依存をやめるモチベーションを引き出すコミュニケーション【心理学的治療ー動機付け面接法】
*依存症に欠陥はない。やる気を引き出すだけ*
依存症の治療法は、いろんな方法が試されています。
例えば、多理論統合モデルですね。
まだ、読んでない人は読んでみてください。
そして、今回はこの多理論統合モデルに
マッチする治療法「動機付け面接法」を紹介します。
英語だと「Motivational Intervewing (MI)」です。
この介入方法は
特に、依存物質・行動をやめるか迷っている人
やめると決意したが、まだ行動に移せていない人にとっては
有益な情報になると思います。
また、依存症の家族を抱えている人
依存症の人を支援している人にとっても役立つ内容だと思います。
私自身もこの治療法をトレーニングしました。
依存症施設にお手伝いしていると、頻繁に
モチベーションを高める議論がされている印象です。
ということで、解説していきます。
*依存をやめるモチベーションはある*
動機付け面接法の目的は、
個人の行動を変えるモチベーションを強化し
行動を変えるという強い気持ちを育てることです。
(Miller & Rollnick, 2013)
ここから読み取れることとして、
動機付け面接法の基本は、
依存をやめられない人に欠陥(モチベーション)がないから
依存をやめられないとは考えていない点ですね。
すでに依存症で苦しんでいる人の内側には
モチベーションがあると仮定していて、
その秘めたるモチベーションを育てることが
動機付け面接法の目的です。
その結果、自分が決めた行動目標に従って
遂行できる力を育てていきます。
私個人としては、割とこの態度は好きですね。
理由としては、依存症は意思が弱いからやめられないと
言われがちですが、
この理論では、依存症で苦しむ人に何か
問題があるわけではないという
前提条件で治療が進められていく点です。
本当に、誰かに依存症をやめてほしいのなら
相手のモチベーションを殺すようなことは
言ってほしくないですよね。
*4つのスピリット*
動機付け面接で重要にする点が4つあります。
頭文字をとって「PACE」と呼ばれています。
- P: Partnership (協同)
- A: Acceptance (受容)
- C: Compassion (思いやり)
- E: Evocation (呼び起こし)
1つずつ、説明していきます。
*協同*
インタビューなので、インタビューする側とされる側がいます。
このどちらの側も協力して、
インタビューを成功させようと努力することですね。
つまり、カウンセラーはカウンセラーの知識があり、
患者さんは、自分のことを一番よく知っている人なので
その2つの力を合わせないとうまくいきません。
よく言われる例えが、動機付け面接はボクシングではなく
社交ダンスだと。
要は、カウンセラーと患者さんが言い争うものでなく
いいダンスをするために
時には、片方がリードし
また時には、もう片方がリードし
協力して踊ることです。
*受容*
これは、相手の権利や自発性・選択を尊重することです。
なので、基本的に批判をせずに
相手の思想や価値観を是認します。
共感ということが一番しっくりきますかね。
そして、誉めてあげ
相手の強みや努力を認識してあげます。
この需要は、実はすごい重要です。
Rigting reflex(正したい反射)というものがあり、
人は、誤りを見つけると反射的に
それを正そうとしてしまいます。
このやり方は、動機付け面接法ではないです。
なぜなら、相手に欠陥があるとは想定していないからです。
*思いやり*
これは、患者さんにとっての最大の利益を考えることです。
少しでも、行動を変える前向きな気持ちが
表に出るように、
患者さんの口で行動を起こしたい気持ちを
言葉にしてもらい
行動と結び付けていきます。
そのために、しっかりと相手の話を聞き
ポジティブな発言を拾い上げていきます。
*呼び起こし*
これは、相手自信が持っている行動を変化させるための答えを
引き出していくことで、
モチベーションを高めます。
つまり、カウンセラー側が知識や指摘をすることで
相手の足りない部分を補うことはせずに、
相手自身から出てきた行動変化へのモチベーションを
引き出していきます。
なぜなら、相手自身が発する言葉が
より説得力があり言葉であり、
よりモチベーション高める材料になります。
*動機付け面接のテクニック*
いくつか、動機付けをするためのテクニックがあります。
これを知っているだけでも、
相手のモチベーションを殺さず、育てることができます。
また、カウンセラーと患者さんが
患者さん自身のことを理解することも手助けしてくれます。
頭文字は「OARS」です。
- O: Open questions (オープンクエスチョン)
- A: Affirming (肯定)
- R: Reflecting (聞き返し)
- S: Summarizing (要約)
*オープンクエスチョン*
質問のタイプにclosed (クローズド)と open の質問があり、
クローズドは、Yes/Noの回答を求める質問タイプです。
これ自体が悪いわけではなく、これを多用すると
相手の反応を制限していまい、
相手のモチベーションを引き出せません。
相手のモチベーションを引き出すには、
相手に自由に話してもらう必要があります。
要は、相手の内なるものを表に持ってくるために
オープンクエスチョンをし、相手に考えさせます。
*肯定*
ポジティブなことがあれば
拾い上げて、誉めます。
もちろん、適当に誉めませんよ?
