CuriousHunter 依存リハ

好奇心のままに、依存症を探索

多くの資本を持つことが、依存症の回復?【依存症回復の定義】

依存症の回復・リカバリーは、
あまり専門的ではないが、
一般的には、禁欲(禁酒・禁煙・禁薬・禁ギャンブル等)によって
健康・日常生活の向上といったように
表現されることが多いです。

 

ただ、このような依存症回復の言葉に
問題があると指摘があります。

 

そして、現在では
より明確・測定可能な依存症回復の概念が
求められています。

 

ということで、
この記事では、割とシンプルな2つの軸を使った
依存症回復の公式・定義を紹介しますので、
ぜひ、依存症回復に活かしてください。

 

依存症回復とは、何かについての記事が他にもあるので
ぜひ、読んでみてください。

 

curiousquest.hatenablog.com

curiousquest.hatenablog.com

 

 

 

*回復とは*

前述したように、「依存症回復」と言う単語は、
一般的には、禁欲に基づく健康・機能の向上です。
(White, 1998)

 

 

ただ、最近ではこの定義では
スティグマや依存症回復は無いといった
依存症回復の希望・可能性を奪うような
世間の見方を克服しようとしている
流れができています。

 

 

なので、世界的には
依存症における「回復」は、
希望と依存症回復の世間の流れを作り出すために
再定義をしようとしています。
(White, 2007)

 

特に、USA・UKではこの取り組みが進んでいます。
(Substace Abuse and Mental Health Service Administration, 2011; UK Drug Policy Commission, 2008)

 

 

そのためには、依存症における「回復」の定義には
明確差が要求され
明確な依存症回復の定義なしには、
依存症回復支援サービスを個人に合わせて提供できません。

 

 

また、依存症回復を定量化できるようにすることも
求められています。

その方が、金銭的に支援する側も
意味のあることをしていると判断がしやすいです。

 

 

*禁欲・ソーバー・寛解が回復ではない*

多くの依存症回復の定義が
ソーバー・禁欲・寛解と言った言葉が
使われています。

また、時には
依存症回復は、個人の健康・機能の向上と言われたりもします。

 

ただ、これらを依存症回復の指標とすると
どの程度の期間の禁酒・禁薬
または、どの程度・どのような健康レベルを手にしたら良いのか
明確な線が引きにくいです。

 

例えば、依存症回復のために
健康的な食事・運動をし健康を目指すが
もし、仮にそれらのガイドラインに従えなかったら
個人の健康の向上を最大化できていないとされ
依存症回復としては、失敗とみなされるか?

 

他の例としては、
たばこを吸い続けていたら、
その人は依存症から回復しているとは言えないのか?

 

もし上記の例がそうであるならば、
大多数の依存症ではないが
たばこを吸っている人・運動していない人・
健康的な食事をしていない人たちと比較すると、
依存症の人に対する
健康に対する基準が高すぎるかもしれませんよね。

 

その結果、
依存症回復の基準は高いと思われたり
難しいと考えられ、依存症回復の希望を
奪っている可能性がありそうですよね。

 

 

なので、
新たな依存症回復を構成するために
最も重要な点は、
依存行動・物質を使用しないといった概念の先にある
生理学的・心理学的・社会的な多様な側面の向上
組み込むことが求められています。

 

なぜ、上記の幅広い3つの視点を
依存症回復に組み込みたいかと言うと
この上記の3つが寛解・ソーバーの成功に関連していると
考えられているからです。

 

ということで、
禁欲・ソーバー・寛解を指標とする
依存症回復の複雑さを改善するために
上記の3つの側面(生理学的・心理学的・社会的)の向上を利用した
依存症回復を定義しようとしています。

 

以前、依存症回復が
単なる断酒・断薬・断ギャンブルではないという記事で
依存症回復の例を挙げたので
その記事も読んでみてください。

 

curiousquest.hatenablog.com

 

 

 

*回復資本*

最近の依存症回復の候補になっているものは
回復資本(Recovery Capital)です。

 

