CuriousHunter 依存リハ

好奇心のままに、依存症を探索

アルコールは体に悪い・良い? お酒の安全な量とはない?

私の住んでいるイギリスでは、コロナ渦で2020年
アルコールによる死者数が過去最大になりました。

お酒の売り上げも30%も増加したと言われています。

 

さらに、科学者の中にはアルコールが一番被害を生む薬物だと主張している人もいます。
その人の自伝があるのでリンク張っておきます。
依存症の事を勉強している人は、この人を知らないという人はいないだろうというぐらい
すっごい有名人です。

Nutt Uncut

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ということで、お酒が実際に健康に良いのか悪いのか
見ていきます。

 

*アルコールの神話*

アルコールは、少しなら健康に良いと言われていたりしていますが、
本当にそうなのでしょうか。

 

若干、確かに少しであれば健康に良い面がありますが、
全体を見るとお酒が体に悪いことがわかります。

例えば、Whiteさんたち(2001)の研究で
アルコールの摂取量と死亡リスクの関係を調べました。

そして、色々な病気のリスクとアルコール摂取量の関係を
年齢別に計算したモデルがあります。

例えば、虚血性心疾患では以下のような感じになっています。

White IR et al., MBJ. 2002 を基に作成

相対リスクとは、お酒を飲まない人たちの病気の発症リスクを1とした時の
お酒を飲む人たちの病気の発症のリスクです。

虚血性心疾患では、確かに少量の飲酒量では
アルコールの摂取により発生リスクが抑えられていますが、
飲酒量がふえるにつれ、お酒を飲まない人と比べて
お酒を飲む人の病気の発症リスクは
男性ではほぼ変わらないほどに、
そして、女性では発症リスクがどんどん高くなっています。

 

他の病気とアルコールの摂取量の関係はどうでしょうか。

実は、下記の病気にすべてにおいて、
アルコールの摂取によって
発症リスクが年齢を重ねるごとに、
どんどんと上昇していきます。

他の病気のリストとしか以下があります。

  • 口唇・咽頭・口腔がん(最大相対リスク=約5倍)
  • 食道がん(最大相対リスク=約4倍)
  • 大腸がん(最大相対リスク=約4倍)
  • 直腸がん(最大相対リスク=約5倍(女性))
  • 肝臓がん(最大相対リスク=約2倍)
  • 喉頭がん(最大相対リスク=約2倍)
  • 乳がん(最大相対リスク=約2倍)
  • 本態性高血圧(最大相対リスク=約4倍)
  • 虚血脳卒中(最大相対リスク=約1.5倍)
  • 出血性脳卒中(最大相対リスク=約4倍)
  • 肝硬変(最大相対リスク=約4倍)
  • 慢性肝疾患(最大相対リスク=約2倍)
  • 慢性膵炎(最大相対リスク=約3倍)
  • 傷害(最大相対リスク=約3.5倍)

 

実際に、すべてのグラフが見れるように
リンク張っておきます。
F2.large.jpg (1199×1280) (bmj.com)

 

ということで、お酒が健康に良いという話は
神話に近そうですよね。

これほど多くの病気において、お酒の摂取によって
発症リスクが何倍にも上がるにもかかわらずに
少量の飲酒量による、かすかな虚血性心疾患の発症リスク減少を基に
お酒が健康に良いと言ってしまうのは
無理がありそうですよね。

 

*飲酒量に安全な量はあるの?*

上記の話によって、
アルコールと癌の関連が良く分かったと思います。

実際に、アルコールをどのくらい飲むと
発がんリスクが上がるのか。

 

もちろん、お酒という飲み物自体の中身にも
発がん性のものが入っていますが、
それよりも、発がん性のある物質として多くは言っているのは
エタノールアセトアルデヒドです。
How alcohol damages stem cells and increases cancer risk – new research (theconversation.com)

 

この2つがアルコール摂取による癌のリスクを上げる
大きな要因と考えられています。

 

では、どのくらいのアルコール摂取なら安全なのか。

面白い話があり、仮にエタノール食品添加物として取り扱った場合
どの量であるならば、食品添加物として安全であるのかと言う話があり、
ヨーロッパのThe Europe Food Standards Authority のガイダンスに従うと
毎日50ミリグラムのエタノールなら良いとされています。

それすなわち、年間18gのエタノールが最大の許容量です。

これがどのくらいなのか?
1年で、酎ハイ(7%)で中ジョッキ(320ml)1杯分ほどです。

ビールであれば、中ビン(500ml)1本ほどです。コップであれば、2~3杯程度ですかね。

 

これは、一日の許容量ではありません。
年間に摂取していい量が、1~2杯です。

これは、アルコールが文化として浸透している社会からすれば
ほぼ、アルコールの安全な許容量はゼロに等しいかもしれませんね。

 

*アルコールで救われる?殺される?*

最後に、アルコールによって死んでしまった人たちと
アルコールによって命を救われた人たちの割合を
比べたものがあるので紹介します。

私のいるイギリスの話なのですが、
2005年のデータがあります。

 

Lisa et al., 2008 を基に作成

女性も同様の結果になっていますが、
基本的に、アルコールが起因しているだろう死亡の方が
アルコールによる死亡予防よりも圧倒的に多くなっており、
特に、若い人たちの死亡割合が比較的高いです。

 

最近、いろんな国でアルコールの摂取量の推奨の変更が起きていますね。

政府とお酒を売る企業が繋がりを持っていることがあり
なかなか規制に動くことは難しそうですが、
果たして、本当にこのままでよいのかは疑問ですね。

 

curiousquest.hatenablog.com

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*まとめ*

  • アルコールは、いくつかの病気の発症リスクをほんの少し減らすかもしれないが
    ほとんどの病気の発症リスクを何倍にも増加させる
  • 安全なアルコールの摂取量は、ほぼないかもしれない
  • アルコールで助かる人より、死んでしまう人の方が
    圧倒的に多い。