3つのよいこと【ポジティブ心理学と依存症】
*依存症回復におけるポジティブ心理学の可能性*
依存症の回復において、
大きな転換が心理学の業界ともに
起こりました。
それが、ポジティブ心理学 です。
この記事では、ポジティブ心理学とはなにか。
そして、ポジティブ心理学を利用した依存症回復について
解説していきます。
*ポジティブ心理学*
ポジティブ心理学とは、
典型的な、心理学における精神疾患を持つ人と持たない人の違いに
焦点を当てたものではなく、
普通の人と特に幸せな人たちの違いに注目したものです。
すなわち、精神的健康とは
ただ単純に病気が有無の話ではなく、
精神的健康に新たなにプラス(幸せグループ)の焦点を含めて議論されるものである。
よって、通常の心理学とは異なります。
心理学は、苦しみや病理的な側面の改善や減少を
目的としたものです。
ネガティブなものをどのように、平均・通常状態に持っていくかの議論が
心理学になっています。
この視点は、依存症の回復にとっても
有益になりそうな雰囲気がありますね。
依存症の理論は基本的に、悲観的なものが多いので。
ただ、ポジティブ心理学の
批判ももちろんありますが
今回は、割愛します。
*ポジティブ心理学の介入*
ポジティブ心理学を起点に生まれたものが
たくさんあります。
*ポジティブ心理学例*
- 個人の強み
- ウェルビーイング
- Optimal functioning (最適機能?)
(Duckworth et al., 2005) - flourishing (持続的幸福)
(Keyes & Haidt, 2003)
ウェルビーイングは、依存症の回復において
必要な要素の1つですね。
ぜひ、ウェルビーイングの記事も読んでみてください。
ポジティブ心理学の介入の
目的もいくつかあります。
*ポジティブ心理学の介入目的*
- ポジティブな感情の増加
- ポジティブな行動の増加
- ポジティブな認知の増加
ここから、わかることは
ポジティブ心理学は、
病理的な状態の改善・ネガティブな感情・不健康な行動パターンを
減らしたり、改善させたり、修正するようなものではないことです。
(Sin & Lyubomirsky, 2009)
この傾向は、通常の心理学とは大きく異なりますね。
また、
このポジティブ心理学の介入の利点がいくつかあります。
*ポジティブ心理学の介入の利点*
- 自分自身で行える
- 比較的短時間
- スティグマが少ない
(Layous et al., 2011)
心理学的な介入は、カウンセリング等を含み
なにか、悪いものを直接治す意味合いが強く
スティグマが強いです。
また、カウンセラーが必要であり
時間も比較的長いです。
*依存症におけるポジティブ心理学の介入法*
依存症の回復を支える介入方法として、
ポジティブ心理学の介入の中には、
2つの有力な候補があります。
- Gratitude Intervention (Three Good Things)
- Optimism Intervention (Best Future Self)
これら2つを紹介してこの記事は締めくくります。
*Three Good Things in Life*
少し英語ができる人は、容易になにをするか検討がつくと思います。
日本語にすると、「人生で3つの良い事」です。
実際に、行う介入方法はいたって単純です。
介入方法
- 1日1日、それぞれの日でうまくいったことを書きだす。
- そして、それぞれがなぜうまくいった理由も書きだす。
- これ毎晩、1週間行います。
(Seligman et al., 2005)
*私のThree Good Things*
- 集中して読書・ブログの下書きが行えた
(理由: 公園に行き涼しい場所で自然に囲まれた場所に移動した) - 快適な寝起き
(理由: 前夜に携帯を見ずにラジオだけ使用した) - 英語のライティングが上達した
(理由: 事前に計画を立て毎日意識的に取り組んだ)
*Best Future Self*
この介入方法も簡単な英語ですが
「一番良い自分の将来」って感じですか?