回復資本は、依存症回復を始める・維持するために利用される
内部・外部のリソースの総量です。
(Granfield & Cloud, 2004)

 

まだ、回復資本について
よくわからない人は、以下の記事を確認してください。

 

curiousquest.hatenablog.com

 

 

回復資本の例

  • 身体的健康
  • 精神的健康
  • 住居
  • 人間関係
  • 教育
  • 就労
  • 人生の意味・目的

 

これらの資本をより多く持っているほど
依存症回復の開始・維持が発生しやすいと考えられています。

White & Cloud (2008)では、
依存症治療の計画に、この回復資本を組み込むべきだと
提言しています。

 

なぜかというと
回復資本は、依存症の重症度によって減っていき

回復資本が増えるほど、
依存症の寛解(健康・機能の向上)がより安定・長期的になると考えられているためです。

Edwards & Gross, 1976 を基に作成

 

Kelly & Hoeppner, 2014 を基に作成

 

依存症関連の問題は、回復資本の要素に問題が発生します。

 

例えば、
職を失ったり、家を失ったり、健康被害の発生、
人間関係の悪化、学業の不振・人生の意味・目的の喪失が
挙げられます。

 

 

つまり、依存症の重症度が高いほど
依存症の回復・寛解に必要な回復資本が減っていきます

 

 

ということで、
依存症の回復を重症度・寛解度といった
測りにくく、基準の作りにくく、単一的な側面を使用せずに
回復資本を使用した多面的な
依存症回復の定義が必要
と考えられています。

 

また、依存行動をしたら
その時点で依存症は治っていないという希望の少ない
依存物質や依存行動の実行を指標としていないため
私的には、回復できる希望を示せている気がします。

 

要は、
心身ともに健康・衣食住の確保・人間関係の構築・人生の目的を持つことができたら
依存症関連の問題も少なく、依存症の重症度も低く
日常生活を送るには十分回復したと言えそうな
そんな希望が、私には見えてきます。

 

 

*資本で戦う依存症*

なぜ、回復資本があると良いのかは
より資本を持っていると
ストレスの絶対値を減らすことができ、
また、ストレスの状況下でも
対処する能力が向上しているためです。

 

ストレス・コーピング理論(Folkman, 1984)と言うのが存在し、
ストレスをどのように解釈し
どのように対処するかを表しています。

 

そして、依存症では
ストレスに敏感で、よりストレスを感じやすいため
ストレスホルモンがより出て
依存症の再発を引き起こしていきます

 

ただ、回復資本をたくさん持っていると
ストレスに対して対処する武器を持つことになり
ストレスに適応する力をくれます。

 

その結果、依存症回復への道が開始しやすく
長く続けられ、依存症の寛解の可能性が上がり
再び健康に日常生活で機能できるようになります。

 

やはり、どこの依存症の話をしても
ストレスが付きまといますね。

ぜひ、ストレスについての記事も併せて読んでみてください。

 

curiousquest.hatenablog.com

 

 

 

まだまだ、回復資本と依存症回復の議論の余地は腐るほどあり
この回復資本が正しいというわけではありません。

ただ、ソーバーを目指すこともいいですが
ぜひ、回復資本を増やしてみてください。

 

 

*まとめ*

  • 依存症回復の定義は、ハードルが高く
    明確な線も引きにくく、回復への希望を奪っている
  • より、明確・定量化・希望のある
    依存症の定義が必要
  • ソーバー・禁欲・寛解の一歩先の依存症回復の定義が必要
  • 回復資本で依存症回復のターゲットにする。
  • 回復資本をたくさん持つことが
    依存症の重症度・問題を減らし
    依存症寛解(健康・機能の向上)を促し
    日常生活を送れるようになる。

 

*記事関連のおすすめの本*

今回は、残念ながら
回復資本と関連する本を読んだとこがありません。

 

ただ、1つ言えるとしたら
マズローの欲求の話が、この回復資本と関連しています。

回復資本のそれぞれが、マズローの欲求の段階に重なりそうかも
って思っていたら大正解です。