CuriousHunter 依存リハ

好奇心のままに、依存症を探索

お酒の値上げをして、酒害を減らす? アルコール政策

基本的には、アルコールが健康に害を与えることを
無視することが難しくなってきています。

もちろん、個人で飲まないという判断ができるように情報を与えることも大切かもしれませんが
政策で人々ができるだけお酒を飲まない判断を促す手段もありそうですよね。

 

実際に、私がいるイギリスの一部であるスコットランド
お酒の法律を変えて、効果判定をしたのでその紹介をします。

 

その前に、再びお酒の情報を少し出しますね。

 

*飲む量を少し減らすだけでも良い?*

もちろん、お酒を飲まない方が健康への害は減ります。
実際に、どれほどのお酒なら許容範囲なのかと言う話を
前の記事で書いたので読んでみてください。

結論として、ほぼ飲まないに等しい量しか許容されていません。

 

curiousquest.hatenablog.com

 

 

ただ、急にお酒を全く飲まないという
大きなライフスタイルの変化は難しそうですよね。

 

例えば、運動は健康に良いからと言って
運動していない人が、急に毎日30分ジョギングする人がどれほどいるかと言うと
まあ、ほとんどいないでしょう。

なので、たいていが少しずつ
短時間の散歩から始めて、少しずつ距離・時間・速さを向上させていきます。

この少しの運動量の増加ですらも我々の健康を向上させます。

 

お酒でも、同じことが言えます。

ほんの少し飲酒量を減らすだけで、
被害が大幅に減ります。

 

Rehmさん達(2011)の研究の図を持ってきました。

縦軸が死亡リスクで
横軸が毎日のアルコールの摂取量です。

Rehm et al., 2011 を基に作成


見てもらうとわかるように
アルコールを摂取すればするほど
指数関数的に死亡リスクが増加します。

アルコール摂取と死亡リスクは直線的な関係ではないわけです。

そのため、たくさんアルコールを摂取している人が
ほんの少しアルコール摂取量を減らすだけでも
大幅に死亡リスクを減らすことができます。

 

例えば、毎日100gのアルコール摂取の人が
毎日の量を80gに減らすだけでも
死亡リスクが16%から、半分の8%にまで減少します。

 

 

 

*アルコール広告の規制?*

アルコールの量を少し減らすだけでも、
我々の健康へのダメージを大幅に減らせそうですよね。

 

その一歩として、何ができるのか。

まずは、広告の規制かもしれませんね。

フランスでは、1991年からアルコール広告の規制が始まっています。

 

実際に、広告がどれほど飲酒に影響を与えているのか。

例えば、Stautzさん達(2016)によると
アルコール広告の飲酒量への即時効果が
少量ではあるものの、あると報告しています。

飲酒量で行くと
男性では、おおよそ日本酒のお猪口一杯ぶんから
チューハイのレギュラー缶一本ほど増えます。

そして、この研究の参加者はすべてが学生なので
よりアルコール使用の危険性が高い若者を守るには
広告の規制の必要性がありそうですよね。

 

ただ、アルコールは我々の文化のどこにでもあり
広告の手段も多様であり、企業はいつでも穴をついてきます。

 

文化で言えば、
成人式のような大人になった証としての飲酒
スポーツで優勝とアルコールの関係
結婚式のお祝い事にもお酒が付きまといます。

 

広告では、サッカーやラグビーのスポーツ大会のスポンサーをし
企業の名前自体を使っていなくとも、
企業の特徴的なロゴやサインと似たような言葉・形を模倣し
広告を出すことに成功しています。

他にも、アルコールの広告に性的なものや
有名人の起用によってアルコールの宣伝広告を高めていそうですよね。

 

少しでも酒害を減らすために
広告だけでなく、文化も変わっていく必要性がありそうですよね。

 

 

*値上げが飲酒量を減らす?*

前の記事で、依存症は選択の問題なのでは?みたいな話をしましたが
そこで、お酒やたばこの値段が高くなれば
買うことを止める選択をすることがある話をしましたが、
実際に、アルコールの値段を上げた国があります。

それが、スコットランドです。

 

curiousquest.hatenablog.com

 

 

スコットランドでのアルコールの値上げの結果を少し紹介します。

2018年からスコットランドでは、アルコールの値段に下限を設けました。
つまり、安すぎるお酒の値上げです。

 

どのくらい差ができたかと言うと
一日一本のビールを1週間で500円ぐらいだったものが
1500円ほどに値上がりしました。

 

そして、2024年にこの施策は廃止になる予定ですが、
インフレの影響を受け、今後さらに値上げを検討中です。

 

実際に、どんな効果があったのか。

  • 13.4%のアルコールが原因での死亡の減少
  • 4.1%の病院への入院の減少
  • 5%の急性アルコール中毒等での死亡増加
  • 3%の飲酒量の減少

 

パッと見、結構良さそうですよね。

少しの飲酒量が減るだけでも、大きく酒害を減らせるので
たかが、3%の飲酒量が減っているだけでも
アルコールが原因での死亡は13%と大幅に減っています。

 

残念ながら、急性アルコール中毒のような死亡が増加しているが
おそらく、コロナ渦の影響があると考えられており、

また、このアルコールの値上げ作戦は
特に危険な飲み方(飲酒量が過剰に多い)をする人には効果がない可能性が指摘されています。

 

なので、やはり重症度の高いアルコール依存症を持つ人達が
病院に行きやすい環境を作りつつも
個人個人が責任のみ頼った飲酒環境ではなく、
国がお酒の被害を認め、国レベルで働きかけ、人々がより良い飲酒に関する選択をできるように促す政策を打つ重要性がありそうですよね。

 

 

*まとめ*

  • 少しの飲酒量の減少が
    大幅な健康被害の減少
  • 広告・文化によって飲酒が促されている
    環境を変える必要性がある
  • お酒の値上げをすると
    酒害を大幅に減らせる可能性がある。