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依存症回復の5段階説?【マズローの欲求5段階説と依存症回復資本】

 依存症回復の鍵として「回復資本」という
キーワードが最近頻繁に使われています。

 

回復資本は、どれほどの依存症回復に必要な材料の指標ですが
この回復資本は心理学の世界では有名な理論である
「Maslow's hierarchy of needs (マズローの欲求5段階説)」
取り込んだものになっています。

 

ということで、
マズロー自己実現理論と回復資本を照らし合わせながら
依存症の回復とは?
考え見ましょう。

 

まだ、回復資本がピンと来ていない人は
ぜひ、以下の記事を読んでみてください。

 

curiousquest.hatenablog.com

 

 

 

マズローの欲求5段階説*

マズロー自己実現理論(5段階説)は
5段階の人間のニーズで構成された
ヒエラルキーのあるピラミッドです。
(Maslow, 1968)

 

 

マズローの欲求5段階の項目

  • 自己実現欲求 (Self-Actulization)
  • 承認欲求 (Esteem needs)
  • 社会的欲求 (Belongingness and Love needs)
  • 安全欲求 (Safety needs)
  • 生理的欲求 (Physiological needs)

マズローの欲求5段階説

 

上位の欲求を満たすためには、
下位の欲求が満たされなければならず
下位の生理的欲求から上位の自己実現欲求へと
進んでいきます。

ただ、Maslowさんは1987年に訂正をしており、
下位の欲求が100%満たされなければ
次のステージに進めないというのは、
間違った認識だと言ってます。

 

また、すべての人が最高位の自己実現に達することができるものの
実際は、ライフイベント(離婚・失業等)によって
下位層のニーズを満たすことに失敗し
上位層へ進むことが妨げられます。

 

そのため、ヒエラルキーの移行は
一方通行ではなく、両方に移行し
時には、後戻りすることもあり不安定なものです。

 

また、上記の5つの段階は
欠乏欲求(Deficiency needs)と
成長欲求(Being (growth) needs)に分けられます。

 

 

*欠乏欲求*

欠乏欲求は、最初の4つの段階です。
つまり、生理的・安全・社会的・承認欲求が
欠乏欲求に分類されます。

 

欠乏欲求は、我々のモチベーションになり
ニーズが満たされていない状態で発生します。

また、この欠乏を満たすためのモチベーションは
より欠乏期間が長くなればなるほど高まると考えられています。

 

例えば、長い期間水不足で過ごせば過ごすほど
より、のどが渇くといった感じです。

 

そして、おおよその欲求が満たされると
その欲求は消えていき
次の欲求ステージへと進み
新たな欲求が顕著になってきます。

 

*成長欲求*

成長欲求は、最後の段階である
自己実現欲求です。

 

この欲求は、成長欲求と異なり
一度、表出すると継続して
ずっとその欲求を感じ
一度、その欲求を満たそうとすると
どんどんその欲求が強くなっていきます

 

ただ、これは何かが足りないから欲しいわけでなく
人として成長したいという思いから発生してきます。

この成長欲求が満たされると
最高位の自己実現に到達できます。

 

 

ということで、
少しそれぞれの欲求を覗いていきます

 

*生理的欲求*

第1下層の欲求です。

生理学的欲求は、我々人類が生きていくために
必要なものです。

 

  • 空気
  • セックス
  • 睡眠
  • 食べもの

 

これらのニーズが満たされないと
我々は、うまく機能することができません。

Maslowさんは、これらのニーズが一番大切と
考えています。

 

*安全欲求*

第2下層の欲求です。

これは、危険を避け安心した生活を求める欲求です。

 

法律・安全・自由・安定の保護を求めています。

 

*社会的欲求*

第3下層の欲求です。

これは、社会やコミュニティーに属している
感覚です。

  • 恋愛関係
  • 友達関係
  • 信頼

 

*承認欲求*

第4層の欲求です。

Maslowさんによると
これは2つのカテゴリーに分かれます。

 

  1. 自分への尊重
    (尊厳、達成感、習熟、自立)
  2. 他人からの評価・尊敬の欲求
    (地位・名誉)

特に、これらの尊敬・評価のニーズは
子供・青年期において重要で
自尊心・尊厳の形成に関わってきます。

 

自己実現欲求*

最上位の層です。

これは、自分自身のポテンシャルや自己実現のような
個人の成長・経験へのニーズです。

 

Maslowさんの言葉を借りると
"A desire to become everything one is capable of becoming"
(Maslow, 1987, p.64)

日本語的にいくと
個人が可能であることをすべて実現する願望ですかね。

 

これらのマズローの欲求5段階説を
含めたものが回復資本です。

 

マズローと回復資本*

マズローの欲求5段階説のそれぞれの要因は
回復資本の中に含まれています。

 

回復資本は、内部・外部の依存症回復を
始める・維持するための材料の幅・深さです。
(Granfield & Cloud, 1999, 2004)

 

これがどのようにマズローの5段階説に関わっていくのか。

 

まず、簡単に回復資本の種類をサクッとみると
4種類あります。

  • 社会的資本
    (友人・家族)
  • 身体的資本
    (財産・所有地)
  • 文化的資本
    (価値観・信念・個人の気質)
  • 人間的資本
    (知識・スキル・教育・健康)

 

これらの資本が多いほど、
依存症回復の道を歩み始めやすく
維持することが容易になります。

 

これらの回復資本がどのように
マズローの欲求5段階説に関わってくるのか。

 

 

*依存症回復の5段階説*

上記の回復資本とマズロー欲求5段階説が
依存症回復にどのように関連があるのかと言うと
依存症回復における5段階説のように
表現ができると考えられています。

 

依存症回復における欲求5段階説?

  1. 回復
  2. 寛解
  3. 薬物使用のコントロール
  4. 非薬物関連の問題の減少
  5. 薬物関連の問題の減少

 

依存症回復の5段階説と回復資本

 

下位層の非・薬物関連の問題は
回復資本に関連がありそうですよね。

 

つまり、お金・健康・コミュニティーのような
依存症回復のベーシックのニーズが満たされなければ
依存症回復・薬物コントロールに進むことは
難しい可能性がある。

 

また、下位4層が満たされることで
自分自身の成長「依存症回復」が可能になってくる
のかもしれませんね。

 

 

*まとめ*

  • 依存症回復に必要な資本は
    マズローの欲求5段階説を反映している
  • 依存症回復に必要な基本的な資本なしに
    薬物コントロール寛解・回復への移行は
    難しいのかもしれない
  • まずは、非・薬物関連の社会・健康問題の減少が
    依存症回復への第1歩なのかもしれない。

 

*記事関連のおすすめの本*

人間性の心理学」

この本を読むと、意外にマズローさんの理論を
しっかりと誤解なく解釈できると思います。