CuriousHunter 依存リハ

好奇心のままに、依存症を探索

【アルコール依存症の原因⁉】アルコール依存症は自覚できない

*依存症は、自分の感覚に自信があるが不正確*

これは、私の研究テーマですね。

たびたび、自分の呼吸・心拍・内臓動き・食べ物がおなかの中に入っている感覚を
生活の中で感じることがあると思います。

アルコール依存症では、
これらの自覚にずれがあります。

これは、依存症の1つの特徴である
自分の問題について認識障害に
つながってくれかもしれませんね。

依存症の特徴についての記事があるので、
まだ読んでない人は、ぜひ読んでみてください。

 

curiousquest.hatenablog.com

 

 

*内受容感覚*

先ほど、上げた例にあるような
体の中で起きている出来事に対する
感覚に名前があります。

Interoceptionと呼ばれています。
日本語だと、内受容感覚と呼ばれるものです。

内受容感覚と言われるぐらいなので、
体の内側の感覚のことです。

内受容感覚

ー 内臓・心臓・呼吸といった体の内側で起きている現象への感覚。
(Khalsa et al., 2018)

内受容感覚の例

  • 心臓の脈拍を感じる
  • 軌道に空気が入っていく感覚
  • 腸が動いている感覚
  • おなかの中に食べ物が入っている感覚 等

 

そして、これらの情報は脳に行って
統合されて
脳は、また再び体のに
命令を出して体の機能を保ちます。

ホメオスタシス(恒常性)に関係してきますよね。

我々がいろんな環境にさらされても、
大切な器官を守るために、できるたけ
一定の状態を保とうとします。

 

*内受容感覚と精神疾患

内受容感覚は、体の機能を保つ以外に
いろんな役割があるんです。

Bonaz et al. (2021)では、以下のものにも関連があると言ってます。

  • モチベーション
  • 感情

それが、ゆえに
いろんな精神疾患に関わってきます。
例えば、

  • 統合失調症 (Craig, 2002)
  • ADHD (Barone & Zarxo, 1995)
  • 鬱病 (Dum et al., 2009)
  • 不安障害 (Iwai et al., 2015)

ほかにも、たくさんあります。
慢性疼痛、自閉症、関節症等も
あげるときりがないですね。

内受容感覚とこれらの疾患の関係の
カニズムは、おそらく

自分の体内で起こっていることを
正確に自覚することができないため、
特定の事象を間違った解釈をする。

その結果、感情・モチベーション・行動・決断に問題が生じ
多様な精神疾患に影響を与えている可能性があります。

 

*内受容感覚と依存症*

ここからが、本題です。

さあ、依存症も内受容感覚に問題があるのでしょうか?

薬物の使用は、脳の報酬系(モチベーションに関わる)と呼ばれる
依存症での共通分母みたいな場所と
内受容感覚の情報伝達に影響を与えてしまいます
(Migliorini et al., 2013)

 

脳の報酬系は、前の記事でも触れたので
観てみてください。

curiousquest.hatenablog.com

 

curiousquest.hatenablog.com

 

内受容感覚に重要な脳の部位は、
島(とう)と呼ばれる場所で、
脳の横側にあります。

この島と他の脳の部位が
薬物使用の影響を受けてしまいます。
(Wemm & Sinha, 2019)

これがゆえに、
依存症になると
感情とモチベーション(報酬探索行動)に問題が発生します。

これも、「依存症=病気」の理論を支持する
情報ですよね。

 

*依存症では、自己の自覚が不正確*

今回の記事では、アルコール依存症のみを
取り扱いますね。

そして、アルコール依存症でも内受容感覚に問題が発生します。

Jakubxzyk et al. (2019)では、
アルコール依存症とそうでない人たちの
内受容感覚を比較しました。

この実験では、脈拍の知覚を
内受容感覚を測るために使用しました。

比較内容は、

  • 客観的な内受容感覚
    (機械で測定=正確性)
    =正確に脈拍を数えられるか?
  • 主観的な内受容感覚
    (自己申告=自分の感覚への自信)
    =どの程度、自分の感覚に自信があるか?

結果は、

要は、
アルコール依存症のグループじゃない人たちと比較すると
アルコール依存症のグループは、
自分は正確に自分の感覚を自覚できていると
思い込んでいるが、
実際には不正確に感覚を自覚している。

 

なので、もしかしたら
アルコール依存症では
アルコールを摂取した時に、体がアルコールによって
どんな反応を引き起こしているのか
正確に自覚できていない状況の可能性がある。

さらに、本人は正確に自分の体を
自覚できていると思い込んでいる状況の可能性がある。

この実験結果を考慮すると、
アルコール依存症によって
飲酒の量は増えていくのも納得がいきそうですね。

また、他の依存症でも
特に内受容感覚の客観的な正確さについては
アルコール依存症と似たような特徴があり、
正確に身体の内側で起きている事象を
把握できないみたいです。
(Sonmez et al., 2017)

 

時々、お酒飲みすぎだよと言われている人が
「自分の体は自分がよく一番わかる」
「まだ、全然の飲み足らない」「私は酔っていない」
そんな言葉を、アルコール依存症の人が言ってました。

この内受容感覚の結果は
このような、客観的状況と主観的な状況に差があることを反映しているかもしれません。

 

また、アルコール依存症では
体はすでに悲鳴をあげていたのに
しっかりと体の言葉に耳を傾けれていなかったのかもしれませんね。

 

*まとめ*

  • 内受容感覚は、体の内側の感覚
  • 内受容感覚は、感情・モチベーションに関連する
  • 内受容感覚は、多様な精神疾患に関連する
  • アルコール依存症は、内受容感覚に異常がみられる
  • アルコール依存症は、自分の感覚を正確に自覚できていると思い込んでいるが、
    実際は、正確に自覚できていない。
  • 主観的な感覚と客観的な感覚のずれが
    アルコール依存症の原因かもしれない
  • 他の薬物依存症でも、アルコール依存症と同様の傾向がみられる。

 

今後、どうやって内受容感覚を向上させるかについての記事を書きますね。

 

*記事関連のおすすめの本*

「脳と腸」

内受容感覚つながりで、腸のお話です。

脳と腸はつながりがあるんですよね。
割と距離がありますけど、
血管でつながってますので。
さらに、幸せホルモンのセロトニンは腸で作られたりします。

もしかしたら、それが理由で
腸を焼き肉屋さんでは、ホルモンって言うんですかね?

ぜひ、読んでみてください。