依存症・オンライン自助グループの可能性
*Twitter断酒部・Twitter断ギャンブル部への期待*
近年、テクノロジーの発展とともに
多様な方法で依存症治療の介入が試みられています。
その1つの可能性として
デジタルを使用した依存症回復に期待が持たれています。
おそらく、コロナをきっかけに
よりデジタルで行う依存症治療・依存症回復支援の
需要が高まったと思われます。
実際に、デジタルを使い
どんな方法・効果が期待されているのでしょうか。
もし、効果があれば
Twitter断酒部・断ギャンブル部さんの
今後が楽しみでワクワクしてきます。
まあ、勝手に期待して
申し訳ないのですが。
研究するために、データを取りたいなと勝手に
妄想してます。
*依存症治療の壁*
薬物使用障害の人は、アメリカでは推定で1900万人にいて
そのうち、250万人のみが特定の治療を受けています。
(NSDUH, 2017)
日本でもおそらく、同じような傾向がある
可能性はありそうですね。
また、特定の依存症治療に行っていたとしても
薬物の再使用は、極めて普通であり
2分の3人の依存症治療中の人が、
2-3か月で、再び薬物使用に戻ります。
(Paliwal et al., 2008)
という感じで、ほとんどの人が正規の治療過程を通らず
また、対面の治療に抵抗を感じている状況です。
かつ、治療に行っても
いつでも薬物の再使用のリスクに向き合っています。
また、1つ重要な点として
約46.1%の薬物使用障害の人は
正規・非正規の依存症治療・回復サポートサービスなしに
回復している事実があります。
(Kelly et al., 2017)
同様に、正規の治療過程を通っている人ですら
実際は、アルコールアノニマスのような
参加者同士で相互で支え合う依存症回復サポートを活用しています。
(Kelly et al., 2017)
そのため、治療成績も低く
正規の治療を求める人も少ない現状、
治療なくして回復している人がいる事実、
正規の治療だけでなく、
コミュニティーベースの支援を求める声に対応しようと
研究者・臨床で働く医療関係の人たちは
あるアイディアに行きつきました。
それが、デジタルの活用です。
上記の統計情報(治療なしで依存症回復する割合)を基に、
発展した依存症の理論もあるので
ぜひ、読んでみてください。
*デジタル回復支援サポート(D-RSS)*
デジタルを活用した依存症回復を
Digital recovery support services (D-RSS)と言います。
このD-RSS(デジタル回復支援サポート)を使い、どのようにして
より多くの薬物使用障害の人にアプローチし
治療開始・継続の障壁を減らすことができるか
議論されてきています。
D-RSSを少しかみ砕きましょう。
まず、RSS(回復支援サポート)とは
基本的には、専門家・依存症回復の経験者を通して
長い目でみた個人における回復の過程に着目した
対面式の活動です。
(Kaplan, 2008)
正規の治療との違いは、
正規の治療では、回復の開始と回復を促すことを
主に目的としており、
RSSは、病院等の臨床的な場面ではなく
長期のコミュニティーベースのサービスで
基本的には、依存症回復経験者によって提供されています。
(White, 2008, 2009)
また、RSSはカテゴリー的には
教育・雇用・住居・社会サポート・継続的なケアであり、
個人の機能・幸福を向上させる目的があります。
(Ashford et al., 2019)
日本でいうと、
ピア・サポート、12steps等になりそうですね。
そして、D-RSSは
従来の対面式の回復支援サポート(RSS)と
目的・カテゴリー的には同じであるが
それらをすべての活動をデジタル上で行うものです。
*D-RSSの実践可能性*
実際に、どのようにD-RSSを提供するのか。
方法は、いくつかあります。
- スマートフォンのアプリ
- ウェブサイトのフォーラム
- ソーシャルネットワークのサイト
(Bergman et al., 2018)
他にも、日本で多くの団体組織が発足してきているので
それらが、デジタルで行えばD-RSSになりえますね。
まだまだ、この分野の発展はまだまだ甘いですが
いくつか実験結果が報告されています。
*D-RSSの期待されている効果*
- 治療・サービスへのアクセスのしやすさの改善
(公共交通機関や移動を最小限に減らす) - 立地条件を無視
(住む場所や立地に関係なく、サービスが受けられる) - 金銭問題を解決
(移動費にお金がかからない)
(Bergman et al., 2018; Bliuc et al., 2017)
そして、理論上はデジタルで行おうが
