スリップで止まる人・リラプスする人【依存症】
スリップの原因は自分ではない?
少しの依存行動でやめるこは、
なかなか大変で、
さらに、やめることを継続することは
もっと大変です。
そして、依存行動をしないと決断してから
再び、依存行動をしてしまうことが
度々あると思います。
その中で、一度失敗しても
再び、依存行動をやめようと
すぐに、望むべき線路に戻れる人と
戻れずに、元のレベルの依存行動に
至ってしまう人たちがいます。
ちょっとした依存行動で終わり、
すぐに依存行動を再び抑制できる人と
抑制できずに、元の依存行動に戻ってしまう人に
どのような違いがあるのか
1つの視点を紹介します。
Miller (2013)さんの
Principle of Addictionを引用しています。
*「Lapse」と「Relapse」*
まず、定義したいことがあります。
Lapse(ラプス)もしくは、Slip(スリップ)と
Relapse(リーラプス)です。
どちらも、依存行動をしていない時期から
依存行動に戻ってしまう言葉です。
しかし、2つの言葉には違いがあります。
日本だと、
スリップ(再使用)とリーラプス(再発)で
話されていることが多そうな印象ですかね。
記事では、ラプスとリーラプスで統一しますね。
ラプスは、ネットで日本語調べると
「ささいな過ち、過失、横道にそれること」
と訳されています。
リーラプスは、「〔病気 が〕ぶり返す、再発 する」
と訳されています。
日本語訳からわかるように差が二つの言葉にはあり、
依存症の世界でもこの2つを
違う概念として取り扱った方が良いと
提言している人がいます。
ということで、依存症の世界での
LapseとRelapseは何を示しているのかというと
- ラプス
ー 依存行動のやめる試みの後に発生した初期の依存行動
ー 最終的にRelapseにつながる行動
ー 多くの人がもう一度、依存行動をやめようと試みる - リーラプス
ー 依存行動が依存行動をやめる前のレベルに到達・継続される
つまり、ラプスはちょっと依存行動で
再び、依存行動をやめる行為に戻るが
リーラプスは、前のレベルに戻ってしまうって感じですかね。
例えば、アルコール依存なら
一杯だけビール飲んでしまったがラプスで、
前のレベルの飲酒量に戻り、継続されたら
リラプスって感じですね。
まあ、実際はここまではっきりとした
線引きができないのが現状であったり、
依存症の言葉は、まだ言葉の定義が
あいまいなものがたくさんあります。
この、記事ではややこしいことは割愛しますね。
*リーラプスを予測する*
リーラプスが回復の過程だよと言う
研究者もいますが、
リーラプスを予防しようする流れがあります。
Relapse Prevention
((リーラプス プリベンション)(RP))と
呼ばれています。
少し、RPについて話すと
認知行動療法的な要素が応用されていることです。まあ、RPについては、また別の記事で
詳しく話しますね。
認知行動療法についての記事もあるので、
ぜひ、読んでみてください。
このリーラプスを予防するために
観察・測定可能な個人の特性の中で
リーラプスを予想できる因子がないのか
研究者たちは、探しました。
その1つを紹介します。
*禁欲侵害効果*
禁欲侵害効果(Abstinence Violation Effect)は、
依存症の包括モデルで出てきた
言葉ですね。
まだ、「依存症=過剰な欲求」モデルを
読んでいない人は、リンクにとんでみてください。
禁欲侵害効果とは、何かというと
依存行動をしないというルールを
設定していたにも関わらず、
依存行動をしてしまい
そのルールを破ってしまったと認識した時に
発生する反応です。
特に、依存行動をやめていた時に
(断酒や断ギャンブル等)
再び、依存行動をしてしまったときに
我々は、この禁欲侵害効果の影響を
受けやすくなっています。
禁酒や断ギャンブル等、
なににしても決めていたルールを
破った時の反応はいくつかあります。
依存行動の再開による反応の例
- 自己非難
- 薬物使用をコントロールできない感覚
上記のような反応が頻繁に起こります。
つまり、依存行動をしないと決めていた自分を責め
自分には、依存行動をコントロールできないと
思ってしまうわけですね。
その結果、何が起こるかと言うと
ネガティブな感情が
(恥・罪悪感・失望感・コントロール不能・失敗の感覚)
発生しますよね。
そして、そのネガティブな感情に対処するために
再び依存行動に走り、
リーラプスにつながっていきます。
ネガティブな感情がどのように、
依存行動を引き起こすかについての
記事もあるので、どうぞ。
*スリップで止まる人*
自分の設定したルールを破った時に
その行動の理由付けの仕方によって、
スリップで止まる人とリーラプスまで
戻ってしまう人に違いがあります。
リーラプスになる人の理由付けの特徴
- 内部要因
- 安定要因
- グローバル要因
上記が関係してきますが、
分かりにくいので
例としては、
- 意思の力の欠如
- 基礎疾患の所有
これらをルールを破った依存行動の
理由付けにする人たちは
リーラプスに陥りやすいです。
要するに、自分にはコントロールできないから
依存行動を再びするのは
しょうがないと思っている人達が
リーラプスまでしてしまいがちということですね。
意思の力についての記事も
あるので、気になる人は
読んでみてください。
一方で、スリップで止まる人達は
依存行動をしてルールを破った時に
何を理由付けにしているかと言うと
要因が3つあります
- 外部要因
- 不安定な要因
- 局在的な要因
上記の3つの要因が絡むものを
理由付けにしているといいのですが、
これもわかりにくいので例としては、
- 非常に依存行動が魅力的な状況
上記の例から考えると
もうあの状況下では
依存行動してもしょうがなかったよね
ってことです。
自分が悪いわけではなく、
その一時の状況が悪いわけですね。
なので、それ以外の状況なら
自分でコントロールできるよね
と考えているわけです。
もしくは、その状況を避ければ
自分にはコントロールできる力があると
思っているわけですね。
これらから、パッと思うことは
自己効力感ですかね。
自分にはできる力があると
思うことが大切そうですよね。
自己効力感の記事もあるので、
読んでみてください。
*まとめ*
- スリップは、ちょっとした依存行動
- リーラプスは、前のレベル依存行動に
戻ること - 禁欲侵害効果が、リーラプスを引き起こす
- リーラプスする人たちは、
自分の能力・状態を理由にする傾向がある。 - スリップで止まる人たちは、
外部の影響を依存行動の理由にする傾向がある。
*記事関連のおすすめの本*
「身勝手な世界に生きる真面目過ぎる人たち」
HSPに興味がある人なら、イルセ・サンを知っている人は多そうですが、
HSPで困っていない人にも、
過度な自己嫌悪を和らげる思考のヒントが
この本にはあります。
トレーニングがついているので、
読むだけでなくすぐに実践できます。
禁欲侵害効果を防ぐ、手助けになりえるので
興味のある人は、読んでみてください。