実際になにをするのか。
介入方法
- 自分の将来について考える
できる限りすべてがうまくいったことを想像。 - 一生懸命頑張って、自分の将来の目標を無事に達成できたと
想像。 - これら自分の夢の中での気づきとして考える
- 最終ステップは、何を想像したのか具体的に書き出す。
*私のBest Future self *
自分の将来は、100歳まで好奇心を持って健康に勉強・挑戦し続ける。
すべてがうまくいったと想定。
語学、学業、毎日新しいことをし続けることで、
100歳まで生き続けた。
その前には、イギリスで自分のしたい仕事を見つけ
技術と経験を積む。
他の国で再び働き、新しい経験を常に得る。
こんな感じでしょうか。
私の場合は、何十年も先の未来を設定していますが、
1年先でも、何か月先でもいいです。
自分の思い描く最高の状態を想像し、
どのような努力をしたのか想像し、
目標を達成した状況を想定します。
そして、それらを詳細に書き残す。
なんとなく、モチベーションが上がりそうな
雰囲気ありますね。
*ポジティブ心理学の効果*
実際に、この2つの介入の効果はあるのか。
残念ながら、まだまだ研究が少なく
分からないこともありますが、
いくつかの研究を紹介します。
アルコール依存症の23人の通院外来を対象に
Three Good Thigns (TGT)をするグループと
介入してると見せかけて何もしていない
プラシーボグループに分けました。
これらの介入は、Webを使って行いました。
介入期間は、14日間。
そして、介入前・介入後8日、介入後14日時点の結果を測定しました。
評価項目
- 実現性
- 適正さ
- 効果判定
結果(Krentzman et al., 2015)
*TGTの実現性*
- 91%の人が14日継続してTGTを行えた。
- 平均で12.8日間のTGTを行えた。
- 参加者の中には3つも良いことが考えられない人がいた(5/23人)
- 3つ良い事を考えられない人は、教育レベルが他の人より低い。
- 続けることで、良い事を3つ考えるのが簡単になった。
- TGTは、疲れた時や、病気の時は可能ではあるが大変。
- Webを使った介入は、便利。
*TGTの適正さ*
- 満足感がある
- 幸福感がある
- 役に立つ。
- 楽しいが、時々雑用に感じる
- しっかりとした構成で、Webによって課題を思い出せる。
- Webを使って書き込むことは、苦ではない
*TGTの効果*
- 感謝の気持ちが高まった(定性的評価)
- 感情に良い影響を与えた(定性的評価)
(例; 前向き、誇り、幸せ、より良い、明るい、モチベーションアップ、希望) - ネガティブな感情が減った(定量的評価)
- 落ち着き・安心等のポジティブな感情が増加(定量的評価)
- ネガティブなことばかりに目を向けている自分に気づけた(定性的評価)
- ネガティブな思考を防げた(定性的評価)
- ポジティブな出来事に気づきやすくなった(定性的評価)
- ソーバー(酔ってない状態)を保つのに役立った(定性的評価)
- 依存症回復を強化した(定性的評価)
(Krentzman et al., 2015)
という感じで、現時点では
まだまだ依存症グループに対しての研究は
ぼやっとして、定性的な評価が多いのが現状ですが
今後、研究を見つけ次第更新していきます。
ただ、それなりに良い効果も見込めそうですね。
特に、ポジティブな感情・ソーバー・幸福度・心の安定
この辺りは、依存症回復において
良い影響を与えそうですよね。
ウェルビーイングも上昇しそうですし、
それによって、依存症回復がうまくいきそうな
雰囲気はありますね。
依存症回復についての記事もあるので
ぜひ、読んでみてください。
Best Future self もTGT同様な効果があり
研究によっては、TGTよりも良い結果だったり
低い結果を出したりと
どっちの方が良いかは難しいところです。
(Seligman et al., 2005; Sheldon & Lyubomirsky, 2006)
*まとめ*
- ポジティブ心理学は、通常の幸福からより幸福に焦点をあてたもの
- ポジティブ心理学の介入は、手軽に自分自身で行え、
スティグマも少ない - 依存症に適した介入は、
Three Good Things と Best Future Self - Three Good Thingsでは、毎晩うまくいった3つの出来事と
その理由をそれぞれ書き出す。 - Best Future self は、自分の思い描く未来・目標がすべてうまくいった想像をし
どんな努力をしたのか書き込む。 - これら2つの介入は、禁酒・ウェルビーイング・気分の安定・依存症回復に
役立つ可能性がある。
*記事関連のおすすめの本*
「ポジティブ心理学が教えてくれる「本物の幸せ」の見つけ方」
Well-beingと依存症の記事で紹介した本と
同じ著者さんの本です。
幸せとは、なにかそんな問いに答えようとしたことがある人は
割といる印象があります。
そのような問いに、ヒントを与えてくれる
1冊です。
ぜひ、読んでみてください。