CuriousHunter 依存リハ

好奇心のままに、依存症を探索

孤独感を感じる【依存症と人間関係】

*共に戦う依存症*

孤立は、変更関連において世界的に問題になってます。

イギリスでは、孤独大臣が政府の役職としてあります。
日本でも、高齢者の孤独死が問題になっていますね。

孤独と依存症には、どのような関係があるのでしょうか。

社会的・環境的要因の大切さについての
記事がほかにもあるので読んでみてください。

 

curiousquest.hatenablog.com

 

curiousquest.hatenablog.com

 

 

 

*孤立と健康*

孤立は、多岐にわたる健康関連の問題と関連し
それらの問題に対する予測因子として知られています。

*孤立から予測される健康問題の例*
(一般集団)

  • 乏しい身体的・精神的健康
  • 疾病率・罹患率
  • 死亡率
    (2-5)
  • 低い社会関係の質(28)
  • 低い生活の質(QOL(27)

QOLやWell-being(ウェルビーイング)は、
依存症の回復において大切な要素になっています。
ウェルビーイングと依存症についての記事があるので
ぜひ、読んでみてください。

 

curiousquest.hatenablog.com

 


なぜ、孤独感が以上の悪影響を引き起こすのか。

孤立の定義もみると少し理由が見えてきます。

*孤立の定義*

ー 人間関係の間における食い違いによって引き起こされる
精神的に苦痛を伴う状態
(6)

 

そして、孤立にはいくのかの多面的な面があり
社会的孤立・感情的孤立等が挙げられます。
(7)

 

定義を見てみると、肉体的苦痛ではなく
精神的な苦痛と聞くだけでも
なにか悪影響を及ぼしそうな雰囲気がありますね。

 

実際に、どのような人が孤立を経験しやすいのか。

*孤立を感じる割合が多いグループ*

  • 高齢者 (12)
  • 重度の精神疾患 (例;精神病)(13)

では、依存症のグループは孤立を経験しやすいのか。
依存症における孤立と関連する要素も話していきます。

 

 

*依存症とスティグマ(汚名烙印)*

現在、わかっている限りでの依存症と孤立についてですが
スティグマが関連しているのではと言われています。

 

スティグマとは、偏見・差別等ですね。


要は、依存症だからといった偏見を持たれ
間違った認識で扱われるため、社会的に不利益・不平等を導くことがあります。

 

そのようなスティグマですが、
実は、依存症が世界で一番スティグマを受ける疾患です。
また、アルコール依存症は4番目です。
(15.16)

 

そして、このスティグマは社会的孤立から生じると言われています。
(17-19)

 

スティグマによって生じる社会的孤立によって、
依存症グループは孤独感を感じやすい
グループだと言えそうですね。

 


*依存症回復と孤立*

典型的には、禁酒・禁煙等の禁薬の過程では
それらの薬物を使っているグループとの関りを断つ
行動がみられます。

 

そして、それらの薬物を使っていないグループ・回復途中のグループとの
関係を好むようになります。
(21)

この人間関係の変化の過程が、孤立を引き起こす可能性を秘めています。

 

事実、薬物依存の治療を経験した79%の人が
頻繁に孤独感を感じたと報告されています。

また、それらの69%の人がこの孤独感は個人にとって
重篤な問題であると言っています。
(22)


この研究は、オーストラリア人のお話ですが
依存症グループは、
孤独感の割合が多く、大きな問題である可能性を示唆しています。


*孤独感を測ってみよう*

いろんな孤独を測る質問はありますが、
依存症グループに適したものがあります。


それが、
The University of California, Los Angeles (UCLA) Loneliness Scaleです。
(35)

 

この質問表の日本語版も同様に信頼度と妥当性があります。
(Arimoto & Tadaka, 2019)

ということで、興味のある人は確認してみましょう。

 

*日本語版UCLA 孤独感尺度(第3版)*

それぞれの項目について、当てはまる頻度を選んでください。
頻度の項目と点数

  • 決してない = 1点
  • ほとんどない = 2点
  • 時々ある = 3点
  • 常にある = 4点

20項目のすべての点数を足します。
ただし、いくつかの項目はその点数の逆を足すので
質問番号と数字を書いておくと楽だと思います。

 

  1. 自分は周りの人たちの中になじんでいると
    感じますか*
  2. 自分には人との付き合いがないと感じることが
    ありますか
  3. 自分には頼れる人が誰もいないと感じることが
    ありますか
  4. 自分はひとりぼっちだと感じることがありますか
  5. 自分は友人や仲間のグループの一員だと感じる
    ことがありますか*
  6. 自分は周りの人たちと共通点が多いと感じる
    ことがありますか*
  7. 自分は誰とも親しくしていないと感じることは
    ありますか
  8. 自分の関心や考えは周りの人たちには
    わからないと感じることがありますか
  9. 自分を社交的で親しみやすいと感じますか* 
  10. 自分には親しい人たちがいると感じますか*
  11. 自分は取り残されていると感じることが
    ありますか
  12. 他人との関わりは意味がないと感じることが
    ありますか
  13. 自分のことを本当によく知っている人は誰も
    いないと感じることはありますか
  14. 自分は他の人たちから孤立していると感じる
    ことはありますか
  15. 希望すれば自分と気の合う仲間は見つかる
    と感じますか*
  16. 自分を本当に理解している人がいると
    感じますか*
  17. 自分は内気であると感じますか
  18. 周りの人たちと一体感がもてないと感じることが
    ありますか
  19. 話し相手がいると感じますか*
  20. 頼れる人がいると感じますか*

