CuriousHunter 依存リハ

好奇心のままに、依存症を探索

注意バイアスが依存症の原因?【認知機能と依存症】

*薬物のことで頭でいっぱい*

 

依存症の理解において
認知機能が大切です。

 

その1つに注意バイアスがあります。

 

その認知機能と多様な依存症の側面
脳科学・心理学・薬理学)を統合した
依存症の理論があります。

 

簡単に言うと、
「認知機能が薬物関連刺激と反応を仲立ちする」

 

実際にどのような理論か解説していきます。
また、この理論から見える
依存症の治療の可能性も少し触れます。

 

 

 

*注意バイアス仮説*

まず、名前の説明です。
「The attentional bias hypothesis for drug craving and addiction」
(Franken, 2003)

 

Attention biasが、注意バイアス
Hypothesisが、仮説
Drug cravingが、薬物の渇望
Addictionが、依存

 

なので、
「依存症と薬物渇望の注意バイアス仮説」って感じですか?

 

要するに、依存症と薬物の使用は
注意バイアスが鍵であるということですね。

 


事実、認知機能は
薬物の刺激・薬物の効果・薬物に対する反応を
結びつける重要な役割があると
考えられてます。
(Toates, 1998)

 


*渇望は感情*

願望は、感情ではないと言われていますが
依存症においての渇望(薬物を欲している)状態は、
感情の1つと考えられています。

 

どんな感情かというと、
薬物や行動の報酬効果によって
条件づけられた刺激によって
生成される感情。
(Franken et al., 2000)

 

 

他の記事で取り扱いましたが、
薬物を使用すると、無意味だった刺激が
薬物と条件づけられて、
意味を持つようになり、
ある特定の行動を引き起こします。

 


つまり、薬物の渇望が薬物使用によって
条件付けられ(渇望と反応が関連づけ)、
渇望が生じると、薬物使用するという反応を
薬物の存在の有無に関わらず、促してしまう

 

そのため、渇望が薬物再使用に
影響を与えていると考えられています。

 

 

学習理論ですね。
依存症と学習理論について、知りたい方は
以下の記事で確認してください。

 

curiousquest.hatenablog.com

 

 

*感情への注意*

注意は、認知機能において
重要な役割があります。

 

我々は、情報を選択的に選んでいます。
つまり、関連のある情報のみを選択して
注意をしています

 

もし、すべてのものに注意を与えていると
目的が分からなくなってきます。
例えば、選択肢がいっぱいあると
選択が難しくなりますが、
選択肢を減らしていくと、選択が容易になるのが
いい例ですかね?

 

 

そして、この注意という認知機能が
感情にも重要な役割があります。

 

なぜかというと、我々は生存するために
ポジティブな効果(幸福)を与えてくれる刺激(食べ物・水・薬物)を求め、
ネガティブな効果(不快)を与える刺激(過剰な熱・離脱症状)を避けるように
プログラムされています。

 

これらを、上手にこなすために
私たちの脳は、
それぞれの快楽・不快刺激の信号(予想できる引き金)を
学習し、それらにより注意を払います

 

 

という感じで、
注意は、感情に対しても優先順位をつけています

 

そして、注意と感情(渇望)は
相互に影響しあっており、
薬物関連の刺激とそれに対する反応を
仲立ちする役割があると考えられてます。

 

つまり、
注意も感情(渇望)と同様に
薬物関連の刺激に対しての反応の準備
として考えられそうですね。

 

流れを書くとこんな感じですかね

  1. 薬物関連刺激(引き金)⇒
  2. 注意・渇望(準備)
  3. 反応(行動:薬物摂取)

 

という感じで、注意・感情といった認知が
薬物の刺激と反応を調整する役割を担っています。

 

 

感情の重要性についての記事もあるので
ぜひ、チェックしてみてください。

 

curiousquest.hatenablog.com

 

 


*依存症における注意バイアス*

注意の重要性がわかったと思いますが、
実際に、注意の歪みによって
依存症でどのような変化がおきるのか。

 

3つのあります。

  • 薬物信号の強化
  • 薬物関連の認知の強化
  • 他の信号に対するリソース不足

 

