CuriousHunter 依存リハ

好奇心のままに、依存症を探索

【依存症になりやすい性格】依存症と性格

*依存症と性格の関係*

依存症には、いろんなリスクファクターが存在します。

その中の1つに心理学的な要素があり、
性格が含まれます。

実際に、どのような性格が依存症と関連しているのか
この記事でお話していきます。

依存症のなりやすい人の特徴についての記事があるので
ぜひ、読んでみてください。

 

curiousquest.hatenablog.com

 


*性格(ビッグファイブ)*

性格のお話は、古代ギリシャヒポクラテスさんから始まっています。

その後、フロイドやパプロフと言ったよく聞く名前の有名人たちも
この分野に絡んできました。

という感じで、長い議論が続いていましたが
1980年頃に、大きな変化が起きました。

性格を表す言葉がたくさんある中で
それらの性格の言葉にヒエラルキー的な順序があることに気づき始めました。
(Digman, 1987, Markon et al., 2005)

要は、ある性格を表すの言葉が無数にあるが
ある単語を一番上のカテゴリーの名前として扱い、
それ以外の似た単語は、その一番上のカテゴリーの下にぶら下がっている言葉ということです。

例えば、誠実性を表す言葉に
「忠実性」、「秩序性」が挙げられますが
これらの2つの言葉は、誠実性のグループの下に含まれるということです。

このように、性格を表す言葉にまとまりが出てきて
大きく分けて5つ・もしくは3つの大きな性格を表す言葉が誕生しました。

それが、ビッグファイブ(Big five)とビッグスリー(Big three)です。
心理学系に興味のある人は、一度は聞いたことがあると思います。


*ビッグファイブ(Big Five model)*

ビッグファイブが誕生するまで、何度も試みがありました。

何がビッグファイブなのか。
大きな性格の因子が5つあるということですね。

ビッグファイブが、最終的にたどり着いた5つの性格とはなにか。

 

*ビッグファイブの5つの因子*

  • 外向性(Extraversion)
    ー ポジティブなことに対する反応を示す要素
    ー 高い外向性(社交的・目立ちたがり)
    ー 低い外向性(控え目・冷淡)
  • 協調性(Agreeableness)
    ー グループ内での行動を示す因子
    ー 高い協調性(思いやり・ナイーブ)
    ー 低い協調性(競争心・理屈っぽい)
  • 誠実性(Conscientiousness)
    ー 責任感やセルフコントロールに関する要素
    ー 高い誠実性(粘り強い・強情)
    ー 低い誠実性(柔軟・ずさん)
  • 神経質的傾向(Neuroticisim)
    ー ネガティブなことに対する反応
    ー 高い神経質的傾向(迅速な対応・不安定)
    ー 低い神経質的傾向(落ち着き・無頓着)
  • 開放性(Opennsss to experience)
    ー 新しい経験に対する反応の要素
    ー 高い開放性(創造的・予測できない)
    ー 低い開放性(現実的・閉鎖的)

実際に、この5つの性格がどれほど信頼できる指標なのか。

いろんな人が研究した結果、
これらの5つの性格の要素は信頼できるものであり
自己評価・友達の評価でともに、これらの性格が観察されました。
(McCrae & Costa, 1987)
また、子供・大人等の年齢も関係なく
さらに、言語・様々な文化圏においても5つの性格が観察されています。
(Allik, 2005; McCrae & Costa, 1997)

 

ネットでサクッと無料でできる
ビッグファイブ診断ができるみたいです。
URL張っておきますね。

『嘘』を見抜く自己分析 | ビッグファイブ性格診断【BIG5-BASIC】

 

ビッグスリー(Big three model)*

一方で、ビッグスリーは3つの性格の要素がある。

  • ネガティブな感情
  • ポジティブな感情
  • 非抑制VS制御
    (Clark & Watson, 1999; Markon et al., 2005)

ただ、これら3つの性格のファクターは
ビッグファイブの5つのファクターと被る点が多々あります。
(Clark & Watson, 1999; Markon et al., 2005)

 

Big fiveの神経質的傾向は、Big threeの「ネガティブな感情」とほぼ同義であり
Big Fiveの外向性は、Big threeの「ポジティブな感情」と同義である。
(Clark & Watson, 1999;Markon et al., 2005)

他にも、Big fiveの「開放性」とBig threeの「ポジティブな感情」

ただ、Big Threeの「非抑制」は少し複雑で
非抑制は、Big fiveはいろんな性格と複雑に関連していました。
例えば、Big fiveの誠実性・協調性が挙げられます。
(Clark &Watson, 1999)

ただ、この非抑制はほかのBig fiveの5つの性格と同じものではなく
独立したものであることもわかりました。

ということで、今回の記事で取り扱う性格として
Big Fiveの5つの性格とBig Threeの1つの性格(非抑制VS制御)を使い、
依存症をお話していきます。

 

*依存症と精神疾患

性格と頻繁に話をされるトピックとして、精神疾患が上がってきます。
依存症において、精神疾患の併発は頻繁のため
さくっと例を挙げていきます。

 

精神疾患と性格(Big five)*

まず、精神疾患を簡易的に分類します。
疾患を1つずつ並べるのが少し面倒で見にくくなるかなと。

初めに、精神疾患を大きく2つに分けます。

  • 内在化障害(不安・鬱)
  • 外在化障害(依存症・反社会パーソナリティー

内在化障害は、個人の問題(不安やストレス)を自己の内側で処理
する総称で、
外在化障害は、個人の問題を自己の外側で攻撃・非行を通して処理されます。

さらに、内在化障害を細かいカテゴリーに分けていきます。

という感じに分けれらます。
実際の性格とこれらの疾患の関連を見ていきましょう。

 

