依存症の原因はドーパミン
*依存症の共通分母はドーパミン*
おそらく、この記事にたどり着く人はすでにいろんな情報を
得ていると思いますが、
何か新しい情報があったら、嬉しいです。
特に、この記事関連のおすすめの本は
ここ最近で一番のおすすめの本です。
この本です。
ドーパミンの知見がたくさん載ってます。
記事の最後に、日本語版も張っておきますね。
この記事では、薬物使用のモチベーションを
ドーパミンと脳の報酬系回路を使って説明します。
若干、専門的な内容も多くなりますが
キーワードのみ理解すると、
依存症とはなにか理解するのに役立つと思います。
また。依存症についての記事はたくさんあるので、
興味のある方は、今回の内容に関連した記事を張っておくので
ぜひ、読んでみてください。
*モチベーション*
我々の行動には、いろんなモチベーションがありますよね。
ごはん食べたり、寝たり、友達とあったり。
ただ、モチベーションは私たちの中では
なんとなく共通理解の認識がありますが
研究するとなると、定義や研究の仕方等があいまいになっていました。
哲学者のSchopenhauerさんは、
モチベーションを以下のように定義しました
(2005)。
ー モチベーションは、行動に意欲的であること ー
ここから、紐解けることは
行動の裏には、なにか報酬がつきもので
その報酬を予測しているがゆえに意欲的に
行動することを示していると思われます。
なので、モチベーションは時折
英語では「「Drive (意欲)/ Desire(願望) / wanting(不足)」とあらわされることがあります。
なので、目的を達成するために
一生懸命頑張れば頑張るほど、モチベーションが高いと判断されます。
進化論的な視点で行くと、
食べる・飲む・安全・性に対してモチベーションがあるのは重要です。
これらの行動は、基本的にもう一度行うように
プログラムされており、これらの行動をしなくなると
死の確立が高くなったり、
繁殖ができず種の存続が危うくなります。
ジャイアントパンダがいい例ですね。
ジャイアントパンダは、性欲が弱いと言われており
人工繁殖が難しいとされています。
もしかしたら、性に対するモチベーションの低さが
パンダが準絶滅危惧種に登録されている原因の1つかもしれませんね。
要するに、これらの生命維持に必要な行動は強化されることが重要になり、
これらの行動に対するモチベーションは高くなります。
*モチベーション=依存症*
生命維持にモチベーションが重要なのは、
理解できたと思います。
ただ、ある1つの行動強化は
長期的に見て、あまり利点がないものが「薬物依存症」です。
そして、このモチベーションに関わる
重要なものは、ドーパミンシステムです。
よって、モチベーションの理解は依存症の理解につながり
ドーパミンシステムの理解が必要不可欠です。
ただ、依存症の場合は
薬物を使用を始めるモチベーションは多岐にわたります。
例えば、友達からの誘惑・ストレス・遺伝要素。
挙げれば、きりがないです。
そんな中で、心理生理学が
この神経回路を謎を紐解くのに役に立ちました。
*報酬回路*
モチベーションと依存症には、共通のメカニズムがあります。
それが、脳の報酬回路です。
これから、いくつかの研究を紹介していきます。
基本的には、動物実験です。
人を使った実験で、参加者を依存症にさせることは
倫理上難しいので。
*脳内電気刺激*
この実験方法は、脳の中に電極を埋め込み
ある特定の行動をとった時に
特定の脳部位を刺激します。
例えば、ネズミを使った実験では
ネズミさんに電極を埋め込みます。
ネズミさんをAとBの2つのレバーがある箱に入れます。
もし、ネズミがAのレバーを押すと
脳の電極から、電気刺激が与えられます。
もし、Bのレバーを押した場合は
電気刺激が与えられません。
ここで、考えられる可能性は
- AとBのレバーを同等の量押す。
=Aのレバーを押すモチベーションはない - Aのレバーをたくさん押す。
= 電気刺激によりAのレバーを押す、モチベーションが高まっている
そして、Aのレバーだけを一生懸命押した
ネズミさんたちに埋め込められている電極の電気刺激を仲介している脳部位では
ドーパミン(快楽物質)レベルが高いことがわかりました(Corbett &Wise, 1980)。
それらの脳部位は
大脳基底核(Phillips et al., 1975)、
線条体(Phillips et al., 1976)と
前頭皮質(Mora et al., 1976)です。
つまり、ドーパミンに関わる脳部位が
我々のモチベーションをつかさどっている可能性を示しました。
また、これらの脳部位に電気刺激を受けているネズミさんたちに
コカインや覚せい剤を投与すると
電気刺激への反応が弱くなり、Aのレバーを押さなくなります。
これは、これらの薬物が
ドーパミンを出すことによって、
電気刺激によるドーパミン放出の代わりをしていることを示しています
