CuriousHunter 依存リハ

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アルコールの嘘?【リラプスプリベンション】依存症再発予防

依存症再発(リラプス)を防ごうと開発された
リラプスプリベンションがありますが、
今回はその1つの方法である
薬物使用の神話・プラセボ効果の除去について
例を出しながら解説していきます。

 

 

 

*薬物のプラセボ効果

この世の中にたくさん薬・薬物がありますが
それらの効果単体だけでは、説明できないような効果が現れることが
度々あります。

 

例えば、抗不安薬を摂取すると
薬の効果が出るよりも早く
症状の減少が発生したり
アルコールのような薬物では
ノンアルコールドリンクでもほろ酔いになる現象が
観察されます。

 

なぜ、このようなことが起こるのか。
それが、プラセボ効果の影響です。

 

プラセボ効果は、個人の持つ考え・信条によって発生する
実際の治療・薬の効果とは無関係な効果です。

 

 

プラセボのメカニズムとしては、
条件付けと期待が関わっていると考えられています。

 

依存症も古典的条件付け・オペラント条件付けによって説明されることもあり
また、依存症の3つのステージで分けた場合の
3番目のステージである「没頭・期待ステージ」と関わってそうな印象がありますね。

これは、繰り返しの薬物使用による学習の結果
認知機能に変化・思考の偏りができ、より薬物の効果を期待・渇望し
日常の生活の決断・思考が薬物中心になった状態です。

 

この依存症の3つのステージについては
また今度、詳しく説明します。

 

 

*アルコールによる効果*

アルコールのプラセボ効果の前に
アルコールが引き起こす影響を
見ていきます。

 

アルコールの血中濃度を参考にします。

  • 0.05gm%
    ー 性格の変化
    ー 不安からの解放
    ー 社会生活の潤滑油的効果(おしゃべり・積極性・表情豊か)
    ー 脱抑制
  • 0.08gm%
    ー 重度の脱抑制(パーティーピーポー的な感じ)
    ー 判断の傷害
    ー 認知機能の傷害
    ー 運動機能の傷害
  • 0.15gm%
    ー 運動失調(ろれつが回らない)
    ー 重度の運動障害
    ー 反応時間の延長
    ー ブラックアウト
  • 0.30gm%
    ー 鎮静・催眠状態・昏迷(意識はある)
    ー 全身麻酔的状態に近い
    ー 昏睡状態に近い
  • 0.40gm%
    ー 50%の人には致死量
    (Koob & Moal, 2006)

 

血中アルコール濃度は個人の要素によって
アルコール摂取量が同じでも変わってきます。

ただ、少量であればポジティブな効果が望めそうな印象ですよね。

 

しかし、このポジティブそうなアルコールの効果に
プラセボ効果が混ざっているのでは?って話ですね。

 

 

*アルコールのプラセボ効果

1つ目は、抗不安効果ですが
社会不安障害と診断された人たちを対象とした実験では
アルコールを摂取した方が摂取しないときよりも
大きな不安の減少がみられ、
プラセボグループ(アルコールの無い飲み物)も同様に
アルコールを摂取しないグループと比較して
有意に不安の減少がみられました。
(Abrams et al., 2001)

 

さらに、
アルコール摂取グループとプラセボグループ(アルコールの無い飲み物)を比較すると
不安の減少幅に有意な差は見られませんでした

 

同様の傾向がアルコールのポジティブ思考にも見られ
アルコールを摂取してもプラセボだとしても
ポジティブ思考がみられ、2つの条件に有意な差は見られませんでした。

 

 

 

また、他の実験では
プラセボの飲酒によって、脳の活動が変わったと報告。
そして、その脳活動の活性化は酔いの感覚と正の相関が認められている場所です。
(Kirsch et al., 2023)

つまり、お酒を飲まずともお酒を飲んだと思うと
主観的には酔いを感じる可能性があるわけです。

 

 

 

 

もう一押し。

2020年のBodndarさん達の研究では、
6つのグループを用意しました。

そして、アルコール/プラセボを1人/集団で摂取した時の変化を比較しました。

その結果

  • アルコールを飲んでいると信じている場合は、
    実際にはアルコールでも・プラセボだとしても
    社会的な行動(おしゃべり・シャイ・自信・好奇心・社交性・自発性)と
    主観的感覚(思考の明確さ・緊張感・合理性・酔い・衝動性・おなかの調子)に差がない
  • 集団の中でのアルコールを飲んでいると思い込んみ
    本当にアルコールを飲んでいる状況と
    集団の中でプラセボを飲まされていると信じ込まされて、
    実際にはアルコールを飲んでいる状況では
    異なるパターンが社会的な行動と主観的感覚にみられる。
    (=思い込みでプラセボだと思うと、アルコールを摂取していても
    酔っていないような状況になる)

 

と言う感じで、
アルコールを飲んでいようが飲まなかろうが
飲んでいると思っていると飲んでいる時と同じ変化が現れ、
集団の中でのアルコールを飲んでいるという思い込みは
よりアルコールの作用に影響を与える可能性がある。

 

 

*アルコール効果は期待・環境に依存?*

もちろん、アルコール自体が引き起こすことができる効果もあります。
多量に急速に飲酒をして死に至る場合もあります。

 

ただ、アルコールの効果に
我々の「思い込み」と「状況」の影響があることを念頭に入れ
アルコールに期待しすぎない思考を手に入れる。
そんなことが依存症再発予防の1つである
リラプスプリベンションで行われます。

 

「状況」で言えば、集団で他の人とお酒を飲む場合ですよね。
他の人が一緒であれば、お酒を飲んでいるのだから
それ相応の変化の言い訳にもなります。

逆に、お酒を飲んでいないのにお酒を飲んでいるかのような変化は
他の人に変に思われるかもしれません。

 

私自身もお酒の効果がその場の「状況」に影響を受けた経験があります。
酔っていても、問題に巻き込まれた時は急に酔いがさめた感覚になり
急に冷静になり真面目に対応策を考えていました。

 

 

思い込みだけでなく、アルコールの神話も取り除くことが
リラプスプリベンションで行われるので
また、今度アルコールの神話について書きます。

 

 

*まとめ*

  • アルコールの効果は、「思い込み」とその場の「状況」の影響を受ける可能性がある。
  • リラプスプリベンションとして
    アルコールのプラセボ効果を除去し
    アルコールに期待をし過ぎない思考を手に入れいる。

 

*記事関連おすすめの本*

関連の本が思いつかないので、関連記事を張っておきます。

 

curiousquest.hatenablog.com