アルコール依存症の5分類【依存症の複雑性】
アルコール依存症は非常に複雑で、依存症は様々な人によって
いろんな表現をされてきました。
実際に、研究・臨床現場でも
アルコール依存症の人の不均一性がみられると
言われています。
そして、家族歴・併存疾患・長期予後・遺伝・環境といった
多様な依存症の生物・心理・社会的な要素を考慮し
もう少し、アルコール依存症を細かくグループごとに分けた方が良いのでは
と言った流れができ、5つのアルコール依存症のタイプを作った人がいます。
と言うことで、そのアルコール依存症の5つのタイプを解説します。
*アルコール依存症の5つの分類*
このアルコール依存症のサブタイプを出すにあたって
考慮された指標がいくつかあります。
- DSM-Ⅳ(診断基準)のアルコール依存・乱用の診断基準
- 発症年齢
- 家族のアルコール依存症の有無
- 内在化障害(気分変調症・不安・鬱・双極性障害・パニック障害・強迫性障害)
- 外在化障害(非社会性パーソナリティ障害・愛着障害・)
- 他の物質使用障害
※他にもいろいろ
これらを考慮して、モデルを作って
アルコール依存症のサブタイプを作ると
5つになり、その5つが以下です。
(Moss et al., 2007)
- ヤングアダルトサブタイプ(子供と大人の間)
- 機能的サブタイプ
- 中間家族性サブタイプ
- ヤング非社会サブタイプ
- 慢性重度サブタイプ
サブタイプの名前は直訳ですが
これから1つずつ特徴を紹介するので
許してください。
*若いアルコール依存症*
まずは、1つ目のヤングアダルトサブタイプですね。
特徴
- 最も割合が多い(31.5%)
- 若い(平均年齢:24.5歳)
- 飲酒開始年齢が早い(16.9歳)
- 比較的若い発症年齢(19.6歳)
- 低い非社会性パーソナリティ障害(<1%)
- 中等度の確率で家族のアルコール依存(~22%)
- 比較的低い併発疾患
- 中等度の確率で喫煙者(~32%)
- 中等度の確率で大麻乱用(~25%)
- 男性の割合が2.5倍
- ~75%が未婚
- 54%が正規雇用
- 36.5%が学生
- 比較的飲酒日は少ない(~143日/年)
- 73%の飲酒日で5杯以上飲む
- 13.8杯が1日の最大飲酒量の平均
- 8.7%が飲酒を理由で助けを求めた。
- 助けを求める場所は12ステップ
このグループは、比較的若く学生が多いです。
もしかしたら、まだまだ飲酒問題の理解が浅い可能性がありそうですよね。
また、発達段階であるためアルコールの影響を受けやすく
依存症になりやすい傾向があるのかもしれませんね。
そして、飲酒日は比較的多くはないが
いざ飲むぞ!となるとたくさん飲むような
学生ならではの傾向がみられている印象ですね。
*日常生活を送れるアルコール依存*
2つ目は、機能性サブタイプです。
特徴
- 19・4%の割合
- 年齢が高い(~41歳)
- 飲酒開始年齢が遅い(18.5歳)
- アルコール依存の発症が遅い(37歳)
- 低い非社会性パーソナリティ障害(<1%)
- 中等度の確率で家族のアルコール依存症(~31%)
- 中等度の確率で大うつ病(~24%)
- 低い不安障害の割合
- 中等度の確率で喫煙者(~43%)
- 低い確率で他の物質使用障害
- 低い刑事問題
- 中等度の確率で危険飲酒(~35%)
- 問題を抱えていても飲酒することが最も少ないグループ(~14%)
- アルコールが原因で非活動的になる確率が最も低いグループ(~7%)
- 60%が男性
- 50%が既婚
- 62%が正規雇用
- 3.6%が学生
- 26%が大卒以上
- 退職割合が一番高いグループ(~5%)
- 最も世帯年収が高いグループ($59.576)
- 2日に一回の飲酒(~181日/年)
- 54%の飲酒日で5杯以上の飲酒
- 1日の最大飲酒量の平均が10杯
- 17%がアルコール関連の助けを求める
- 12ステップとプライベートでプロフェッショナルの治療を受ける
印象としては、依存症の家族歴もなく・裕福・家族支援あり・良い教育を受け
アルコールの使用年齢が遅く、発症しても割と
日常生活をしっかり送ろうとアルコールの乱用も少ないって感じですかね。
*ネガティブな感情と家族*
3つ目は、中間家族性サブタイプです。
特徴
- 18.8%の割合
- 年齢は中間層(~38歳)
- 飲酒開始年齢:17歳
- アルコール依存の発症は、飲酒開始時から長期間かかる(発症年齢:32歳)
- 中等割合の非社会性パーソナリティ障害(~12.5%)
- 最も家族のアルコール依存症の割合が多いグループ(~47%)
