CuriousHunter 依存リハ

好奇心のままに、依存症を探索

EQ・心の知能指数と依存症

*感情の認識・コントロールの難しさ*

 

ひと昔前に、EQ (Emotinal Quotient)という言葉が流行りました。


日本語だと、心の知能指数って感じでしょうか。

 

EQは、身体的・精神的健康と関連があると
多くの研究で検証されてきました。

 

しかし、EQと依存症に関係はあるのでしょうか。

 

 

*EQ (Emotional Quotient)*

 

まず、EQとはなにか。

EQは、大きく4つの能力があります。

 

*EQの4つの能力*

  • 感情の識別の正確さ
    (自分や他人の感情を読み取る能力)
  • 感情の利用
    (感情を利用して思考・決断する)
  • 感情の理解
    (感情の意味に対する論理的思考)
  • 感情の調整
    (感情の制御、強化、調整能力)
    (Mayer & Salovey, 1997)


そして、これらの能力を持つ高EQの人は
よりポジティブな特性を持ち、より幸福であり
より人生において成功している。
(Chamoro-Premuzic et al., 2007; Martinez-Pons, 1997)

 

実際に、いくつかの研究では
高いEQと多くのポジティブな要素と関連がありました。

 

*高EQの関連*

  • より適応力のある対応をとる
    (Salovey et al., 2002)
  • 学業においてより良い成果を収め
    (Parker et al., 2004)
  • より良い人間関係の構築
    (Mayer et al., 1999)
  • 身体的・精神的健康における予防因子
    (Austin et al., 2005; Tsaousis & Nikolaou, 2005)

 

 

しかし、IQ(知能指数)と大きな違いがあります。


IQは、子供から大人になるまで一般的に一定の数値ですが
EQはトレーニングして向上させることができる点です。
(Laborde et al., 2013)

 

なので、もし仮にEQと依存症に関連があったとしても
レーニングをすることで違いを生み出せる可能性があります。

 

EQのトレーニングは、また違う記事で説明しますね。

 

また、EQテストのURL張っておくので
気になる人はテスト受けてみてください。

心の知能指数テストを無料実施 - EQテスト (eqtest.biz)

ちなみに、私のEQは
120でした。

まあ、平均より上ですが
特別低いわけでもなく、高いわけでもないですね。


さて、本題のEQと依存症に入る前に
依存症と感情についてお話します。

 


*依存症と感情*

 

割と心理学における感情は、
長い歴史があり感情の問題は、
多くの精神疾患の理論・治療に組み込まれる

要素の1つになっています。

 

有名なFreud (1930)も
恐怖を抱く環境、痛み、失望は
向精神薬乱用の背景因子と言っています。
(Freud, 1930)

 

Rado(1933)では、
非常に感情的に困難な状況における
対処が薬物使用と表現しています。

 

Glover(1932)においても
薬物使用障害は、悲しみ・性欲をコントロールする時
または、精神的な落ち込みを防ごうとするときに発症する
と言ってます。

 

 

という感じで、
薬物使用は感情を調整する道具として存在する。

そのような理論がたくさん存在します。

 

 

そして、依存症になった後も感情は関連する
とWurmser (1974)は言ってます。

 

 

つまり、
依存症になると感情の区別・コントロールができず
衝動的になり、ストレスをため込み
再び薬物使用に至るということです。

 

なぜなら、感情をコントロールする術を学ばず
薬物に頼っていたためと考えられます。

 

これらを組み込んだ理論として
自己投薬の理論がありますが、
今回は割愛します。

 

依存症の理論について、気になる人は
以下の記事を確認してみてください。

 

curiousquest.hatenablog.com

curiousquest.hatenablog.com

curiousquest.hatenablog.com

curiousquest.hatenablog.com

curiousquest.hatenablog.com

 

 

 

*依存症と精神疾患の合併*

依存症において、精神疾患の合併は頻繁に報告されています。

 

*依存症と頻繁に併発する精神疾患の例*

 

どの精神疾患においてもEQが関連しそうな、
感情の要素に問題がありそうですよね。

 

なので、容易に依存症とEQに関連がありそうな
想像ができそうですね。

 


