからずに困ってますが、
BFIの定義は以下です。
「市民権 = 周りの人を考慮・尊敬した暮らし」
自分のコミュニティのために
自発的な行動・努力を通して自分とコミュニティのすべての市民の生活を豊かにすることが市民権です。
これは、よく依存症回復で言われている
「社会貢献」に近い感覚ですね。
この市民権もWHO-QOLによって測定されます。
特にこの質問票の「社会機能」と「環境」の項目が、
コミュニティを意識した暮らしができているのかを測定します。
この、コミュニティーの中での生活と生活の質(QOL)は
同じ経験を持つグループでの活動(アルコールアノニマスやそれ以外のアノニマスグループ)
また、12ステップを通して市民権の獲得・維持できるとBFIは言ってます。
~自発性~
BFIの定義上の「自発性」の定義は、
ー 依存症回復に向けて、自発的に意欲をもって行動する。ー
私が、タイの依存症回復施設をお手伝いしていた時は
若いお客さんの中には、両親がお金を払って
治療を強制されたという人が、それなりにいました。
また、刑務所に入っている間も
強制的にソーバーにさせられます。
という感じで、割と禁酒や禁薬物は
無理やり強いられることが時期があります。
そして、回復の重要な鍵になるのか
この自発性だとBFIは言ってます。
自発的に依存症回復に向けて、行動することが大切ということですね。
自己決定の大切さは、前の記事で書いたので
まだ読んでない人は、読んでみてください。
~維持されたライフスタイル~
この「維持された」または「継続的な」ライフスタイルが依存症回復の特徴を表していますね。
要は、一時一時、その瞬間瞬間で「回復した」とは言わないよねってことです。
逆もしかりで、依存症回復は永久的で普遍的なものではない。
しっかりと維持をしないと、依存症の再発がいつでも起こりえるということです。
それが故に、多くの人が依存症である自分を
「回復した(過去=Recovered)」ではなく
「回復している(現在進行形=Recovering or In recovery)」
と表すことが多いと言われています。
~まとめ~
依存症回復定義(BFI)
ー 生活の質・社会貢献・ソーバーを起点とした、自発的に維持されたライフスタイルの獲得 ー
- 依存症回復は多面的なもの
- 依存症回復は、単なる薬物使用中止ではない
- ソーバーは依存症回復に必須だが十分
- 生活の質・社会貢献は、依存症回復の一部
今後、他の依存症回復の定義も解説します。
また、QOLについての記事も書きますね。
~記事関連おすすめ本~
「Positive Computing」
この本は、最新テクノロジーと心理学の統合を試みている本です。
ITテクノロジーが、人の心・感情までに入り込んできた社会で
どのように、テクノロジーを使い
人がより良く生きられるのかを考えている本です。
近年、どんな人が再び、違法薬物を再犯するのか
AIを使ってその人の犯罪の確率を出し、事前に犯罪を防ぐ話が出てますね。
という感じで、AIが我々の「こころ」にどうやって上手に介入するのかっていうのが
この本です。
ぜひ、読んでみてください。