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アルコールアノニマス(AA)にエビデンスはあるの?【アルコール依存症治療】自助グループ【12ステップ】

依存症治療として、薬物治療・心理療法自助グループ等がありますが
人によっては、好き嫌いが分かれそうなのが
12ステップベースのアルコールアノニマス(AA)という
自助グループがあります。

 

 

12ステップは、アルコールに対して
自分は無力であると認め、
他のパワーの源であるハイヤーパワーに
身をゆだねてることが根本のアイディアになっており、
依存症の回復はスピリチュアリティの目覚めによって
達成されると言われています。
(Kelly, 2017)

 

 

 

もちろん、12ステップというだけあって
他にも重要になる要素がありますが、
上記のような感じが、宗教っぽい
スピリチュアルな感じで批判されがちです。

 

 

そして、AAに本当に効果があるのか
疑問に思う人も少なくないと思います。
事実、私もスピリチュアリティーな部分は
なじみがなく、つかみにくい感じがしてました。

 

 

似たようなことを思う人も多く、
歴史も長く、世界的に広がっているAAは
多くの研究者の的にもなり、いろいろ研究されてきたので、
その結果をいくつか紹介し、
実際に、AAって効果あるのか解説していきます。
どんなメカニズムで、依存行動が変わるのか
解説していきます。

 

 

curiousquest.hatenablog.com

 

 

 

 

*AAに効果あるの?*

早速、本題に行きます。
AAに効果あるのか?

 

80年以上の長い歴史のあるAAでいくつか、
信頼度が高いメタアナリシス・システマティックレビューが
ありますが、割とどれも古いものですが、
2020年に再び、AAの効果を検証した
ステマティックレビューが出ました。

 

そのレビューでは、
マニュアル化されているAA・12ステップが、
他の治療法(認知行動療法(CBT)・動機付け面接(MET))と
比較して、どれほどの効果があるのか検証しました。

 

 

 

*AA・12ステップが他の治療法よりも優れている
もしくは他の治療法と同等の効果がある項目*

  • 参加者のうち持続断酒の割合に対して優れた効果。
    (12・24・36か月後も効果は持続)
  • 24・36か月後の断酒日の割合に対して高い効果。
    (12か月では、同等の効果)
  • 6か月後の断酒期間の長さに対して同等の効果。
  • 12か月後の飲酒日の飲酒量対して同等の効果。
  • 12か月後の大量飲酒に対して同等の効果。
  • 12か月後のアルコール関連事件に対して同等の効果。
    (Kelly et al., 2020)

 

 

と言う感じに、CBT・METのような確立されている治療法と
同等・もしくは、それよりも良い効果を
マニュアル化されたAA・12ステップにはあるわけです。

 

 

 

*AA・12ステップが劣る?*

AA・12ステップがうまくいきそうな効果が出ていますが、
もちろん、CBT・METよりも効果が低かったと
報告している研究もあります。

 

AA・12ステップが他の治療よりも
劣る場合として可能性があることが、
二重診断です。
(Lydecker, 2010)


要するに、アルコール依存症
他の精神疾患(うつ・不安・気分障害等)を
発症している場合です。

 

考えられる理由として、
アルコール依存症の診断基準を満たしているが
主な問題が精神疾患の場合は、
AAは、うまくいかないかもしれないと言われています。
(Kelly, 2003)

 

 

しかし、メタアナリシス(信頼度が高い)では、
AA・12ステッププログラムは、
精神疾患の併発をしていた場合でも
そうでいない人たちと比べて
同等に良い効果を得られると報告しています。
(Tonigan, 2018)

 

まだまだ、研究の必要性がありそうですが
二重診断に対しても他の治療と
同等の効果があっても良さそうな雰囲気はありますね。

 

 

*なぜ、AAで依存行動が変わるの?*

AA・12ステップの効果があることが
分かってきましたが、
なぜ、AA・12ステップによって
依存行動が変わるのでしょうか。

 

 

AAのガイドラインのようなビッグブックによると
スピリチュアリティへの目覚めが
主なメカニズムであると言われています。

 

実際は、どうなのか?
研究によると、スピリチュアリティへの目覚めが
回復のカギになるのは
アルコール依存の重症度が高い
AAに出席する少数の人たちにのみである
と報告されています。
(Kelly, 2017)

 

上記の事から言えそうなことは、
効果があるAAの回復のメカニズムは、
スピリチュアリティだけでなく、
それぞれ人によって、AAによる
アルコール依存症からの回復の
カニズムは、異なるという可能性
示しているかもしれません。

 

例えば、
男性においては、AAは
スリップ・リラプスのハイリスクな場面において
飲酒以外の方法での対処法を学べる場として機能する
と言われています。
(Kelly, 2017)

 

 

一方で、女性の場合は
AAは、スリップ・リラプスを引き起こす
ネガティブな感情を飲酒以外の方法で対処する方法を
学べる場として機能すると言われています。
(Kelly, 2015)

 

 

さらに、30歳以上の成人では
AAは、危険・多量飲酒をする人たちから
距離を取ることを手助けし
断酒を志す同じ仲間のコミュニティー
手に入れる場として機能します。
(Kelly, 2017)

 

 

ただ、18-29歳の成人においては
AAは、危険・多量飲酒をするコミュニティーから
抜け出すことをより手助けする一方で
新たなネットワークを作るうえでは機能しにくい
言われています。
(Kelly, 2017)

 

Hopper et al(2014)によると、この年齢による
AAの利点の差は、
AAに若い人たちは、より危険な飲み方をする友達が多く
AAには、若い参加者が少ないことが原因だろうと
言われています。

 

 

さらに、断酒に対する自己効力感の向上であったり、
アルコールの渇望の減少・薬物を欲する衝動性の減少
といったいろんな効果がAAにはあると言われます。
(Kelly, 2017)

 

 

 

と言う感じで、AAにおいて
スピリチュアリティが鍵である事実もありながら、
人によって、AAから得られる依存症回復に役立つ
利点が異なる可能性がありそうですね。

 

 

 

*まとめ*

  • AA・12ステップは、確立された他の治療法と
    同等・もしくはそれ以上の効果が
    断酒に対してある。
  • 二重診断の場合でもAAは、効果がある
  • AAでの依存症回復において
    スピリチュアリティが重要になるのは、
    重症度の高い少数の人
  • 年齢・性別・依存症の重症度によって
    AAから回復のメカニズムが異なる。

 

 

 

*記事関連おすすめの本*

この記事には、この本しか似合いませんね。


おそらく、これが日本語版だと思います。
もし、すでに日本でビッグブック使っている人がいましたら、
この本で合っている・間違っている等
教えてください。