依存症に身体的なリハビリは必要?
*依存症にみられる身体能力の低下*
依存症と診断されると大抵の治療手段は、
- 心理学的な治療
E.g. カウンセリング(認知行動療法 等)、
自助グループ(アルコホーリクス アノニマス 等) - 薬物療法的な視点の治療
E.g. 薬物治療(メタドン 等)、デトックス、ハームリダクション
(Drug addiction: getting help - NHS (www.nhs.uk))
という感じで、あんまり身体的な要素は考慮されていません。
果たして、本当に身体的なリハビリは必要ないのか?
そんな疑問に答えるような、記事を書いていきます。
*依存症患者の身体能力*
依存症には、いろんな依存症がありますが
薬物であると、お酒やたばこは身体に害を与えることが多々あるので
なんとなく、身体能力にも影響を及ぼしそうですよね。
実際に、Flemmen & Wang (2015)の報告では、
依存症患者さんは、以下の身体的能力の低下がみられました。
*依存症患者の身体能力低下項目*
- 最大酸素摂取量 (持久力のようなもの)
非依存症と比べて15%(男性)、25%(女性)の低値 - 歩行効率
(どのくらいの仕事量をどのくらいで少ないエネルギーで実行したか)
非依存症tと比べて13%の低値 - 最大筋力
非依存症と比べて30%(男性)、33%(女性)の低値
これらの結果を観ると、
依存症の患者さんは、運動の耐久性と筋力が低下していて、運動効率が下がっている感じですね。
まあ、簡単に言うと依存症の患者さんは疲れやすいって感じでしょうか。
こう聞くと、疲労感がまた薬物の使用を促しそうですよね。
また、お酒やたばこを頻繁にいろんな疾患と結びつけられています。
依存症が他の病気や疾患(心血管疾患、生活習慣病、早死)を引き起こす可能
がありそうですよね。
そのため、これらの病気と合併した依存症に対しても
身体的なリハビリが行われると考えられます。
*運動の心理学的メリット*
上記のように、運動は基本的に身体的の要素とセットで
お話しされることが多いですが、
運動は、ただ単純に身体的に良い効果を与えるだけではありませんよね。
運動は、心理学的な側面にもいろんな効果があります。
Ashdown-Franks et al (2020)では、
運動の精神疾患に対する効果を分析しました。
結果
ほかにも、
これらの障害や病気等も運動することで、
上記に挙げたような症状の改善が見られました。
依存症はいろいろな精神疾患と合併することが多いため、
運動をすることで、薬物を使用してしまった
根本的な精神疾患の回復の手助けできそうですね。
または、依存症が原因で他の精神疾患を患うこともあります。
そのような場合においても、運動は治療の一部として役割があると思います。
そして、運動の最大の利点は
運動によって症状を悪化させる、
もしくは運動の副作用がほとんど報告されていません。
やはり、薬物治療と聞くと
副作用が心配になったりしますよね。
しっかりと、怪我に気を付けて行えば
特に目立った悪影響なく、多くの利点が得られる運動は
治療の一助として大きな役割を果たすと思います。
また、お金をあまりかけずに始められるのも大きいですよね。
さらに、身体的にも回復することで社会への復帰の可能性も高くなりそうですね。
肉体的に十分満たされている状態は、幸福度に関連してきます。
幸福度(Well-being;ウェルビーイング)についての記事もあるので
ぜひ、読んでみてください。
*記事関連のおすすめの本*
「脳を鍛えるには運動しかない(Spark)」
日本語版
タイトル的には、運動がびりびりっと電気のように脳を刺激してくれて、
いろんな事してくれるってことですね。
私もこの本に多少感化され、理学療法士として
依存症に関われるかもと思わされました。
運動は、本当にいろんな効果があります。
そして、驚くこともないでしょうが、脳も鍛えられます。
運動は、いろんなホルモンを出してくれたり
体のいろんな機能を調整してくれます。
依存症は、慢性的な脳の病気と言われることがあります。
運動がその脳の病気を治す可能性を秘めています。
ぜひ、購入して読んでみて下さい。
英語版