1つずつ、説明していきます。

 

 

*薬物信号の強化*

これは、脳の研究で分かってきたことで
薬物関連の刺激下での脳波や反応を調べていきました。

 

その結果、
依存症になると、
より薬物関連の刺激を
検知・気づきやすくなります


注意力に偏りがある証拠ですね。

 

結果、薬物関連の刺激を伝える
信号が強化されている状態です。

 


*薬物関連の認知の強化*

認知機能と言っても幅広く
注意バイアスの結果、
薬物の関連の刺激を検知すると
多様な認知機能に変化を引き起こします。

  • 記憶バイアス(薬物関連の記憶の強化)
  • 強迫的思考(薬物を使用しないといけない)
  • 薬物へ没頭(薬物の効果への期待)

 

細かく説明すると長くなるので、


結論として、
薬物関連の刺激に対して
意識が向きすぎて、
注意を逸らすことができなくなります。

 


*他の信号に対するリソース不足*

上記の結果、注意力の容量には限りがあるため、
薬物以外の情報に注意を向けるほどの
余力が残っていない状態になります。

 

なので、依存症においては
薬物を使用しない戦略に注意を
向けて、行動するほどの
余力がありません。

 

 

これがゆえに、
他のことを気にすることなく、
衝動的な薬物使用が
引き起こされると考えられています。

 


*薬物関連刺激は、ドーパミンを上昇させる*

薬物関連の刺激というと、
ライター・注射器・居酒屋・ジョッキ瓶・パチンコの音・光
とかですかね。

 

 

それらを認識すると、
報酬を期待するため
ドーパミンが放出され、
より注意バイアスが引き起こされる
考えられてます。

 

要は、薬物関連の情報を見つけると
より、薬物のことばかりに注意が向く状態になる。

 


*統合モデル*

いろいろと説明してきましたが、

いい感じに、Frankenさんはまとめてくれてます。

Franken, 2003 を基に作成

嫌な感じのループが見えてきましたね

少し解説すると、

薬物の使用によって、
注意力の歪みと渇望が形成された後は、
このようなモデルが出来上がります。

 

まずは、一番上の刺激の認識。
これは、薬物使用によって条件づけられた
薬物関連の刺激の認識です。

 

その後、ドーパミンが上昇
より注意力が薬物に向き、
渇望を引き起こします。


渇望は、注意力と相互関係があるため、
渇望の上昇は、より注意力を薬物へと向けます。

 

つまり、認知バイアスがかかり
薬物関連の刺激に気づきやすく
他の認知機能にも影響を与え
薬物のことばかり考えてしまい、
それ以外のことが考えられない状態。

 

そして、
再び、より薬物関連の刺激を認識しやすくなり
また、ドーパミンが上昇といったループができます。

 

結果として、最終的に薬物の使用を促します。

 


という感じでみると、
認知バイアスがモデルの中心にいます。
ここをターゲットにした、
治療法が自然と生じてきますね。

 

ただ、注意バイアスは
無意識に行われているために
そこをターゲットにするのは
難しそうですね。

 

他にも認知機能と依存症についての記事があるので、
ぜひ、読んでみてください。

 

curiousquest.hatenablog.com

curiousquest.hatenablog.com

 

 

*まとめ*

  • 認知機能が薬物と薬物反応を仲介する
  • 注意バイアスが依存症の鍵
  • 注意バイアスと薬物の渇望は相互に影響を与え合う
  • 依存症になると、薬物により注意が向く
  • 薬物関連の刺激に気づきやすくなる
  • 薬物のことばかり考えてしまう
  • 薬物以外のことが考えられなくなる。

 

*記事関連のおすすめ本*

「The intelligence Trap なぜ、賢い人ほど愚かな決断を下すのか」

「The intelligence Trap」

 

これは、2年前ぐらいに読んだ本で
たまたま聞いていたポッドキャストのゲストスピーカーがデビッドさんでした。

これ衝撃でしたね。

自分を賢いとは思いませんが、
専門として、理学療法と依存症を学んでいるので
認知バイアスのトラップに引っかかっていたなと思う部分もあり、
自分を見直す機会になりました。