*依存症とEQ*

本題に入ります。
まあ、なんとなく予想がついていると思いますが
見てみましょう。


*アルコール依存とEQ*

とりあえず、いろんな実験結果を載せます。

 

  • アルコール過剰摂取によるコルサコフ症候群グループは
    表情からの感情の認識・読み取りに困難が生じる
    (Oscar-Berman et al., 1990)
  • アルコールのデトックス直後後においてもEFEのテスト結果が低い。
    (Kornreich et al., 2001)
    アルコール依存は、ネガティブな感情の強度を過剰に見積もる
    (FOisy et al., 2007)
  • アルコール依存では、感情の認識のずれが対人関係の問題を作り出す。
    (Kornreich et al., 2002)
  • アルコール依存では、悲しみ・不快の感情を
    怒り・軽蔑の感情として認識
  • アルコール依存症では、感情の認識のずれを認識していない
    (Philippot et al., 1999)
  • アルコール摂取が多いグループは、低いEQ
    (Austin et al., 2005)

 

もちろん、関係性を見つけられなかった研究もあります。

 

 

*たばことEQ*


実験結果

  • 感情の理解・理由付けは、喫煙の予防因子
    (Tsaousis & Nikolaou, 2005)
  • 感情をコントロールできない人は、
    喫煙の傾向が高く・初期使用が若い年齢
  • 感情を明確に把握できない人は、喫煙本数が多い
    (Salovey et al., 1995)
  • 禁煙は、性格な感情の認識と関連
  • 高いEQをもつ喫煙者は、ネガティブな社会的な影響が少ない。
    (Trinidad & Johnson, 2002)
  • 高いEQでは、喫煙の誘いを断ることができ
    将来も喫煙する意思が少ない
    (Trinidad et al., 2004)

 

 

*薬物使用とEQ*

実験結果

  • オピオイド使用者は、感情の認識が不正確
    (Kornreich et al., 2003)
  • 感情のコントールは、大麻使用の予防因子
  • 低いEQは、大麻の使用年齢が早い
  • 感情を明確に知覚・認識できると、
    大麻をより危険と感じる。
  • 低い場合は、定期的な大麻使用者が多い。
    (Limonero et al., 2006)
  • 低いEQとMDMA使用者に関連
    (Reay et al., 2006)

 


*行動嗜癖とEQ*

実験結果

 

  • 感情の認識テストの結果が低いグループは、
    インターネット依存の指標が高い
    (Sjoberg & Engelberg, 2005)
  • 低いEQと衝動買い
    (Lin & Chuang, 2005)
  • 低いEQとギャンブル依存症のリスク
  • 高いEQは、ギャンブル行動をより上手く・効率的に
    コントロールできる。
    (Kaur et al., 2006)

 


関係があると報告している研究ばかりあげましたが、
1つシステマティックレビュー(信頼度が高い)の結果を紹介します。

 

Kun & Demetrovics (2010)によると
低いEQとアルコール使用・喫煙・違法薬物は関連があると報告してます。
また、2つのEQの要素が需要な役割をしています。

 

という感じで、割とEQと依存症に関連があると言っても
良さそうかなといった感じですね。

 

感情と依存症についての記事もあるので
ぜひ、読んでみてください。

 

curiousquest.hatenablog.com

curiousquest.hatenablog.com

curiousquest.hatenablog.com

 


*まとめ*

  • EQとは、感情の知能指数
  • EQには、4つの能力がある
  • EQの能力(感情の認識・利用・理解・制御)
  • EQは、トレーニング可能
  • 感情は、依存症において重要な要素
  • 依存症において、薬物は感情をコントロールする道具
  • 依存症は、感情が関与する精神疾患を頻繁に併発する。
  • 依存症と低いEQは関連がある可能性がある。
  • 依存症は、感情の認識・コントロールが苦手

 

*記事関連のおすすめの本*

「21世紀の教育。子供の社会的能力とEQを伸ばす3つの焦点」

「The triple focus. A New Approach to Education」

 

この本を書いたダニエルさんは、
EQを提言した人です。

子供たちは、依存症のリスクに一番直面しているグループです。

EQの理解が、今後の依存症予防の鍵になる可能性がありそうです。

すでに、依存症で苦しんでいる人も
EQは、鍛えられるので
ぜひ、この本を購入しEQを伸ばしてみてください。