- 半分ほど(~47%)が大うつ病
- ~22%が双極性障害
- ~19%が強迫性障害
- 15%が不安障害
- 57%が喫煙者
- 他の物質使用障害の併発が著しい(大麻:~25%、コカイン:~20%)
- 64%が男性
- 38%が既婚
- 21%が離婚
- 20%が大卒以上
- 68%が正規雇用(最も就労率が高い)
- 世帯収入は$50,000/年
- 172日/年の飲酒日数
- 54%の飲酒日で5杯以上の飲酒
- 1回の最大飲酒量の平均は9.8杯
- 27%が自助グループ・特定の治療プログラム・デトックス・プラべートケアに参加
印象としては、家族等の遺伝の影響を受け
さらに、他の精神疾患の併発が多いが
アルコール依存の発症が遅く
グループ2(機能性サブタイプ)と同様の飲酒量・多量飲酒レベルで、
比較的少ない
*若い非社会的ヘビードリンカー*
4つ目は、ヤング反社会サブタイプ
特徴
- 21.1%の割合
- 比較的若い大人(年齢:26.4歳)
- 最も飲酒開始年齢が早い(15.5歳)
- 最も依存症発症時期が早い(年齢:18.4歳)
- 非社会性パーソナリティ障害の併発が最も多い(~54%)
- 約52.5%の人がアルコール依存の家族持ち
- もっとも、飲酒量・大量飲酒日が多い
- 喫煙率が高い(~77%)
- 他の物質使用障害も高いグループ(大麻:~66%、覚せい剤:7.8%、コカイン:~29%:オピオイド:22%)
- 最も喫煙者が多いグループ(~77%)
- 37%が大うつ病
- 33%双極性障害の経験
- ~14%が社交不安障害
- 19%が強迫性障害
- ~14%が子供の時(15歳以下)に大うつ病を経験(最も多いグループ)
- 76%が男性
- 15.3%が既婚
- 64%が未婚
- 最も教育レベルが高い人が最も少ない(7.6%)
- 47%が正規雇用
- 13.4%が学生
- 世帯年収が$31.988
- ~201日の飲酒日/年
- 80%の飲酒日で5杯以上の飲酒
- 最大で17.1杯で最も多いグループ
- 35%が飲酒問題に助けを求め、最もプライベートに治療を受ける
パッと聞いた感じ、家族の遺伝の影響を受けながら
精神疾患の経験も多く、非社会的行動も多く
飲酒経験が早く、早めにアルコール依存症を発症し
学校・社会生活もなかなかうまくいかず
飲酒量も多いって感じですかね。
*重症度が高いグループ*
最後の5つ目は、慢性重度サブタイプです。
特徴
- 最も割合が小さいグループ(9.2%)
- 年齢層が高い(年齢:37.8年)
- 飲酒開始時期が早い(年齢:15.9歳)
- 依存症発症時期が遅い(~29歳)
- 非社会性パーソナリティ障害の併発率が高い(47%)
- 家族のアルコール依存症歴(~77%)
- 飲酒量・大量飲酒日がサブタイプ4(ヤング非社会性)と同等レベル
- 最も大うつ病(~55%)・気分変調症・(~25%)・双極性障害(~34%)・不安障害(~24%)・社会不安障害(~26%)・パニック障害(~17%)の割合が高いグループ
- 40%が強迫性障害
- ~75%が喫煙者
- 58%が大麻使用障害
- 39%がコカイン使用障害
- 24%がオピオイド使用障害
- アルコール依存の診断基準を最も多く満たすグループ
- 65%が男性
- 28.7%が既婚
- ~8.6%が離婚
- 9%が大卒以上
- 最も低い正規雇用の就労率(~43%)
- ~7.6%が無職
- 最も多い飲酒日数(247.5日)
- 69%の飲酒日(172日)で5杯以上飲酒
- 最大飲酒量の平均は15.4杯
- 66%が飲酒問題で助けを求め、入院しての治療を最も受けているグループ。
- 最も自助グループに参加しているグループ
印象としては、精神疾患・他の物質使用障害の併発が多く
アルコール依存の重症度も高く
飲酒量が最も多く、アルコール関係の問題を
多く経験するグループですかね。
※アメリカの研究なので日本でも似たような結果になるかはわかりませんが
このような分類が今後の治療現場・研究現場に応用され
新たな知見が生まれるといいですよね。
*まとめ*
- アルコール依存症は多様で5つに分類できる?
- ヤングアダルトサブタイプ(子供と大人の間)
- 機能的サブタイプ
- 中間家族性サブタイプ
- ヤング非社会サブタイプ
- 慢性重度サブタイプ
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アルコール依存の分類の本はなかなかないので
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