*性格と精神心疾患の関連性の例*

  • 内在化障害 と 神経質的傾向
  • 外在化障害 と 神経質的傾向・非抑制
    (Clark, 2005; Krueger et al., 2007; Krueger et al., 2001)
  • ストレスグループ と 神経質的傾向・低い外向性
  • 恐怖グループ と 神経質的傾向
    (D. Watson et al., 2006
  • 不安障害 と 神経質的傾向

という感じで、大抵の精神疾患はとりあえず
神経質的傾向が関連していそうですね。

 

事実、これらの性格がどの程度
精神疾患の症状と関連があるかMalouff et al.(2005)さんたちが調べてくれました。
少し、数字を出します。

結果

  • 神経質的傾向 と 精神疾患症状の関連 (Cohen's d = 0.92)
  • 低い誠実性 と 精神疾患症状の関連 (Cohen's d = -0.66)
  • 低い外向性 と 精神疾患症状の関連 (Cohen's d = -0.41)
  • 低い協調性 と 精神疾患症状の関連 (Cohen's d = -0.38)

基本的に、絶対値的に大きな数ほど関連が高いと思っていいと思います。

ただ、開放性については統計的な関連は見つかりませんでした

再び、神経質的傾向が大いに精神疾患と関係があることがわかりますね。

 

*依存症とBig Five*

本題の依存症と性格の関連ですが
依存症は、神経質的傾向・非抑制・低い誠実性・低い協調性と関連があります。
(Ball, 2005)

ただ、依存症も大きなカテゴリーなので
今回の記事では、アルコール・複数薬物依存・単一の薬物依存を見ていきましょう。

再び、少し数字出しますが大きな数ほど関連が強く
正の数は、性格の気質が上昇すると依存症に関連あり
負の数は、性格の気質が減少すると依存症に関係ありです。


*アルコールとBig five*

  • 神経質的傾向 ー Pearson's r = 0.28 (弱い正の相関)
  • 外向性     ー Pearson's r = -0.12 (ほぼ相関なし)
  • 非抑制     ー Pearson's r = 0.24 (弱い正の相関)
  • 誠実性     ー Pearson's r = -0.33 (弱い負の相関)
  • 協調性     ー Pearson's r = -0.17 (ほぼ相関なし)
  • 開放性     ー Pearson's r = -0.02 (ほぼ相関なし)
    (Kotov et al., 2010)


*複数の薬物乱用とBig five*

  • 神経質的傾向 ー Pearson's r = 0.42(正の相関)
  • 外向性     ー Pearson's r = -0.19 (ほぼ相関なし)
  • 非抑制     ー Pearson's r = 0.32 (弱い正の相関)
  • 誠実性     ー Pearson's r = -0.55 (負の相関)
  • 協調性     ー Pearson's r = -0.34 (弱い負の相関)
  • 開放性     ー Pearson's r = -0.15 (ほぼ相関なし)
    (Kotov et al., 2010)

単なるアルコール依存のみと比べると
それぞれの数字が大きくなっていますね。

*単一の薬物依存と性格*

  • 神経質的傾向 ー Pearson's r = 0.46(正の相関)
  • 外向性     ー Pearson's r = -0.15 (ほぼ相関なし)
  • 非抑制     ー Pearson's r = 0.30(弱い正の相関)
  • 誠実性     ー Pearson's r = -0.43 (負の相関)
  • 協調性     ー Pearson's r = -0.33 (弱い負の相関)
  • 開放性     ー Pearson's r = -0.17 (ほぼ相関なし)
    (Kotov et al., 2010)

大体、似たような結果ですね。
アルコール依存と比較すると、薬物依存では神経質的傾向が若干強いですね。
そのため、神経質的傾向の影響を受ける性格の因子も
薬物依存では相関がアルコール依存より若干高いですね。

ただ、薬物と言ってもいろいろありますが
それぞれの薬物(コカイン・ヘロイン・大麻・行動嗜癖等)と性格については
違う記事にて詳しく取り扱います。

 

*まとめ*

  • 性格は、5つの尺度がある。
    (ビッグファイヴ(神経質・外向性・誠実性・協調性・開放性))
    (+ビッグスリー(非抑制VS制御))
  • 多くの精神疾患で神経質的傾向が高い
  • 依存症では、高い神経質的傾向・高い非抑制・低い協調性が
    関連している。

※これらの性格だから、悪いという話ではなく
依存症になりやすい可能性があるということです。

 

性格は、生まれ持って大体半分が遺伝的に決まると言われています。
ただ、性格を変えることもできるのではという話もあり
また、高い神経質的傾向・高い非抑制・低い協調性も
その場その場で、プラスになることも多々あります。

そのような記事も今後書いていきます。

 

*記事関連のおすすめの本*

「自分の価値を最大にするハーバードの心理学講義」
「Me, Myself, and Us; The science of Personality and the art of Well-being」

毎度、おなじみですが日本語訳が気に入らないですね。
ハーバードと書けばいいと思ってる感じ。
英語版の本ものリンクも最後に貼っておきますね。

それは、さておき。
依存症から回復するとき、性格も考慮したアプローチが必要だよねって
言う人もいます。
この本は、依存症から回復するとき
自分と他者とどう向き合うか、性格の観点からいろんなヒントをくれると思います。

英語版のタイトルにある通り、Well-beingと性格をつなげています。
自分の性格・他者の性格を理解して
よりよい人生を送れるためのピースがいくつかあります。

Well-beingについての記事もあるので、
ぜひ、読んでみてください。

 

curiousquest.hatenablog.com

 

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英語版のおすすめ本