「勝敗の不確かさ」がギャンブル依存症の原因
基本的に依存症は、薬物の長期使用により脳回路に変化が起き、
いろんな症状がでる「依存症=病気」
として認識されています(Volkow et al., 2016)。
これは、薬を摂取することによる生理学的な変化ですよね。
ただ、行動嗜癖(行動に対する依存:ギャンブルやゲーム)は、
薬のような毒性のある物質がないので、
薬のような生理学的な反応が
脳をハイジャックされているわけではありません。
ギャンブル依存症においては、
心理学的な要素が、我々の脳に影響を与えてきます。
よってこの記事では、
どのようにしてギャンブルが
薬物のような毒性のある物質なしで
心理学的な要素を操り、
我々を引き寄せるのか説明していきます。
また、
物質依存と行動嗜癖の共通点・相違点が気になる人は、
以下の記事にも読んでみてください。
*学習理論*
依存症は、学習理論で説明されることが多々あります。
学習理論で有名なのは、古典的条件付けとオペラント条付けの2つです。
*古典的条件付け*
古典的条件付けで有名な例は、パブロフの犬ですね。
通常は、
犬(パプロフ)がごはんをもらいます。
⇒ よだれが出ます。
だた、パプロフがごはんの時に
ベル(無条件刺激)を一緒にならしておくと
のちのち、ご飯を与えずともベルの音だけでよだれが出てしまう。
要は、ベルの音(無条件刺激=何も意味を持たない刺激)が
ごはんの合図だと学習し
ベルが条件刺激(餌と同じ刺激)になり
犬を刺激し、体はごはんの準備(よだれ)をしてしまう状態です。
*オペラント条件付け*
有名なのはスキナーさんのネズミの箱が有名ですね。
ネズミさんが箱の中に入れられて、
その箱の中にはレバーがあります。
レバーを押すと、ご飯がもらえます。
そうすると、ごはんが欲しくてレバーを押すことを学習します。
レバーを押す
⇒ 餌を獲得
⇒ 再びレバーを押す
なんとなく、想像できると思いますが、
学習理論で依存症を説明する理論はたくさんあります。
気持ちよくなれたら、
その行動をたくさんしても
何の疑いの余地がないですからね。
これらの学習理論は、
ギャンブルの仕組みにちらほら見られます。
*スロットマシーンと学習理論*
ギャンブルと言っても、いろんな遊びがありますよね。
例えば、ポーカー・パチンコ・スロット等がありますよね。
このうちの、パチンコ・スロットのような
電気制御されているゲームマシンは、
典型的なオペラント条件付けの仕組みがみられます。
このゲームの中には学習を促す、
大きく3つのイベントがあります。
- 弁別刺激
(=どんな報酬があるのか情報を与える、(もし正しい行動をしたら)) - オペラント反応の生成
(報酬を得るためにボタン・レバー等を押す・回す) - 報酬結果
(Zack et al., 2020)
例えば、スロットマシーンであれば
- 弁別刺激
(掛け金を設定し当たりがでると
どれ程のお金がもらえるか情報がある) - オペラント反応の生成
(スロットを回して、
スロットが回っている間の数秒間の期待。) - 結果報告
(勝ったのか負けたのか知る(報酬))
という感じで、当然のように
賭けに勝てば学習が強化されていきます。
さらに、
古典的条件付けもギャンブル依存症に
重要な役割があります。
(Bickel and Kelly, 2019)。
つまり、報酬をもらうことによって
もともとなんともない刺激(無条件刺激)が
ギャンブルをする反応と関連づけられることで
何も意味を持たなかった刺激が
ギャンブル行動を引き起こす刺激となり、
ギャンブルの反応を引き起こしてしまいます。
古典的条件づけされてしまう刺激の例
- 店内入店
(Schüll, 2014) - ゲームの視覚・聴覚エフェクト
(Cherkasova et al., 2018)
そして、注意バイアスにも変化が起き
ギャンブル関連の刺激への注意が
向きやすくなります
(Hønsi et al., 2013)。
このようにして、古典的条件付けは
必要な刺激に対して素早く、
求められたタイミングで反応することを
簡単にしてくれます。
要は、ギャンブル関連の刺激に気づきやすく
それらの刺激が発生すると、
すぐにギャンブルしようと反応する。
これは、依存症の特徴の一部を表しています。
そして、この学習には
ドーパミン(ホルモン)の活動が
密接に関わってきます
(Parkinson et al., 2002)
*ドーパミンの上昇の鍵は「不確か性」*
基本的な薬物は、
薬でドーパミンの放出を引き起し学習を促進させる
そして、薬物といろんな薬物関連刺激を関連づけします。
ただ、非薬物の動機付けの学習効果は少し異なります。
SchultzさんとSchultzさんたちが実験で
頑張って説明してくれました。
Schultzさんの実験では、
非薬物としてフルーツジュースを使いました。
フルーツジュースもドーパミンレベルを上げて、
古典的条件付けをすることができます。
これは、学習の結果
フルーツジュースなしで
もともと何の関係もない刺激(無条件刺激)が
フルーツジュースと関連づけられることによって、
無条件刺激だった刺激が、
フルーツジュースを飲むときの反応を
引き起こすことができたわけです。
ただ、この実験では学習に成功した後に
フルーツジュースに関連付けられた刺激を
提示することによって、
フルーツジュース(報酬)がもらえることを
完璧に予想できるような実験にしました。
そうすると、
ドーパミンの急激な上昇が抑えられました。
つまり、薬物依存においては
どんな報酬ががもらえるか予想できている場合でも
薬物を過剰に使用しても
薬物は直接的・間接的にドーパミンレベルを向上させることができる。
= 常に予想以上以下の報酬
= 学習の強化
しかし、非薬物(行動も含む)は
どんな報酬がもらえるか完璧に予測できるときは
ドーパミンレベルの上昇が抑えられてしまう。
= 予想を超えない報酬 = 学習の妨げ
ただ、ギャンブルでは「いつ・どれほどの賞金」で
さらに、「当たるのかどうかすらもわからない」ため
ギャンブルは常に予想外である。
よって、ギャンブルは薬物同様に
学習が常に強化されてしまいます。
*まとめ*
- 依存症は学習理論で一部を理解することができる。
- 学習理論には、オペラント条件付けと古典的条件付けがある
- 学習には、ドーパミンが関わる
- 薬物は、直接的・間接的にドーパミンを操作する。
- 非薬物依存は、完璧に報酬が予想されている場合
ドーパミンレベルの上昇が抑えられる - ギャンブルは、報酬の不確実性を作り出すことで学習を強化
学習理論が考慮されている、依存症の理論は多くあります。
そのうちの1つについての記事もあるので、ぜひ読んでみてください。
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