対面で行おうが同じサービスを提供できるため
回復資本(回復に必要な資本)・回復の希望を高め
行動によるストレスを減らすことができると考えられています。
(Kelly & Hoeppner, 2015)
また、多くの成人が幅広いデジタルテクノロジーにアクセスすることができ
大抵の人が、パソコン・スマートフォン・タブレットを使用して
娯楽・健康情報・社会的交流を行っています。
(Pew Research Center, 2017)
ということで
D-RSSは大いに、物質使用障害に必要なニーズをとらえて
依存症回復のサポートの役割を果たせそうな
雰囲気が出ています。
事実、多くの人がデジタルプラットフォーム上の
サービスを利用したいと興味を示しています。
(Ashford et al., 2018)
D-RSSによって向上しそうな
回復資本についてよくわからない人は、
以下の記事をぜひ読んでみてください。
また、依存症は悲観的な情報が多い中
「希望・幸福」のようなポジティブな面に着目した記事もあります。
*D-RSSの実際*
実際に、D-RSSが求められている効果や役割
依存症治療への障壁を減らせているのでしょうか。
1つ、システマティックレビュー(信頼度が高い)を
発見したので結果を載せます。
(Ashford et al., 2019)
実際に、使われていたデジタルプラットフォームは以下です。
- ウェブサイト(専門家・依存症経験者のブログ・勉強会 等)
- オープンなソーシャルネットワークサイト
(匿名掲示板みたいなもの) - クローズなソーシャルネットワークサイト
(登録制で、依存症経験者とともにプランを立てる) - メッセージを送るサービス(SMSで、スタッフとサービス利用者で進捗報告とアドバイス)
- スマートフォンアプリ(Facebook 等)
*対象*
- 複数の薬物使用
- アルコール依存
- オピオイド依存
*評価項目*
- 実現可能性
- 有用性
- 効果
*D-RSSの結果*
- デジタルプラットフォームは好まれる方法であった
- 参加における疲労感の少なさ
- 高い参加率
- 参加率と禁薬物期間に関連あり
(高い参加率ー長い禁薬物期) - 高い参加率ー低い危険飲酒
- 高い参加率ー少ないアルコール関連の事故
- 社会支援の増加
- D-RSSの利点を感じる
- スティグマの減少
※これらの効果は、参加者の特性によって変わる可能性あり
例;回復期間・回復経過
=人によって、有用性・効果は異なる可能性あり。
ということで、Ashford et al.(2019)は
D-RSSが依存症治療や回復支援の利用に対する
抵抗感を減らす手段になりえる可能性があると
締めくくってます。
いずれにせよ、
Twitterを使ったTwitter断酒部・Twitter断ギャンブル部等の
可能性を示してくれていますね。
他にも、Twitterの依存症関連の部はあるのでしょうか。
あれば、コメントで教えてくれると嬉しいです。
ただ、まだまだ実験的な証拠が少なく
観察研究ばかりなので
結論を出すには難しそうですが
今後の研究が気になりますね。
また、D-RSS上でのコミュニケーションの取り方等の
研究もちらっと見つけたので
今後、また記事にしていきますね。
そして、
よりTwitter断酒部さん・Twitter断ギャンブル部さん
他の依存症関連のTwitter部の
発展に役立てたらうれしいです。
*まとめ*
- 多くの人が、対面型の正規・非正規の治療に
抵抗を感じている。 - デジタルを利用した、依存症回復サービスに興味関心あり。
- デジタルを利用したサービスに期待される効果
(移動の不要さ・金銭問題・立地条件)
=依存症治療・回復サービスの開始の障壁を下げる - デジタルサービスにおいても
回復において必要な回復・向上がみられる可能性あり - Twitter断酒部・断ギャンブル部もデジタルにおける
依存症回復の手助けになる可能性がある。
*記事関連のおすすめの本*
「子供のデジタル脳 完全回復プログラム」
「Reset your child's brain」
残念ながら、私もデジタルに関してそこまで詳しくなく
あまり本を読んでこなかったので、
デジタルの依存症の方向性の本を紹介します。
基本的には、子供の未成熟な脳に対して
デジタルスクリーンは危険なのではってことですね。
薬物も同様で、子供の未熟な脳に対して
薬物を使用してしまうと、脳の発達が
薬物ありきで発達してしまい、
依存症の確率が高まります。
そんな、子供におけるデジタルの危険性を
どのように排除するのか
著者は、プログラムを作り
成功事例が出ているようです。
お子様がいる方は、ぜひ購入して読んでみて下さい。
子供を守るのが大人です。