しっかりと話を聞きそのうえで
行動を変化させるうえで、良い行動と発言を
しっかりと肯定してあげます。
これをすることで、
相手は自分の話をしっかりと聞いてもらえていると思え、
より良好な関係が築けます。
そして、この過程により自己肯定感の強化を
行います。
自己肯定感は依存症にとって大切な要素ですね。
その記事もあるので、ぜひ読んでみてください
*聞き返し*
これも、良好な関係を作るために役立ちます。
何をするかというと、話を聞いていた後に
自分の理解が正しいのか確認をとるための
聞き返しをします。
ただ、同じ言葉で聞き返すこともいいですが、
時には、他の言葉で言い換えたり、
相手が発した言葉に少し自分なりに解釈した
意味を付け足しながら聞き返します。
例えば、
患者さんが、「今日は鬱っぽいな」といった場合、
その言葉をそのまま返すもありですし、
言い違う言葉に言い換えても良し、
そして、何か意味を見出し付け加えて
聞き返すもよし。
例としては、
「何か大変な事があったんだね。確かに少し疲れてるように見えます。」
と聞き返します。
これは、相手の「鬱っぽい」という言葉から
意味を予想をして、聞き返すことで
自分の理解を確かめています。
自分の予想が違ったとしても、
相手は自分のことを考えるきっかけになりますし、
相手が新たな自分自身の気づきにつながる可能性もあります。
なので、推奨はおそらく少し複雑な
聞き返しでしょうね。
*要約*
会話の終わりの閉め方として
すべての要約をします。
これによって、相手を理解していることを
伝えることができます。
そして、この時に重要なことが
相手が発した、
行動を変えたいという気持ち・行動に関連する言葉を
まとめます。
そうすることで、相手は自分自身のモチベーションを
再認識するきっかけになります。
*両面感情が鍵*
いろいろテクニックや重要な心構えを
言いましたが、
その結果、何をしたいのか。
2つあります。
- 「自分自身と向き合うこと」
- 「自分自身を探索すること」
そして、そのカギが両面感情(Ambivalence)です。
両面感情というのは、相反する感情を同時に持つことです。
なので、依存症では
依存をやめたい気持ちとやめたくない気持ちですね。
上記のテクニックを応用することで、
相手が自分自身のこの両面感情を探索し
自分自身と向き合うことで、
より多くの変わりたいという思い・発言を引き出し
行動を起こそうか起こさないか迷っている
悩みを開所する手助けと
モチベーションを高めていきます。
動機付け面接法でも、自分自身と向き合うことの
重要性が強調されていますね。
そのような記事もあるので、ぜひどうぞ
*まとめ*
- モチベーションを引き出す、動機付け面接法
- 動機付け面接法は、まだ行動を起こせていない人たちに
有効な手法 - 動機付け面接法では、相手に欠陥があるとは
想定していない。 - 協同・受容・思いやり・呼び起こしが
重要な心構え - オープンクエスチョン・肯定・聞き返し・要約の
4つのテクニックを使用する。 - 相手を正したい気持ち(Righitng reflex)を抑える。
もし、何か問題行動を抱えている人と
話す機会があれば、
ぜひ、動機付け面接法を応用して
相手のモチベーションを高めてあげ
行動の変化を促し、サポートしてあげてみてください。
他にも、コミュニケーションの記事もあるので
ぜひ、読んでみてください。
*記事おすすめの本*
「動機付け面接」
動機付け面接の本は、たくさんあるので
好きなものを手に取っていいと思います。
私自身は、英語版の以下を使いました。
やはり、ちゃんと動機付け面接を発展させた人の本が
いいなとは思います。
ということで、この英語の本を翻訳したものを
紹介しておきますね。