CuriousHunter 依存リハ

好奇心のままに、依存症を探索

依存症とWell-being

Well-beingが高いだけで得をする?

前の記事で、生活の質(QOL)やWHOの提言しているWell-being(健康・幸福)が依存症の回復の必要な一部
という話をしました。

気になる人は、前の記事を読んでみてください。

 

curiousquest.hatenablog.com

 

今回は、ウェルビーイング(Well-being)について
少し話します。

ウェルビーイング(幸福・健康度)が高いだけで、
認知・行動レベルでの変化がおきることをお話していきます。

今後、依存症回復を目指す人で
禁酒・禁煙・禁ギャンブルだけでなく、
生活の質や幸福度も高めて回復を目指したい人が増えたらうれしいです。

この記事では、特に心理学的な側面の
幸福・健康・ウェルビーイングのお話です。

 

*心理学的なウェルビーインとは*

基本的にWHO(世界保健機関)さんが提言する
ウェルビーイングの定義は
ー 病気であるなし関係なく、すべての肉体的・精神的・社会的に満たされている状態 
(WHO, 1946)

それでは、心理学的ウェルビーインとは何かまず、簡単なキーフレーズを並べます。

*心理学的ウェルビーイン*

  • 人生が順調に進む状態
  • 幸せで、自分自身がしっかりと効率的に機能している状態
  • 常に幸せな状態である必要はない
  • 辛い時もある(おちこみ、失敗、悲しみ)
  • ただ、辛い経験も普通であり人生の一部
  • この、ネガティブな感情と上手に向き合うことが人生を長い目で見ると
    ウェルビーインを維持するには大切。
  • ただ、ネガティブな感情が長期間続いたり、耐えられないほど辛い場合
    生活がうまく送れなくなる。
    (Huppert, 2009)

この場合でも、病気が有無は問われてませんね。

さらに、もう少しそれぞれの単語をHuppertさんは砕いてくれてます。

*幸せな状態*

  • 幸せとは単なるポジティブな感情だけではない
  • 満足感・充実感も含む
  • 興味・没頭・自身・愛情などの感情も含む

*効率的機能している状態(心理学的な意味)*

  • 自分の可能性の開発
  • 自分の人生をある程度自分コントロールする
  • 目標を持つ(自分にとって大切なことに向けて、行動する)
  • ポジティブな関係性を経験する

これらを考慮すると
心理学的ウェルビーイングは、
ー 病気の有無に関係なく、自分の能力を自分の目的のために発揮し、辛いことも幸せなことも含めて充実した幸せな人生を送れている状態

って感じでしょうかね。

 

*幸せな感情と認知プロセスの関連*

「幸福度の高さ」といろんな指標の関連はよく言われています。

例えば、
幸福な人ほど、人生を上手に生き生産性が高く、社会的な交流も多く、収入も高い
(Dinner, 2000; Thoresen et al., 2001)。

ただ、これらはただの関係性であって
因果関係は示せません
つまり、収入が高く・生産性も高く・社会との交流も多いから幸せなのか
幸せだから、それらの指標が高いのか
結論が出せない状態です。

一方で、因果関係を証明しようとした研究もあります。
ポジティブな感情を引き起こすテクニックを使い、ポジティブな感情を実験的に作り出しすことによって、
ポジティブな感情がどんな影響を与えるのかいろんな人が調べてくれてます。

実際に使われる方法としては、

  • ポジティブな出来事を想像
  • ポジティブな音楽を聴く
  • ポジティブな顔の表情を作る 等

その結果

ポジティブな感情を引き起こされた人たちは

  • 広い視野を持つ(Fredrickson &Branigan, 2005)
  • アイディアがたくさんでる(Fredrickson &Branigan, 2005)
  • 創造力・クリエイティビティが高い
  • 考えが柔軟になる (Ashby et al., 1999; Mackie & Schwarz, 1992)

他にも

ポジティブな感情の経験は

  • 自分自身と他人の評価をよりポジティブに評価する
  • 温厚な対応をとる
  • 行動に自信が持てる
  • 楽観的になる
  • 人間関係も寛大な対応をとれる
    (Forgas, 2002, 2006; Sedikides, 1995)

こんな感じで、事実
ポジティブな感情はいろんな利点が報告されており
我々の知覚・人間関係にも良い影響を与えると言われてます(Forgas, 2001)。

 