(Leith &Barrett, 1981)。
ただ、脳の報酬系は大脳基底核のみが活動しているわけではなく
大脳辺縁系(中脳腹側被蓋野から大脳基底核を含めた)が重要だと考えられています(Fibiger et al., 1987)。
*薬物自己投与*
この実験は、薬物乱用度を示すのに
役立ちました(O'Connor et al., 2011)。
基本的には、オペラント条件付け(報酬や罰を与えるて学習)を利用しています。
例えば、ネズミさんがレバーを押すと
薬物が血管に埋め込まれているチューブを通して、投与されます(Sanchis-Segura & Spangeal, 2006)。
多くの実験で、いろんな薬物が
薬物を与えることで、レバーを繰り返し押すように
学習させることに成功しています。
ただ、薬物の投与量が増えれば増えるほど
レバーをたくさん押すわけではありませんでした。
例えば、コカインでは投与量が多いと
レバーを押す回数が減りました(Broadbear et al., 2004)。
依存症は、そうは簡単にいかないことを示唆してますね。
要は、投与量で薬物の依存性が変わるかもしれないということですね。
また、この実験方法でもドーパミンの重要性がみられました。
Roberts と Ranaldi さんたち(1995)では
ネズミさんたちに、ドーパミンの邪魔をする薬を投与しました。
その結果、ネズミさんたちはより
薬物を摂取しようと頑張ってレバーを押しました。
ここから、考えられることは
脳の中でドーパミンが少なくなると
より、ドーパミンを出せる物質を探し回る。
この行動は、離脱症状と関連がありそうですよね。
離脱症状と依存症の再発についての記事もあるので
ぜひ、気になる人は読んでみてください。
また、脳の報酬系回路をつかさどる
大脳基底核と中脳腹側被蓋野を壊すと
ネズミさんたちは、レバーを押して薬物を
摂取しなくなりました(Roberts &Kooob, 1982)。
なので、報酬系回路とドーパミンが
依存症=モチベーションに重要そうですよね。
*ほぼすべての薬物がドーパミンに作用*
上記で挙げたような薬物のみならず、
ほとんどの薬物がドーパミンの放出を強化します。
これらの薬物は、直接的・間接的に
ドーパミン系の活動上昇を促すことが
発見されています(Di Chiara & Imperato, 1988)。
それだけでなく、ギャンブルも同様です。
ギャンブルとドーパミンについての記事があるので
気になる方は、読んでみてください。
やっと、ここでタイトル回収です。
ほぼすべての薬物でドーパミンの報酬回路が関わっています。
そして、さらに食べ物もドーパミンレベルの活性をさせます
(Bassareo &Di Chiara, 1997, 1999)。
性もドーパミンが絡みます。
ネズミさんの実験では、オスねずみを発情期のメスねずみと接触させると
オスねずみさんは、ドーパミンレベルが向上します(Damsma et al., 1992)
性に関しては、他にも面白い実験があり
クーリッジ効果とドーパミンにも関係がありました。
クーリッジ効果とは、哺乳類のオスが新しい発情期のメスに出会うと
性的欲求を回復させる現象です。
さらに、オスは馴染みのパートナーとの性交渉が終わった後にも
このクーリッジ効果がみられます。
そして、このクーリッジ効果がみられている時に
オスねずみはドーパミンの上昇がみられ、性交渉してしまいます(Fiorino et al., 1997)。
オスは、おバカなんですよね。
ただ、
実際は、メスにも同じような反応が見られます(Pfaus et al., 1995)
さらに、人間にも似たような反応がみられ
特に性的な刺激に対して
同じようにドーパミンの上昇がみられます(Sylva et al., 2013)
ということで、いかなるモチベーションの根本は
ドーパミンと報酬系の回路です。
*まとめ*
残念ながら、薬物の中に若干の例外があります。
LSDです。
また、違う記事でLSDは取り扱いますね。
さらに、それぞれの薬物の実際のメカニズムについても
今後書いていきます。
また、脳に電極を埋め込むという点で共通点のある
治療の記事があるので
興味ある方は、読んでみてください。
*記事関連のおすすめの本*
「もっと!愛と想像、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学(The molecule of more)」
日本語訳長いな(笑)
まあ、翻訳してもらっているのでありがたい限りですが。
依存症について調べたことがある人なら
多くの人が知っている「ドーパミン」
私も時折言いますが、「ドーパミン=快楽物質」。
実際は、ドーパミンはそれ以上のことをしてます。
依存症を学んでいる身としては、
非常に興味深い内容でした。
おそらく、かなりサクッと読めます。
もしかしたら、ドーパミンの仕組みを利用した
本かもしれませんね。(笑)
ぜひ、読んでみてください。