CuriousHunter 依存リハ

好奇心のままに、依存症を探索

アルコールは体・脳で炎症を引き起こす。【ただ漏れの胃・腸】アルコール依存症

アルコール使用障害は、
アルコールを使用する個人に対して
多様なメカニズムでダメージを与えています。

 

そして、近年注目されているのは
神経生理・免疫の2つの視点での
アルコール使用障害です。

 

この2つの役割が
アルコール使用障害の発症・進行に役割があると
注目されています。

 

 

なぜ、上記の2つが重要なのか
炎症というキーワードで
解説していきます。

 

 

 

 

精神疾患で異なる免疫反応*

免疫は、体の機能を正常に保つための機能で
病原菌等の異常を認識して排除する働きがあります。

その過程で、炎症反応がみられます。
体に異物・細菌・ダメージが起きて
体が反応するわけです。

 

この反応が過剰になると
正常な組織までダメージを与えてしまいます。

 

そして、
この炎症反応が、健常者と比べると
異なる精神疾患で違う炎症反応がみられる
報告されています。

 

例えば、統合失調症では
炎症マーカーが発症早期では高く、
抗精神病薬の治療を始めると
炎症マーカーが正常に戻ります。
(Miller et al., 2011)

 

他にも、双極性障害では
躁・鬱・平常状態のそれぞれのフェーズで
異なる炎症マーカーが発見されたと
報告されています。
(Modabbernia et al., 2013)

 

そのため精神疾患と免疫システムの変化に
何か関連があるのでは?
と考えられています。

 

 

*アルコールと免疫*

アルコールに関連した免疫の変化は
割と複雑でいろんな要因が関わってきますが、
それなりにわかっていることがあります。

 

 

アルコールは、直接的に脳の免疫細胞(ミクログリア(マクロファージ))を刺激
さらに、体全体の免疫システム活も同様に活性化させてしまいます。
(Leclercq et al., 2017)

 

特に、なぜ後者のような免疫活性がみられるかと言うと
アルコールは、消化系(胃・腸)の透過性(腸管透過性)を向上させ
腸内細菌・毒素(エンドトキシン(Endotoxin; Lipopolysaccharide (LPS))が体全体に循環することを許してしまいます

 

腸は、食べた食べ物に付着する微生物が
体内に入り込むのを防ぐバリア機能がありますが、
アルコールによって、
このバリア機能が弱まり
腸から漏れた異物が体全体に駆け巡り
様々な免疫反応を引き起こしてしまいます

 

このような状態を胃・腸漏れ(Leaky Stomach)と呼ばれています。

 

要は、毒素・微生物が消化系から漏れて
体全体にいきわたってしまうわけです。
その手助けをアルコールがしています。

 

 

*アルコールの摂取期間で変わる?*

まあ、上記のように言ったものの
実際は、アルコールをどの程度摂取したかによって
免疫システムへの影響は変わると言われています。
(Barr et al., 2016)

 

 

アルコール摂取の免疫システムへの影響

Barr et al., 2016 を基に作成

色々難しい単語がありますが、
重度のアルコール摂取での、
急性・慢性効果を比較してみましょう。

 

IL-6, IL-12, TNF-αは、
炎症性サイトカインと言われ、
炎症反応の促進をします。

一方で、IL-10, IL-12という、
抗炎症性サイトカインと言われ
過剰な免疫反応を抑制します。

 

これらのサイトカインに着目すると
アルコールの急性効果では、
上記の3つの炎症性サイトカインが減少していますが、
アルコールの慢性効果は、
炎症性サイトカインのTNF-αが

著しく上昇しています。

 

と言う感じで、
少し、複雑になってきますが
アルコール依存症であれば
慢性の重度の飲酒量であることが
他の人よりも多いと思われるので
炎症が体中で起こっている
可能性はありそうですよね。

 

 

*炎症が脳で起こる*

アルコールの消化系と免疫系への影響が
なんとなく理解できたと思います。

アルコールによって、
炎症が引き起こされ
腸では異物漏れ、
体に回り炎症を引き起こす

 

 

それだけでなく、
腸と脳がつながっているということを
どこかで聞いたことがある人がいると思いますが、
腸脳相関?(Gut-Brain Axis)ですね。

 

 

この関係により、
脳でも炎症性サイトカインが合成されてします。
そして、それらの炎症が
我々の気分・認知機能・飲酒行動に
影響を与えているとも考えられています。

 

 

アルコールによって、
腸から異物が体に流れ込み
体の末端やいろんな臓器で炎症が起こると
体の全体でも炎症性サイトカインが増加します。

そして、それらのサイトカインは血流にのって
多様な臓器へと炎症反応をひこ起こします。

そして、体の炎症性サイトカインは
想像通り、
脳にもこの炎症性サイトカインが
達してしまいます
(Leclercq et al., 2017)


なので、アルコール摂取後に
腸での問題から始まり
体の炎症へとつながり
脳にまで炎症が引き起こされます。

 

 

さらに、迷走神経という内臓の信号を受け取り
脳に伝える神経があり
それらも炎症を受け取る受容体が存在し
体の炎症を脳に伝えてるため
これらの情報も同時に、
脳の機能と我々の行動に
影響を与えていると考えられています。

 

その結果、
気分・認知機能・アルコール摂取と言った
アルコール依存症を脳の病気とするならば
依存症において重要な脳の機能に
再び影響を与え、飲酒行動を再び引き起こしている
可能性がありそうですね。

 

 

まあ、実際はもっと複雑で
いろんな要因が絡みます。

例えば、
どのくらいの時間お酒を飲んでいないか
お酒の量・お酒の使用期間等ですね。

 

より詳しい、アルコールの免疫への影響は
また免疫についてのトピックで触れます。


*まとめ*

  • 炎症反応が精神疾患で見られる
  • アルコールは、炎症反応を引き起こす
  • アルコールは、腸の透過性をあげ
    体で炎症を引き起こす異物の通過を許す
  • 体の炎症は、脳にまで伝わり
    脳でも炎症が起こり
    気分・認知機能・依存行動に
    影響を与える

 

他にも腸・アルコール摂取・栄養についての
記事があるので、ぜひチェックしてみてください。

curiousquest.hatenablog.com

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