*ポジティブな感情の好循環*

ポジティブな感情が、我々の知覚・認知を変えて
認知・行動の変化がさらにポジティブな感情を育てていきます。

高いウェルビーイングを持つことによっての認知・行動の変化として

  • 自発的なゴール設定(Kasser &Ryan, 1996)
  • 自分にとって価値のある目標に向けて行動(Sheldon &Kasser, 1998)
  • 好ましい結果のために行動 (例:断酒している時の状態が好きだから断酒する)が 望ましくない結果を避けるための行動(例:依存症の状態に戻りたくないから断酒する)よりも多くなる。(Elliot et al., 1997)
  • 設定したゴールが自分の価値感と一致する(Brunstein et al., 1998)

これらを、解釈すると
先ほどの心理学的ウェルビーイングの定義に沿った行動・認知の変化がみられてますよね。

  • 自分が大切にしている価値観
  • 人生の目標
  • 自発性(自分でコントロールする感覚)

ポジティブであると、認知・行動もポジティブな方向に向かっていくことが言えそうですね。

また、積極的な社会コミュニティの活動への参加も高い幸福度・人生の満足度と関連があります
(Helliwell &Putnam, 2005)

自己効力感にも関係してきそうですね
その記事もあるので、ぜひ読んでみてください。

 

curiousquest.hatenablog.com

 

よって、ポジティブな感情がポジティブな認知・行動を引き起こし
その結果、よりポジティブな感情を引き起こすことが想定されています(Fredrickson &Joiner, 2002)。

 

*依存症にどう役立つの?*

まず、ウェルビーイングは依存症回復に必要な1つの要素である。

なぜなのかは、上記の研究が物語ってそうですね。

例を紹介します

「自発性」

自発性は、依存症回復に大切です。
誰かに、禁酒・禁煙・禁ギャンブルと言われて
気分よく挑戦できませんよね。
それがストレスなれば、ストレスは依存症再発を促します。
そして、スリップ・リラップスすることが多いでしょう。

自発性の記事もあるので、読んでみてください。

 

curiousquest.hatenablog.com

 

「人生の目標や意味」

よく、「依存症回復 = 人生の生きなおし・やり直し」
そんなフレーズを聞きますよね。
ウェルビーイングを向上させる・人生の目標を見つけることが、依存症の有無に関わらずより良い人生を生きる鍵になりそうですね。

また、最終的に依存症の回復を手助けしてくれるかもしれませんね。

「目標設定の変化」

依存症回復では、禁酒・禁煙等の禁〇〇が回復には不十分であるが必須項目だと他の記事で言いました。

この禁〇〇は、望まない結果を避けるための行動目標ですよね。

ただ、ポジティブな人・ウェルビーイングが高い人は
行動目標がが、避ける行為ではなく
望ましい結果を得るための行動になる。

時頼、断酒や禁煙を長く続けている人で
もう断酒の日数を数えるのをやめる人が出てきます。

お酒を避けるというゴール達成が当たり前になったということで、日数のカウントをやめるようです。

そして、今度の目標が何かを避けるのではなく
何かを望まれる結果を得ようとする目標になっていく様子をいくつか見てきました。
例えば、

  • もっと健康になりたいから運動をしよう。
  • 同じ依存症の苦しみ経験している人の手助けをしよう
  • 自分の好きなことをまた始めてみよう。
  • 禁煙している自分が好きだから、禁煙しよう。

もしかしたら、このようなゴール設定の変化が
依存症回復に大切な健康・幸福といった側面を向上の兆候なのかもしれませんね。

「コミュニティの一員」

社会コミュニティでの生活も、依存症回復の必要な要素の1つになっています。

コミュニティの活動に参加
例えば、AA・GA・NA等
他の家族コミュニティ・職場のコミュニティ・自分の趣味のコミュニティ等
そして、その場で自分の役割を見つけたり、
社会貢献等が人生への満足度を高めくれると思います。

「寛容になる」

例えば、禁酒している時にお酒を飲んでしまいます。

その時に、自暴自棄になってしまう場合もあると思います。
もし、自分に寛容であれば
失敗を受け入れてもう一度、禁酒の一歩を生み出せるかもしれません。

という感じで、
ウェルビーイングが高いと依存症回復に関わる、認知や行動が変わる可能性があり
その結果、ウェルビーイングが向上し依存症回復の手助けをしてくれる可能性がありそうですね。

 

*まとめ*

心理学的ウェルビーイング

ウェルビーイングの向上のさせ方は、また違う記事で。

 

*記事関連おすすめの本*

「Flourish (ポジティブ心理学)」

人生をどうやって、最大限価値のあるものにするか
といった観点で物事が書かれています。

多くが、バイアス(認知のゆがみ)について議論されており、
実践的なバイアスを認識し変えていくエクササイズも紹介されています。

依存症では認知行動療法が、頻繁に治療法として選択されています。

依存症においても、認知のゆがみを理解し
より健康的な考え方を持つことが大切になります。

ぜひ、興味のある人は読んでみてください。