CuriousHunter 依存リハ

好奇心のままに、依存症を探索

ギャンブル依存は3タイプに分かれる。【依存症理論】タイプ別に治療をする?

今まで、いろんな依存症の理論を紹介してきました。

 

ただ、それらの理論が行動嗜癖(ギャンブル・ゲーム)にまで
当てはまるのかと言うと、
いくつかは当てはまりません。

 

ということで、この記事では
ギャンブル依存症の有名のモデルの1つを紹介します。

 

 

行動嗜癖をカバーできる依存症モデルについての
記事もあるのでぜひ読んでみてください。

 

curiousquest.hatenablog.com

 

 

 

 

*3つのギャンブル依存への道*

今回紹介するのは、
「The Three Pathways Model of Pathological Gambling」
(Blaszczynski & Nower, 2002)

 

単純に日本語訳すると
病的賭博の3つの道モデル」って感じですか?

 

このモデルは、病的賭博を包括的に捉え
結構影響を与えたモデルで
多様な影響を考慮されています。

 

また、このモデルでは、
ギャンブル依存に影響を与える因子を
(生理学的・心理学的・環境)
統合し、ギャンブル依存症フレームワークを作りました。

 

 

そして、このモデルの特徴として
ギャンブラーにも異なるタイプ(道)がいることを
認識しており
行動上は、似ているが
どのような要因がギャンブル依存症に導いたのかについては
ギャンブラーのタイプによって異なると主張しています。


そのため、
ギャンブラーのタイプによって
異なった治療を提供した方が良い?
そんな雰囲気を醸し出しています。

 

 

*ギャンブル依存への道の共通点*

ギャンブル依存への道が3つ提案されています。

どの道も共通のプロセス・症状を共有しますが
それぞれの道はしっかりと区別が可能です。

 

*3つの道の違い*

  1. 不適合な学習・認知の歪み
    (心理学的に病的さはない)
  2. 感情的・生理学的脆弱性+1の道
    気分障害・不安症・鬱)
  3. 衝動的性格+1の道+2の道
    反社会的行動・物質使用障害を伴う)

 

上記のように、それぞれの道の区別がされています。
しかし、どの道の始まりは共通してます

病的賭博への本質的な始まりは、
「利用可能性・手の届きやすさ・ギャンブルへの容認度」です。

これらの要因は、公共政策・政府の規制の影響を受けます。

 

 

また、もう1つの共通点は
どの道も学習と認知が絡んできます
つまり、古典的学習・オペラント学習と
関連学習とギャンブル関連のキュー(引き金)等が
どの道にでも、重要な要素になってます。

そのため、1の道が
他の2・3の道にの共通項となってます。

 

認知の場合は、
ギャンブルの勝率に対しての認知の欠陥の結果
想定していたよりも多く負けてしまう
と言ったことが例として挙がります。

 

大方、概要がつかめてきたと思うので
ギャンブル依存への道を1つずつ解説していきます。

 

*行動的に条件づけられた病的ギャンブラー*

ギャンブル依存への1つ目の道。

 

この道を通っているギャンブラーは、
一般的には心理学的な問題がありません

 

そのため、この道のギャンブラーは
単純に、ギャンブルという仕組み自身の性質が原因で
問題を抱え込みます

 

そのため、このギャンブラーは基本手に
ギャンブルの仕組みである
条件付け学習(古典的条件付け・オペラント条件付け)と
繰り返しの行動の結果による認知の歪みの結果
次第に、自分のギャンブル行動への
コントロールを失っていきます。

 

それらを考慮すると、
この道を歩いているギャンブラーは、
一般的に
最も、回復への見通しが明るいグループです。

これが理由で、外部からの介入なしに
また、徹底した治療の必要性なしに
回復する可能性が高いです。

 

 

*感情的に脆弱な病的ギャンブラー*

2つの目の、ギャンブル依存症への道です。

 

特徴としては、
感情的・生物学的に脆弱なグループです。
(+1つ目の道)

 

 

このグループは、
子供の頃にネガティブなイベントをより経験していることが多く
(虐待・親の離婚・親の依存症・親族を失う等)

生理学的(遺伝・受容体・神経伝達物質・報酬システム)と
心理学的(ネガティブな感情等)ファクターの結果、
不適切なコーピングスキルを使用し
感情的に不安定さが特徴です。

 

 

そのため、この道を歩くギャンブラーは
不快な感情から逃れるために、
または、うつ・不安といった感情を調節するために
ギャンブルという手段を使います。

また、動揺に
低い・高い覚醒度を調整するためにも
ギャンブルという手段を利用します。

 

 

 

*反社会・衝動的病的ギャンブラー*

3つ目のギャンブル依存への道です。
(+1つ目の道+2つ目の道)

 

最後の道は、学習・認知の歪み、
生物学的・心理学的脆弱性に加え
衝動的・反社会的行動と注意障害が加わります

 

このグループは、
より簡単に退屈を感じ、
感情的に不安定で、
治療が難しく
ギャンブル関連の問題の重度も高いです。

 

このグループの衝動性は
神経伝達物質システムの調整不具合と
神経的構造の機能不全の結果
発生すると考えられています。

 

 

*本当に3タイプのギャンブラーがいるのか?*

上記のように説明はしたものの
本当に、3タイプにギャンブラーが分かれるのか。

 

 

Valleur et al. (2016)が、調査してくれました。

 

結果、DSMという診断基準を満たしたギャンブラーに
この3つのタイプが特定でき
3つの道の存在が確認されたと
報告されています。

 

さらに、興味深いのが
この調査では
それぞれのギャンブラータイプによって
選択するギャンブルの種類が違うことも
報告されています。

 

  • 衝動的ギャンブラー
    ー 半技術的ギャンブル
    (競馬・スポーツギャンブル)
  • 感情的脆弱ギャンブラー
    ー 運のゲーム
    (スロット・スクラッチ
  • 不適合学習ギャンブラー
    ー 運と半技術的ギャンブル(同程度)

 

このギャンブルの趣味嗜好の違いは、
もしかしたら、それぞれのグループの
元となっているギャンブル依存の問題点を反映していると
考えられています。

 

  • 衝動的ギャンブラー
    ⇒神経回路の変化
    ⇒退屈
    ⇒刺激探求・目新しさ
    ⇒テクニックのいるギャンブル
  • 感情的脆弱ギャンブラー
    ⇒不安・鬱
    ⇒不快
    ⇒逃避
    運ゲー

 

と言う感じですかね。

 

ただ、根本の病的異変は
3つに分かれるほど単純ではなく
診断基準によって異なる可能性もあり、
完璧にギャンブラーをきっぱりと分けることは
なかなか難しいかもしれませんね。

ただ、ギャンブル依存の理解・治療へのヒントを
与えてくれそうですね。

 

 

*まとめ*

  • ギャンブル依存症への道は3つある。
  • ギャンブルのしやすさをスタート地点とし
    学習と認知の歪みが
    ギャンブル依存の共通項
  • ギャンブルの仕組みにのみ
    ハマったグループは
    回復の可能性が高い
  • 心理学的・生物学的に弱いグループは、
    心理的に不安定で
    ギャンブルを対処法として利用する
  • 衝動的ギャンブラーは、
    神経的変化が発生し、
    治療が困難になる。

 

*記事関連のおすすめの本*

残念ながら、ここまで包括的で
細かい理論に関連する本を私は読んだことがありません。
申し訳ないです。


代わりに、ギャンブル依存の関連記事を
まとめて紹介しておきますね。

 

curiousquest.hatenablog.com

curiousquest.hatenablog.com

curiousquest.hatenablog.com