20項目の合計点数を出してください。
1,5,6,9,10,15,16,19,20 (*)は逆転項目
(評定は 1=4,2=3,3=2,4=1 に換算)
例えば、質問20はで3と答えた場合は2点となるわけです。
間違えないように、合計点数出してみてください。

実際の点数の解釈の論文がなかなか見つからないのですが、
あるウェブサイトが載せてましたので、簡易的に使います。
そのデータの元が見つからないのが申し訳ないのですが。

https://happyending.or.jp/news/86
このサイトでは、
28点未満 ー 孤独感低い
44点以上 ー 孤独感高い

 

ちなみに、私は42点でした。


*孤立の理論*

孤立を理解するためにいくつか理論があります。
よいよい孤立の理解のためいくつか紹介します。

 

*帰属理論(Attribution theory)と依存症*

この理論は、ある事象の原因を何に帰属(結び付けられ)され
その出来事は何に基づいて発生したのかという
原因を推測する理論です。
(6)

 

そして、起こった事象に帰属させるものが大きく2つあります。

  • 内的帰属(当事者本人)
  • 外的帰属(他者や外的な状況)

孤立の原因は、この理論を使って説明されることがあります。

 

例えば、孤立を感じている人の帰属スタイルは
「内的帰属」と「安定」です。

 

内的帰属なので、孤立を感じている人は
孤独感を自分の欠点として信じています
そして、この欠点は安定したもの。
つまり、変化することがない自分の欠点だと認識しています。
(29-31)

 

*認知理論と依存症*

認知の仕方も孤独感に影響を与えているのではと考えられています。

この理論では、2つの原因が考えられています。

 

  • 社会的な関りに対する過剰な恐怖反応
  • 社会とのかかわりによって生じる否定的な結果の予測

これら2つが孤独感を発生・維持させる鍵となっています。
(26)

 

しかし、依存症ではこれらの理論がどのように絡んでくるのか
研究が少ないので分かり次第、足していきます。

今のところ、認知が依存症における孤独感に関係していそうな雰囲気が出てます。
(32,33)

 


*孤独感を改善する*

大抵のグループにおいては、認知的な介入が効果的だと言われています。
(14. 37. 107. 108)

 

要は、孤独感においては社会的な関りに対する考え方(認知バイアス)が問題
そこに介入することができると改善する可能性があるということです。

 

この社会的な関りに対する認知のゆがみに対するアプローチ
事実、主観的な孤独感に大きな効果を持っています。
(37)

 

逆に、よく頻繁に言われている
社会的なコンタクト・人との関りを増やす方法は
孤独感に大した影響を与えません

 

そのため、単純に他の人とかかわりを増やしても
個人が持つ、人間関係についての考えが変わらないと
孤独感に変化は起きにくいということですね。

 

ただ、依存症で同じことが言えるのか。
それは、正直まだわかりません。
研究がかなり少なくて、難しいのですが。

 

1つ、良い例をあげます。
(14)では、精神疾患グループを対象に
個人が抱く自分自身・他人に対する認識に対して
アプローチした様々な実験のレビューを作りました。

*孤独感の認識の例*

  • どのように自分が他人に扱われるのか
  • どのように他人が自分のことをかんがえているか
  • どのようなサポートを他人から受け取ったか
  • 孤独感の克服に対する考え方

 

このような考え方・認知にアプローチする方法として
認知行動療法・動機付け面接法等が上がってきます。

そして、これらが現時点では効果がありそうな雰囲気が出ています。
今後、これら2つの治療法についても説明しますね。

 

*まとめ*

  • 孤独感は、健康関連のいろんな要素に悪影響を与える
  • 孤独感は、依存症の回復に必要なウェルビーイング
    悪影響を与える。
  • 依存症は、一番スティグマの対象になる疾患
  • 依存症においては、スティグマが孤独感の要因になっている。
  • 依存症の孤独感を改善するには、人間関係に対する考え方に
    アプローチした方が良さそう
  • 依存症の孤独感に対しては、認知行動療法・動機付け面接法が
    有効な可能性がある。

Twitterでは、Twitter断酒部を筆頭に
いろんな薬物のグループがあるようですね。

 

もしかしたら、このような取り組みも
孤独感を改善する一助になっているかもしれませんね。

 

*記事関連のおすすめの本*

「孤独の科学 人はなぜ寂しくなるのか」
「Loneliness: Human Nature and the Need for Social Connection」

孤独をいろんな観点から体系的に
解説されてます。

最近は、孤独を良しとする本も多いですが
まあ、悪い面もあります。

脳科学・心理学・遺伝・社会経済的な視点と
豊富な幅広い視点で孤独が理解できると思います。

また、ちょっとした改善法も載ってますね。

孤独感の理解・改善のヒントとして
ぜひ、読んでみてください。